第71話 奮起するウィンクルム



 魔導術の施術を始めて9日目の朝。


 ユウトはベッドの上で達成感に包まれていた。


ユウトの両隣には、全裸のまま眠る玲と楓がいる。


(やった、俺はとうとう成し遂げたんだ。夢の姉妹丼を、しかも双子の義妹というこれ以上ない設定の子と)


 そう、ダンジョンに潜ってから8日目にして、ユウトはとうとう玲と楓と3Pをすることに成功した。


 7日目の夜から二人同時に魔導術を施術するようになったのだが、欲情した楓とえっちを始めると玲が逃げるように部屋を出て行ってしまった。だがユウトは諦めなかった。翌日の夜。昨夜のことだが、魔導術を終えると欲情している玲へと襲いかかった。すると楓も途中から参加をし、そのままなし崩し的に姉妹丼へと持っていくことに成功したのである。


(ちょっと想像していた姉妹丼とは違っていたけど、まあ楓はSっ気があるのはわかっていたからな。アレはアレで興奮したしいっか)


 玲がユウトの上に乗り腰を振っている際に、楓がそれはもう嬉しそうに姉に言葉責めを始めた。妹の言葉に玲は恥ずかしがりつつも腰の動きを止めず、そしてそのことをまた楓に指摘され顔を真っ赤にしながら首をイヤイヤと横に振っていた。そんなMの姉とSの妹という組み合わせにユウトは興奮していた。


(おっと、いけね。また元気になっちまった)


 二人がダウンするまでシテいたというのに、ユウトの息子はまだまだ元気だ。さすが12時間耐久花びら大回転を生き残った男である。


 ムラムラしてきたユウトは、隣で寝ている楓の胸へと手を伸ばそうとする。


 しかしそのタイミングで部屋のドアがノックされ、ユウトの返事を待たずにカミラが部屋の中へと入ってくる。


「おはようございますご主人様、昨夜はお楽しみでしたね。お風呂の用意ができておりますのでどうぞ。もちろん私がお背中を流させて頂きます」


「あ、ああ」


 ユウトはそういえばここ数日カミラの相手をしていなかったことを思い出し冷や汗を流す。そして舌なめずりするようなカミラの視線に勇者のひ孫を縮こませつつ、おとなしく浴室へと連行されるのだった。


 ちなみにユウトは玲と楓に一度服用すれば1ヶ月持続する異世界製の避妊薬を飲ませている。避妊薬に関してはリルの方が製薬技術が進んでいるのだ。ゴブリンやオークなど女性を襲う魔物が多いのでそれも当然と言えよう。カミラは飲んではくれないが。


 その後、浴室でカミラに散々搾り取られたあと起きてきた玲と楓と朝食を採ったユウトは、玲と楓のもう少し下層でも戦ってみたいという要望を聞き19階層へと向かった。


 ユウトたちはこのあと最下層での戦闘を経験し、一泊してから地上へ戻るつもりだ。



 一方、太田のいるウィンクルムは、最下層の20階層に到達しボス部屋に向け進んでいた。


「みんなあと少しだよ! 今日中にボス部屋まで行くからね!」


 先頭を歩くリーダーの由美が、パーティ仲間へと声をかけ鼓舞をする。


 由美の掛け声に対し、太田や綾子たちは手を挙げ応える。その顔には疲れが浮かんでいた。夜に励んだからではない。ユウトという魔物ホイホイのおかげで18階層こそ難なく踏破することができたが、19階層とこの20階層で彼女たちはかなり疲弊させられていた。


 最下層付近は攻略が目的の探索者しか降りてこないため探索者は少ない。特に不人気のこの小鬼ダンジョンの場合は、今の時点で18階層より下層にいるのはユウトたちとウィンクルムだけと言っていいだろう。


 そのユウトたちはウィンクルムが19階層にいる時点ではまだ18階層にいたため、19階層にいるゴブリンたちはその階層に唯一いる人間の集団であるウィンクルムに集中した。それでも前回複数の仲間が大怪我を負ったことで断念した19階層を2日掛けてなんとか踏破し、やっとの思いで20階層に辿り着くことができた。


 そして一晩階段周辺の安全地帯で休み20階層に足を踏み入れたが、ここでも朝から連戦に次ぐ連戦でウィンクルムの面々は精神的にも魔力的にも疲弊していた。


「小鬼ダンジョンを攻略してこその名声だからね! 大分のゴーレムダンジョンなんかを攻略して大きな顔をしている奴らなんかには負けないんだから!」


 仲間たちの反応が思わしくないことに、由美は続けて皆を鼓舞する。


 同じ二つ星ダンジョンでも大分ダンジョンはその攻略のハードルの低さから、探索者の中では最低ランクのダンジョン扱いをされている。大分ダンジョンを攻略して三つ星探索者になっても、探索者の中ではあまり評価はされない風潮があるのだ。


 確かにボスのストーンゴーレムは強く、倒すのには苦労する。しかしそこに到達するまでに出現する魔物は動きが鈍いので倒しやすい。そのためボスを倒すことだけに集中できることから、他の二つ星ダンジョンよりも攻略しやすいのは間違いない。


「そうだな。世界で最初に発見されたこの奥多摩ダンジョンを攻略してこそだな」


 由美の鼓舞に太田が頷き、そして皆に聞こえるように同意する。すると酒田も空気を読み大きな声で賛同する。


「そうっスよ! 奥多摩の小鬼ダンジョンを攻略すれば、配信動画に企業の広告依頼が殺到するっス! ボス戦の再生数だってうなぎ登りっス! 雑誌やテレビ局からモデルや出演の依頼も来るかもしれないっスよ? なんたってウィンクルムは美人揃いッスから!」


「ハハッ、裕司は上手いこと言うね。私にもモデルの依頼とか来るかな?」


「美佳さんならすぐに来るッス!」


「ふふっ、ありがと。みんな! このダンジョンを攻略したらテレビや雑誌に出れるかもしれないよ! なんたって探索者になってたった5年で二つ星の、しかも奥多摩小鬼ダンジョンを攻略するんだからね! 期待の新星って騒がれるのは間違いないし、テレビ局でイケメンの芸能人と出会えるかもよ!? そのためにもとっととこのダンジョンを攻略するよ!」


「「「おー!」」」


 美佳の女心を刺激する言葉に皆が元気よく返事をする。皆テレビや雑誌に載りたいのだ。そして若いイケメンの芸能人と結婚したいのだ。


「よしっ! それじゃあ私たちの幸せのためにいざボス部屋へ!」


「「「「「いざボス部屋へ!」」」」


 盛り上がったところで由美が再び皆を鼓舞し、それに今度は全員が元気よく応える。


 こうしてウィンクルムの面々は苦戦しつつも20階層の中程にあるボス部屋の手前まで辿り着くのだった。



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