第12話社員旅行は南の島
白桜院雲母とは話をつける必要がある。
彼女は僕のストーカーであり若干の危険分子でもある。
何か事件があってからでは遅いのだ。
今のうちに対策を練る必要がある。
そんな事を軽く思考して職場から帰ってくると件の人物、白桜院雲母と遭遇する。
「お疲れさまです。今帰りですか?私もバイトから帰ってきたところです」
マンションの廊下で鉢合わせると彼女と話は始まる。
「雲母さん。申し訳ないけれどストーカーをやめてください」
正直に正面切って話を始めると雲母は苦笑の表情を浮かべる。
「そんなに迷惑でしたか?」
「それは…」
ストーカーされていた事実を知ったのは彼女の部屋を見たからであって犯行に気付いたことはない。
迷惑をかけられた覚えはないが精神的には穏やかじゃない。
「やめろと言われたらやめますよ?推しに迷惑はかけたくないので。だけどそうなると…」
雲母はそう言うとゆらゆらとこちらに近づいてくる。
そのまま僕を壁まで追い込むとほとんどゼロ距離で僕と顔を合わせる。
「こういう事もしてしまうかもしれません。それでも良いですか?」
それに何とも言えずにただ黙ってしまうと雲母は顔を離す。
「じゃあ今度からはこういう方向性で攻めますね」
雲母はそれだけ告げると自らの部屋に入っていく。
(どうしろっていうんだよ…水色さんが知ったら…)
何故か僕はそこで水色の事を思い出していた。
彼女がどう思うか。
そんな事を想像していた。
(いやいや、関係ないだろ…僕がどう思うかだろ…)
自分自身に言い聞かせると隣の自分の部屋に入っていく。
そこからシャワーを浴びてからベッドに潜り込むのであった。
次の日。
職場に向うと社員旅行の案内が知らされる。
「来週から三泊四日の社員旅行があります。各自準備をしておいてください。どうしても欠席しないといけない場合は私まで事前に報告よろしくお願いいたします」
朝礼が終わると社員旅行の行き先を知らされる。
「南の島って毎年恒例らしいよ」
隣の席の星野光は僕に向けて世間話のように話しかけてきて軽く頷いて応える。
「水着持ってる?去年のあったかなぁ〜?」
光は去年のことを思い出しているようで頭を悩ませていた。
「星野さん。丁度良かった。私と一緒に水着買いに行かない?」
そこに現れたのは涼森水色だった。
彼女は何を思ったのかライバルである光にその様な提案をする。
「いいんですか!?じゃあ一緒に行きましょう」
「わかった。じゃあ仕事終わりに行きましょう」
二人はお互いに頷き合うと予定は簡単に決まる。
仕事は順調に進んでいき終業時刻を迎えると彼女らは揃って職場を後にする。
僕は学生の頃に買った水着を押し入れから引っ張り出して社員旅行の準備をするのであった。
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