第47話 変わらないもの 2



 真っ暗なリビングで携帯の画面だけが煌々と光っている。


 名前だけを検索しても出てきたのは別人ばかりだった。だけど「自殺」を付け加えたら、誰かの古い個人ブログが出てきた。更新もとっくにされていない。そこには……。


 上原駿は自殺した-

 


 はっきりと。


 そんな………………いや……待って。


 これ大丈夫……別人だ!同姓同名なだけだ。亡くなった年齢が25歳って書いてある!よかった。焦った。

 上原君が死んだのは21歳だし。


 それに日記を読んでいくと結婚もしていて、子供もいるって。上原君ではないな。

 ブログ書いているのは高校の同級生か。よかった……この中に出てくる上原さんには申し訳ないけど。


 僕の友達の上原君じゃないと確信し、字を追うのをやめ、指の腹で携帯の画面を素早く上にさっと持ち上げた。


 あ………。


 一瞬、なにか引っかかる言葉が見えた。丁寧に指で元に戻す。胸がざわざわする。


 次の一行で、ヒッと声が出てしまった。


『可愛い奥さんの名前は愛さん。愛さんは上原くんの中学の同級生だった……。


 愛。

 え?どゆこと?偶然?

 愛……って。別人だよな?


 私は何回か一緒にご飯を食べたり、家にも遊びに行ったことがある……まさか、まさかあんな事故に巻き込まれるなんて……』


呼吸が浅くなる僕。増田さんなわけない。増田愛なわけがない。きっと偶然-。


愛さんが暴走した車に轢かれて亡くなるなんて』

 

 目の前がぐらぐらと揺れる。


 ブログのプロフィールを見ると、主の男性は増田さんや上原君たちと同い年。


そんな、そんな……。

 こんな偶然あるか?いや本人なのか?


 変わったのか?

 ゴンの説教の時間が短くなって……上原君は社会の勉強をちゃんとして、目をつけられなくなった。いろいろな事が変わって……僕や楓と出会って、老人会館にも行って……増田さんとたくさん過ごして、カラオケボックスなんかで告白しちゃって……。


 手に入れた新しい未来。


 子供がいるのに奥さんが交通事故で亡くなって、夫は後を追うように自殺って……。暴走した車は決して許せないと書いてある。


「何見てるの?」


「うわっ!」


 増田さんがいつの間にか起きていて、リビングに入ってきた。驚いて大きな声を出してしまう。

 増田さんの声は弾むように聞こえたけど、それに反して顔は裏腹にとても悲しそうに見えた………ような気がした。


 僕は増田さんをいつもよりも長く見つめていた。


 二人が結婚する。上原駿君と増田愛さん。すごいな……。すごく嬉しい。



 でもその先が地獄が待っているなんて……。

 どうしたらいい?

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