第16話 相当やばい商品
「なあ、あんたたちは『姿なき海賊団』だろう。
船長は船倉の入口でなおも粘った。
「それは貨物を確認して判断します」
「なあ、そうするって約束してくれよ。もう引き渡し契約している顧客もいるんだよ。約束してくれるまで船倉の扉開けないぞ」
「開けてくれなくて結構です。あなたを縛ったままサメのいる海に放り込んでから、こっちは『開錠』の魔法で開けるまでです」
「ちいっ」
船長はさっきより大きな舌打ちをすると、しぶしぶと扉を開けた。するとそこには。
◇◇◇
「うっ」
その異臭にジェフリーは自分の鼻と口を袖で覆った。
窓一つない暗闇の船倉にいたのは何十人ものエルフだった。みな鉄鎖をつけられている。
「思った通り奴隷貿易船でしたね。船長。先年、先進七ヶ国間で奴隷貿易を禁ずる紳士協定が締結されたのを知らないわけではないでしょう?」
「ふんっ」
アミリアの鋭い言葉に船長はそっぽを向く。
「こいつらは
◇◇◇
船長の開き直りにアミリアの怒りの鉄拳がその顔面に向かって飛ぶ。
しかし、それはすんでのところで阻止された。
ジェフリーがその拳を右手の平で止めたからだ。
「ジェフリー兄さま。何故止めるのです。
「いててて。いいパンチ持っているなアミリア。ああ、
「えっ?」
顔を赤面させるアミリアを尻目にジェフリーは船長のそれまでは自由にさせていた足をも縛り上げる。
「さあて、ご禁制の奴隷貿易をやっていたとなりゃあ話は別だな。この
「ばっばっばっ、馬鹿言うなっ!」
船長の顔は青ざめる。
「ここが陸地からどれだけ離れていると思っているんだ。おまけにこの周りはサメもうようよいるんだぞ」
「知っているよ。そんなこと」
ジェフリーは厳重に縛り上げた船長を担ぎながら言う。
「だから正当な貿易をしている普通の
◇◇◇
「おいっ、
「えーっ?」
「そういう船だったんですかい?」
「
「さすがは
「いいからおめえら、とっとと
「待てっ、おまえたち『海賊』じゃないのか? そんなきれいごと言ってないで、もっとうまくやった方がいいんじゃないのか? エルフは一部貴族に高く売れるぞ。売り先はわしが紹介してやる」
「あのなあ」
ジェフリーは最後のあがきをしようとした船長の口に手近にあった小銃の銃口を突っ込んだ。
「むごむごごご」
「あんまり『海賊』を舐めないでくれよ。確かにそういうことする『海賊』はいるがね。そういうえげつないことやる奴らはな、一時的には儲かっても、いずれもっとでかい奴らに潰されるんだよ。力技でな」
「お頭。
「むごごごご」
「よっぽどそうしてやりたいが、さっきアミリアが
「へーい」
◇◇◇
(さあて、とりあえずは人員半分に分けて操船するにしてもだ。無理があるからそう長くは航海できねえ。そしてエルフたちをどうするかだなあ)
そんなことを考えながら再度船倉に向かうジェフリー。
船倉はほのかに明るかった。アミリアが「灯明」の魔法をかけたらしい。
だが、それは床にたまった汚物や食べ残しをも見えるようにしてしまっていた。
「清浄」
アミリアの魔法で汚物などは軽く洗い流される。
「どうだ?」
ジェフリーの問いにアミリアは首を振る。
「駄目ですね。汚れが床に染みついてしまっている。一回入港して徹底的に清掃しないと取れないです」
「そうか」
◇◇◇
「*&#“$‘%~」
エルフたちの中で一番年齢がいっていそうな男が何か言ってくる。
「翻訳」
すかさずアミリアが魔法をかける。
「わしたちをどうしようというのだ?
ジェフリーは淡々と答える。
「
「何だ? 騙すつもりか?」
「今までのことを考えればそう思われても仕方ないと思うが、望むようにしたい。元いた場所に送り届けてほしいのならそうしょう」
「元いた場所には帰りたくない」
「!」
その答えはジェフリーには衝撃だった。
「何故だ?」
「わしらの部族は他の部族に戦争で敗れ、捕らえられた。そして、
エルフの老人はジェフリーの持っていた小銃を指差した。
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