第8話光も動き出す
23歳の誕生日を迎えたわけだが…。
特に何かが変わったわけではない。
僕は今まで通りだし水色とも他の女性とも何か進展があったわけでもない。
だけど…。
本日は光と仕事終わりに食事に来ている。
「遅れたけど…誕生日おめでとう。これ。プレゼント」
光はキレイに包装された細長い箱をこちらに差し出してくる。
「ありがとう。開けても良い?」
光はそれに頷くので僕は包装をキレイに破いていく。
箱を開けると中には銀のネックレスが入っていて…。
「私はネックレスにしてみた…水色さんはブレスレットみたいだったから…対抗心的な感じかな」
本日の光は明らかに影のある雰囲気を醸し出しているような気がした。
「えっと…ありがとう」
「今…着けて?」
それに頷きネックレスを上手に着けると光は嬉しそうに微笑む。
「やっぱり似合うね」
「そう?ありがとう」
光はそれに頷くと食事とお酒を楽しみながら時間は過ぎていくのであった。
店を出ると光はタクシーを拾う。
僕らはそれに乗り込むと彼女は運転手に僕の家の住所を伝える。
「葵くんの家で飲み直そう?」
それに頷いて応えると僕らは揃って帰宅する。
そのまま遅れながらの誕生日を祝われると終電が過ぎるまで宴は続いた。
「葵くん!好きだよ!」
光は完全に酔っているらしく僕に向けて告白のようなものをする。
僕もそれに笑顔で頷くと一つ礼を口にする。
「ありがとう」
その答えに光は納得していないようで口を尖らせていた。
「それだけ?」
それに困ってしまい何とも言えない表情を浮かべていると光は突然軽く笑った。
「冗談だよ!いつか私に向いてくれたらそれでいいから!」
光はいつものように元気で明るい女性に戻る。
本日は影があったような気がしたが気の所為だったらしい。
「ネックレス大事にしてね?」
「うん。大事にする」
その答えを耳にした光は微笑むと缶チューハイを掲げて再び乾杯をした。
「今日もいい日だなぁ〜!」
光は嬉しそうに笑うとそんな一言を口にする。
「そうだね」
それぐらいしか返しが思いつかずにそんな言葉を口にする。
「水色さんといい感じにならないでね?」
それには何とも答えられずに軽く頷くだけだった。
「きっと私が守るから。大好きな葵くんを…」
光はそれだけ言うとそのままソファで横になり眠りについてしまうのであった。
次の日。
目を覚ました光は僕に軽く忠告のようなものを告げる。
「水色さんから貰ったブレスレットは着けて欲しくないな。私のネックレスを着けて欲しい」
「じゃあ今日はネックレスにするよ」
その答えで光は納得してくれて僕らは揃って職場に向う。
会社では水色がその光景を目にして冷めた目線を僕に向けていた。
それに気付いていたが素知らぬふりをして仕事に向かうのであった。
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