第69話 勇者の孫 修羅場を経験する
自室のベッドの上でユウトは、心地よい疲れと今まで感じたことのないほどの幸福感に包まれていた。
(気持ちよかった……柔らかくてモチモチした二人の肌や大きなおっぱいもそうだけど、何よりも慣れてない感じが最高だった)
ユウトは娼婦や、初めてと言いながら知識が豊富で最初からテクニシャンだったカミラとしかしたことがなかった。だから性行為に慣れてない二人の反応は新鮮であり、ものすごく興奮していた。
(処女っていいな……一から俺好みの女にできるもんな)
カミラの場合は容姿をユウト好みに変えてくれてはいるが、貴族家で長く仕えていたことからそういった知識は豊富で常に主導権を握られていた。しかし玲は違う。今でこそ玲はほとんどマグロ状態だが、これから一つずつ教えていく楽しみがある。
そして……と、ユウトは隣でユウトの体液によって顔と髪がカピカピになりながら、気を失ったように眠っている楓を横目に見る。
(最初こそ上にまたがってはいたが……ククク、知識こそあれど経験不足は否めなかったな。しかし清楚な見た目なのにとんでもなくえっちな子だよな)
ユウトは初めて経験する快感に乱れ狂っていた楓の姿を思い出しながら、末恐ろしさも感じていた。
(まあそのギャップに興奮しちゃった俺が言うのもなんだけど)
そんな楓に興奮し、彼女が気絶するまでしてしまったことにユウトは少し反省する。
(とうとう素人童貞を捨てることが出来たんだな俺……しかも一晩で二人と。来て良かったな日本)
ユウトは日本に来たことで玲と楓と出会え、そして二人と恋人同士になれたことに感動し幸せを実感していた。
しかしそう上手く事が運ぶはずもなく……
「なっ!? か、楓!? どうしてユウトの部屋から!?」
楓が起き清浄のネックレスでユウトが彼女の身体を綺麗にしたの後、皆が起きる前に一緒にシャワーを浴びようとユウトが楓の腰に手を回し部屋を出た時だった。
恐らくトイレに行っていたのだろう。リビングから歩いてきた玲とバッタリ会ってしまった。
玲は驚愕の表情を浮かべ、楓は後で玲と話し合おうつもりだったのにその前に見つかってしまい、あちゃーと言わんばかりに額に手を当てた。
その後は修羅場である。二人がナニをしていたのか一瞬で理解した玲は、般若の顔を浮かべ収納の指輪から剣を取り出しユウトへと斬りかかった。それを慌てて身体強化で受けるユウトだが、肉体に傷はつかねど市販のTシャツは切り刻まれる。
玲も自分の斬撃がユウトに通用しないことは重々承知の上だが、斬らねば気が済まなかった。だから何度もユウトを斬りつけた。
これは本気だと思ったユウトは、逃げながら落ち着けと声を掛けるが玲は聞く耳を持たずユウトへと斬りかかる。そしてテントの外に逃げるユウトを追いかけ、ユウトがゴブリンを処理している間に追いついては何度も斬りつけた。その姿はいつぞやの翠に酷似しており、その行動は母を軽く凌駕していた。
とはいえ玲が怒るのも当然だろう。昨夜お互いに好きだと気持ちを打ち明け、初めてを捧げただけでなくユウトの望むままに何度も愛し合った。そして幸せな気持ちで部屋に戻って眠り、目が冷めたら妹とも肉体関係を持っていたのだ。到底許せるものではない。本当に最低な男である。
楓は言い方は悪いが姉の彼氏を寝取った形になるので納得はしている。最初から姉と一緒にユウトを共有するつもりだったので、彼女に不満はないだろう。だが玲は違う。初めてできた恋人がその日の内に自分の妹と浮気をしたのだ。怒って当然である。
その後、
確かにユウトは玲と楓の二人が好きだと玲には言ったが、それが本当に伝わっていたのかは確認をしていない。そして案の定、玲は聞いていなかったからこそ、こういった事態を招いたのである。
それから落ち着きを取り戻した玲を連れて楓がテントに戻り、ユウトもその後ろを恐る恐る付いていった。後ろから見れば全裸にしか見えない姿で。
その日は朝食時も昼食の時も玲はユウトを恨めしそうに睨むだけで、ユウトが話しかけてもずっと無視をしていた。楓は空気を読んで黙っており、食後は小部屋で黙々と魔銃の射撃練習をしていた。
玲と楓はテントに戻ってからも話し合いをしており、そこでユウトを共有するということで話がついていた。これは小学生の時に同じ男の子を好きになった際にした約束で、今後また同じ男の子を好きになったら姉妹で取り合ったりしないで共有して仲良くしようというものであった。
このように女性が一人の男性を共有するというのは、三ツ星クラスの探索者によくある関係であった。母親が探索者であり、そのパーティメンバーとも親しかった二人はその事を小学生の内から知っていたのだ。
玲もその約束は覚えていた。それに楓がユウトを好きなのを知っていたのに断りもなく先に告白してしまった事への負い目もあり、ユウトを共有することを受け入れるしかなかった。
ただ、頭ではわかってはいても感情は別だ。自分のことを好きだと言ったのに、妹にすぐ手を出したユウトを恨めしく思うのは仕方ないだろう。
しかしそんな玲の不機嫌は、夕食を食べ終え6回目の魔導術を施術するまでしか続かなかった。
「あっ、あっ、ユウト……好きだ……んくっ……もっと強く抱きしめてくれ……楓にしたのと同じように私にも……」
最初こそつっけんどんな態度で施術を受けていた玲だったが、すぐに催淫の魔法に耐えきれなくなりユウトを求めた。そして昨夜よりも激しく、そして長い時間ユウトと愛し合った。
そんな玲にユウトは、やっぱり玲は俺のことが好きで、独占できないからスネてただけなんだな。可愛い女だ。ななどとトンチンカンなことを考えていた。催淫の魔法で強制的に仲直りエッチに持っていっただけなのだが。
その後、玲が何度目かの絶頂を迎え失神すると、ユウトは彼女を抱きかかえ部屋へと送り届けベッド寝かせた。それから楓の部屋へ行き、彼女のベッドで魔導術の施術を行った。すると欲情した楓にまた襲い掛かられ、そのまま朝まで愛し合うことになる。
こうしてユウトは双子の義妹と恋人同士となり、そして魔導術を行う度にエッチをする日々を送ることになるのだった。
時は少し遡り、早朝にユウトと玲が修羅場を迎えていた頃。
同じく18階層の階段の安全地帯に、探索者パーティ『ウィンクルム』の面々が話し合いをしていた。
「うーん、困ったわ」
テントの前に設置したテーブルの前で、このパーティのリーダーである佐竹 由美が腕を組み難しい顔をしている。
「様子を見るしかないわね」
同じテーブルで眉を寄せ考え事をしていたサブリーダーの小野 綾子が、諦めたように由美にそう告げる。
「俺も今は危険だと思う。何から逃げているのかはわからないが、ゴブリンが固まりすぎている」
続いて由美の後ろで腕を組んで立っていた太田も綾子に同意し、ほかのパーティメンバーも皆が頷く。
由美たちウィンクルムは昨夜この18階層にたどり着き、そして階段横の安全地帯で野営を行っていた。そして早朝に安全地帯を出て18階層に足を踏み入れたのだが、突然大量のゴブリンたちが何かから逃げるように向かってきたことで慌てて安全地帯に戻ってきていた。
ユウトを追いかける玲を止めるため、楓が
「そうだね。ここまで順調だったし、急ぐこともないか。でもゴブリンたちは何から逃げてたんだろ?」
「さあな、だが13階層でゴブリンとの遭遇率が高かったことと関係があるのかもしれないな。考えられるのはダンジョンになんらかの異変があって、それに怯えているとか」
「え? それって大変動の前触れとか?」
太田の考察に由美がテーブルに両手を付き身を乗り出す。
大変動とは、ダンジョン内の壁や罠が移動する現象を言う。大変動が起こると今まで使っていた地図が役に立たなくなり、探索に何倍もの時間が掛かるようになる。それだけならまだいい。怖いのは壁の移動などに探索者が巻き込まれ、壁と壁に挟まれてしまうことだ。そうなるとまず助からないだろう。
この大変動の予兆として、ダンジョン内の魔物が怯えたり逃げ出したりする事がある。
「でもこのダンジョンって2年前に大変動が起こったばかりよね? そんな短期間にまた起こったりするものなの?」
「前例はある。稀ではあるが、今回がそうじゃないとは言い切れないだろう」
大変動が起こる周期は一定ではなく、だいたい2年から10年の間に起こる。太田は過去の事例から、この小鬼ダンジョンにも起こり得ると考えているようだ。
影狼が走り回っただけなのだが。
「由美、探索中に大変動に巻き込まれたら目も当てられないわ。今日一日はここで様子を見ましょう。明日またゴブリンたちの様子を見て、今日と同じようならまた話し合いましょう」
「そうだね、ここなら安全だし一日様子を見よっか。幸い予定より早く着いたおかげで食料には余裕があるしね」
大変動では階段だけは移動しない。そのため由美たちはこの安全地帯で一日様子を見ることにしたようだ。
「まっ! しょうがないね! じゃあ私は明日まで裕司に奉仕してもらおうかな」
話を聞いていた美佳が金髪に染めた髪を掻き上げながら椅子から立ち上がり、その日焼けした巨乳をぶるんと震わせながら酒田へウィンクする。
一日休みになったので、明日まで酒田に相手をしてもらうつもりのようだ。
「じゃあ私も裕司に相手してもらおっと♪」
「私もそうしようかな。やることないし」
「やることないからヤルしかないよね」
「やだ、カオリったら下品〜♪」
美佳に続き他のメンバーも酒田に相手をしてもらおうと立ち上がる。
「ひえぇぇ、無理っス! 死ぬっス!」
「諦めろ裕司」
6人もの女性たちにロックオンされ、顔を青ざめさせる酒田の肩に太田は手を置きながら首を横に振る。
「そ、そんなぁ」
太田に見捨てられた酒田は女性たちに腕を掴まれ、引き摺られるように彼女たちのテントへと連れ攫われていく。
「賢治は私たちと……ね?」
そんな酒田に憐れみの目を向けていた太田の腕を由美と綾子が抱きかかえ、ほかにも2人のメンバーが恥ずかしそうに太田を見つめていた。
「あ、ああ」
太田は明日はゴブリンたちがいつも通りでありますようにと願いつつ、由美たちにテントへと連行されるのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます