第13話社員旅行。初日

結局だがブレスレットとネックレスは箱に閉まっていつでも鞄の中に入れておくのであった。

そうでもしないとどちらも納得してくれない。

どちらかに傾いてしまうと様々な弊害が訪れる。

それを理解しているのでどちらにもつかない事を決める。

それは現状からの逃げなのだが仕方がない。

まだ僕は恋や愛と言うものを完全には理解できていないのだ。

行為にハマることもなく。

誰かを心の底から必要と思うこともなく…。

結局僕は一人でも過ごせるのではないだろうか。

でも暇なときには誰かに構って欲しい。

必要とされたい。

自分勝手な性格を心底呪うと頭を振る。


南の島への飛行機の中でそんな事を思考しながら目的地に向う。

右隣には水色が座っていて左隣には光が座っていた。

二人に挟まれながら南の島を目指すのだが…。

飛行機の中で水色も光も目を閉じて眠っているようだった。

昨晩はよく眠れなかったのか現在はぐっすりと眠っている。

何処か安心しているような不思議な雰囲気を醸し出していた。

そんな二人を不思議に感じながら宙に浮き続けるのであった。


南の島に着くとまずはホテルに向かう。

二人一組になって一つの部屋を使う。

僕は同期の男性と同じ部屋になり本日の予定を話し合った。

「やっぱ海は行くよな!?水着みたいし!」

同期の友達、佐々木素直ささきすなおは興奮した面持ちでそんな言葉を口にする。

「そういうものなの?」

そんな風に問い返すと彼は驚いたような戯けたような表情を浮かべる。

「当たり前だろ!?お前は違うのか!?」

それに首を傾げて応えると彼は呆れたような表情を浮かべた。

「まぁいいわ。俺は先輩と海に行った後に飲みに行く約束してるから!お前だって涼森さんや星野と約束してるんだろ?」

それに頷いて応えると僕らは揃ってホテルを出る。

ホテルの入口では水色と光が待っていた。

「下に水着着てきた?」

それに頷いて応えると僕らは揃って海に向かう。

海に到着すると二人は服を脱いでお互いに日焼け止めを塗り合っていた。

(キマシ…じゃなくて…でも…なんか悪くないな…)

その光景を少しだけいやらしい目つきで見ていたのがバレてしまい二人に睨まれる。

「仲間に入りたいのかな♡」

水色は僕を誘惑するようなことを言い、光は恥ずかしそうに胸元を隠した。

「そういうわけじゃないけど…」

顔を背けながら海を眺めていると二人は日焼け止めを塗り終えたのかこちらにやって来る。

「遊ぼ〜♡」

三人で海に向かうと浮き輪なりボートなどを借りて十分に遊んで過ごす。

日が長く感じて夕方になってもまだまだ日が高く存在しているようだった。

「三人で食事に行きましょう」

それに頷いて応えると僕らは揃って外食に向う。

本日は三人で過ごしてばかりでどちらかと行動することはなかった。

食事を終えてホテルに戻ってくると二人は僕に向けて口を開く。

「明日は私と過ごしてもらいます」

光がそう言うと僕は一つ頷く。

「明後日は私だからね♡」

水色がそう言うと僕の社員旅行中の予定は全て決まってしまうのであった。

付け加えて言うのであれば研修旅行ではなく社員旅行なので終日自由行動なのである。

「じゃあ予定は各自が決めているからそれに従ってね♡」

それに頷くと部屋に戻っていく。

深夜過ぎた辺りで同室の佐々木素直が酔って帰ってきてそのままベッドに倒れ込むのを確認すると僕も眠りにつくのであった。

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