第3話混ざる色
休日の午前。
目を覚ますと身支度を整えた。
しばらくすると家の鍵が開かれてその人物は顔を出す。
「水色さん。合鍵返してくださいよ…」
件の人物、涼森水色は合鍵で僕の家に勝手に入るとスーパーの袋を下げてキッチンに向かった。
「なんで?」
首を傾げて疑問の言葉を口にする彼女に少しの恐怖を覚える。
「いや…だって別れましたよね…?」
それを耳にしても水色は首をゆっくりと左右に振るだけだった。
「今日は手料理作ってあげる。以前は本気じゃなかったから作ってあげたことなかったよね」
「本気じゃなかった?」
その言葉がどうにも引っかかり疑問の言葉を口にすると水色はゆっくりと頷く。
「今は本気だから」
「どうして…?急に本気になったんですか?」
水色はそれには答えてはくれず、流れるように調理を開始する。
「好きな食べ物って何?昨日聞けばよかったんだけど。疲れてすぐ寝ちゃったんだ」
「えっと…なんでも美味しく食べられます…」
「サソリとかカエルでも?」
「え…」
「冗談だよ」
水色は本気のような冗談を口にするとスーパーの袋の中から食材を出していった。
「今日は豚の角煮だから。煮込んでいる間に夢中になろうね♡」
水色は手早く食材をカットしていくと鍋の中に入れていく。
そのまま煮込む工程に入ったところで彼女はこちらにやって来る。
「実際楽しみにしてたでしょ?」
水色は一枚ずつ服を脱いでいくと僕をソファに押し倒した。
「私は楽しみだったな♡」
そのまま彼女は僕の身体を貪るように楽しむと、そこから小一時間の激しい行為は続いていくのであった。
行為が終わると水色はシャワーを浴びてから調理を再開する。
「お!いい具合に煮込めてる」
そこから水色は味付けをしてから少し煮込むと料理を皿に盛っていた。
「昼食にしよ?」
それに頷くと水色の作った角煮と白米を食べながらふたりきりの時間を過ごしていく。
「どう?美味しいでしょ?」
それに頷くと僕は彼女に問いかける。
「どうして別れてくれないんですか?」
その言葉を耳にした水色は少しだけ悩んだような表情を浮かべると意味深な一言を残す。
「う〜ん。一言で言うと癖になったから」
「何がですか?」
「葵くんとの行為中の全部」
それに頷くことしか出来ずに居ると水色は軽く微笑む。
「今まで気持ちいいと思ったことないんだよね。でも今回は感じた。だから別れたくなし別れない。一生そんな人には出会えないと思っていたんだけどね。だから離れないし離さないよ」
「これからだって出会うでしょ…水色さんなら引く手数多だろうし…」
僕の言葉を耳にしても彼女は首を左右に振るだけ。
「それはないかな。今まで何人と付き合ってきたと思ってるの?」
「知りませんけど…」
「まぁ…知らなくてもいいけど」
そんなやり取りをしながら昼食を終えると彼女は食器を洗っていた。
水色は料理の片付けを終えるとリビングのソファに腰掛ける。
「もう一回していい♡」
水色はそんな事を口にすると有無を言わさずに僕を襲う。
女性に押し倒されてされるがままの非力な自分を少しだけ情けなく思った。
だが行為中の彼女が満足そうだったので何処か僕も心が満たされる。
………こういうのも悪くない。
………必要とされている。
………役に立てている。
そんな思考が脳を占領すると僕はその快楽に身を任せる。
結局、休日の二日間とも水色は僕の家で過ごして何度も行為に夢中になるのであった。
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