第3話 海賊頭目と女王秘書の熱い夜
「なななっ、何を言っているんだっ!
ジェフリーは顔を真っ赤にしてがなりたてた。
「うちの連中を海軍に入れるのはいい。イース王国の内戦のあおりで故郷に帰れなくなった奴ばっかりだからな。安定して食えるようになるのはありがたい。だが、
「そうですよねえっ!」
何とアミリアはジェフリーの言葉に反論してくるどころか同調してきた。
「海軍編入もいい。ジェフリー兄さまが出奔して、侯爵位は
「えーと。
「殆どのことには納得しています。でも王配の件だけは納得していませんっ! どんな理由があれ、エリザ姉さまは一度はアドルフを選んで、ジェフリー兄さまを振ったのでしょう。それを今更王配って何なんですかっ!」
アミリアの顔も真っ赤になってきた。
「まったくエリザ姉さまがアドルフを婚約者に選んで、ジェフリー兄さまの婚約者の席が空いた時、私がどれだけ喜んだか分かっているんですかっ? そしたら当のジェフリー兄さまは出奔しちゃうしっ!」
「いやだってな、
「そうですよっ! 私だってジェフリー兄さまのことが好きだったんですからっ!」
「ま、ままま、待てっ! 俺が出奔した時、
「舐めないでくださいっ! 女の子は八歳でもレディなんですっ!」
またも沈黙の時が訪れた。双方が真っ赤になり、次の言葉が出なくなったのだ。
◇◇◇
「まあともかくだ」
沈黙を破ったのはまたもジェフリーの方だった。
「王配の任命はともかく他の報酬は魅力的ではある。しかし、二隻の船で要塞に挑むのは無謀なのは事実だ。
「そうですね。もっともなお話しです。ついては一つお願いがあります。私が乗船してきたラ・レアルが沖合で待機しています。海賊団と戦闘しに来た訳ではないですし、そもそも
ラ・レアルではこちらのガレオンには勝てません。入港を認めてください」
「いいだろう」
「もう一つ。一晩待たせるということは私はこの建物に泊まれるということですね?」
「ああ。だけどここは王宮じゃない。寝室は一つしかないからな。そこを使ってくれ。
「あら、海賊団の頭目たるもの寝室で寝るべきではないですか?」
「馬鹿言え。いくら昔から知っているったって、
「いえ、そういう話ではなく、一緒に寝室でやすめばいいという話です」
「ばっばっばっ、馬鹿言うなーっ。もう
「ご心配なく。十分自覚した上で申し上げております。
「そうはいかん。
「ジェフリー兄さまももう二十八歳でしょう。そろそろそういう関係作ってもいいのではないですか?」
「とにかく今日の
「同衾すればいいアイデアが出るかもですよ」
「出るわけないだろうっ! それどころじゃなくなるわっ!」
「それは
「ええいっ、もういいっ!」
ジェフリーはアミリアをソファーから立たせると背中を押し、寝室に押し込んだ。
「
「鍵はかけませんよ。開けておきます。あ、
「分かった。
「ちぇっ」
◇◇◇
「ふうっ」
応接に施錠するとジェフリーは大きく息を吐いた。
(海賊稼業は気楽って言えば気楽だが明日をもしれない身だ。部下どもを海軍に編入してくれるってのはありがたい話だ。俺自身はもう宮仕えはまっぴらだが、クローブとナツメグの販売で上がる収益の分配の約束が守られりゃあ、何とかしばらくは食っていけるだろう)
(王配の件はご辞退申し上げるしかないな。まあ、それもこれも作戦が成功した上の話だが)
「さて」
独りごちた後、ジェフリーは考え込む。
(うちのガレオンの大砲は破壊力より射程重視のカルバリン砲だ。アドルフが守っているマルク群島の要塞も同じだろう。射程が短いとアウトレンジ攻撃されたり、接近されて強行上陸されたりするからな)
(防御力は
(後は魔法力で攻撃力をどのくらい付加できるかの勝負だが、こいつもいけねえ。アドルフの奴はいけ好かないが、近衛魔道師団時代から奴の方が魔法力が上なのは認めざるを得ない)
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