間章三

***

「全滅しただと⁉ いったい何にやられたというのだ⁉」

 テオフィル・ラガトは自身の執務室である総督室で、その知らせを聞いた。地下都市の資料館へギガセンテの資料を収集しに向かわせた調査隊から連絡が途絶えたのだ。しかも、彼らがつけている生体情報を収取するブレスレッドからの情報送信が止まった。つまり、彼らは誰一人として生き残っていないことを示している。

 そして気になるのが、彼らは三機のレフォルヒューマンをつれていた。地下都市に顰める大きさの機械獣相手にやられるような連中ではない。何が潜んでいる。この都市の真下に。

 無情に望んでいない知らせを吐き出した携帯端末のスピーカーから、グレゴリーが指示を仰いでくる。

『どうする。もう一度編成して送り込むか?』

「グレゴリー。それではいたずらに兵士を死にいかせるようなものだ。まずは偵察ドローンを送り込むべきだ」

 グレゴリーはやや不服そうに返す。

『そんな流暢なことを言っていられるほど、事態が深刻でなければいいがな』

「もう充分深刻だ。だからこそ慎重にならないといけないのだ。これ以上切り札を削るわけにないかない」

『それで、地下に我々の脅威となる敵が潜んでいたらどうするというのだ?』

「その時はファーベルクを送る」

『インスペクターは? 変更を申請してきたんだろ。代わりになる奴は見つかったのか?』

「ハンス・ゾロアに任せるつもりだ」

『本気か? あいつは軍から外れた政治野郎だろ』

「私は、彼ならレオンを制御できると踏んでいる」

『そこまで言うならなにも言わないが。これ以上状況が悪化するのは避けてくれよ。我々にはあとがない』

「ああ、わかっているさ」

 通信を切ったあとの静寂に包まれた部屋でラガトは、頭を抱えた。最悪な事態が予想された。

 二年前のグランツェの陥落。いや、それ以上のことがパウロで起ころうとしているのかもしれない。

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