第4話 お頭は国王特別秘書に手を出したのか
「ふうっ」
思考に疲れたジェフリーはまたも息を吐くとテーブルの上に目をやった。
そこには女王名での依頼書が置いてある。
依頼内容をもう一度確認しようとして依頼書を手に取ったジェフリーは、添付書類があることに気づいた。
広げてみると……マルク群島の地図だ。しかもかなり精巧な地形図である。
(まあこれくらいのサービスはないと。おっ)
ジェフリーは唸った。
(なるほどな。やるとしたらこの方法しかないな。でもまあ危険なことには変わりがない。明日部下たちにこの賭けに乗るか聞いてみて乗るようなら……)
「やっと気がつきましたか? その戦術に」
◇◇◇
「うわああ。なっ何で、鍵かけたので
「鍵は『開錠』の魔法で簡単に開きました。そして、このナイトウェアは今は既婚の王族・貴族の夫人は普通に羽織っているものですよ」
「
「多少の順番の前後は許容範囲だそうです」
「駄目なものは駄目だろ」
「そんなこと「睡眠」
「ふう」
ジェフリーは息を吐いた。何とか一瞬の隙をついて睡眠魔法をかけられた。
よろよろと崩れ落ちそうになるアミリア。
「おっと」
それを両腕で抱え込むジェフリー。
そして、いわゆるお姫様抱っこの形で抱き上げ、寝室に戻そうとするジェフリー。しかし……
(くそっ、何だってこう、出るとこしっかり出てやがるんだ。十年前はガリガリのチビだったくせに)
「うっ、うーん」
アミリアの寝言にギクリとするジェフリー。
(まさに生殺しだが、ここで手を出してはいかん。一つ間違えば
やっとの思いでアミリアを寝台に寝せ、寝室を出たジェフリー。
(くっそー。この場で船を出して最寄りのサウタの娼館に乗り込みたいところだが、明日にはアミリアに依頼を受けるか受けないか答えにゃならん。くっそー)
応接のドアを閉めたジェフリーは今度は部屋の鍵を魔法で施錠する。
(何とかアミリアより
◇◇◇
ジェフリーはやはり寝付けなかった。
しかし、それでも朝はやってくる。
ジェフリーの指令で全ての海賊団員は頭目の館前に集合している。
それ自体は珍しいことではない。獲物となる
それよりも海賊団員たちが気にしているのはジェフリーの右後ろに控えている少女のことである。昨日海賊団員たちの警護を突破して、頭目に会ったというあの少女だ。
「みんな集まったか? 今日はいつもに増して重要な話がある」
ざわっ
ジェフリーの言葉にざわつく海賊団員たち。
「お頭っ!」
一人の海賊団員が手を挙げる。
「質問は後でまとめて答えたいところだが、何だ?」
「その後ろにいる女の子。お頭のコレですかい?」
「なっ、なっ」
絶句するジェフリーを尻目にアミリアはずいと前に出て一言。
「そのとおりです」
ざわざわざわ
もう海賊団員たちは大騒ぎである。
◇◇◇
「馬鹿野郎。
「え? お頭。国王の特別秘書に手を出したんですかい?」
「見ろ。あの女の子。どう見ても十代だぜ」
「知ってるか。お頭は一緒にサウタの娼館に行くとその場で見た感じ一番若い娘連れてっちゃうんだぜ」
「だが、名誉のため言うとお頭は十八歳未満には絶対手を出さない。これホント」
「何と。お頭は『合法ロリ』好きだったのか」
「馬鹿野郎。俺は
ざわざわざわ
「いいかっ! これから
しん
◇◇◇
「という訳だ。正直、今までうちの海賊団は危険な相手との戦闘は避けてきた。だから『姿なき海賊団』と言われてるんだが、今度は事情が違う。ホラン王国の要塞が相手だ。ただその分見返りも大きい。俺にとっても今まで苦労をかけてきた
それに俺自身もクローブとナツメグの販売で上がる収益の分配は魅力的だ」
王配の話は出さない。話がややこしくなるからだ。王配の話に反対のアミリアもその話は出さない。
「でもまあ危険なことには変わりがない。だから無理に参加しろとは言わねえ。だが、不参加の奴は首尾良く作戦成功しても海軍軍人には推薦出来ねえ。代わりにアミリアを通じて、何らかの職を斡旋できないか頼んではみるが」
ざわざわざわ
ざわめきが再び大きくなる。それを黙って見守るジェフリー。しかし、ここでまたもアミリアはずいと前に出た。
「みなさん!」
しん
場はまたも静まりかえる。
◇◇◇
「みなさん。みなさんは何らかの事情はあって『姿なき海賊団』におられるのでしょう。だけど、海賊は長く続けるべき職業ではありません」
ざわ
「みなさん。ここは功を挙げ、海軍の軍人になりませんか? 先の内戦で多くの人材を失ったイース王国は才ある者を歓迎します」
ざわざわ
「なるほど、厳しい戦いが予想されます。しかし、策はある。みなさん、ここはジェフリー頭目とこの私アミリアに賭けてみませんか?」
ざわざわざわ
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