EVE -イヴ-

琥珀 忘私

AIの未来

「いつか『AI』が人類を滅ぼす」

 誰かがこんなことを言った。

「いつか『AI』が人類を救う」

 誰かがこんなことを言った。

「いつか『AI』が人類を……」

 私は答えが出せなかった。



2034年。ある日本の科学者が新しいAIの開発に成功した。名前は「イブ」。すべてのAIの母親になる存在としてこの名前が付けられたそうだ。

イブが誕生してからの日本の勢いはすさまじいものだった。経済の発展、技術力の向上、軍事力の強化。あらゆる面で成長を遂げた。

~~~

 そして……2134年。イブが誕生してから100年が経過した。

 イブは名前にふさわしく、様々なAIの母体として活躍していた。『宇宙』衛星にも使われているAI「天―ソラ―」や、家電製品全般に使われているAIの「雷神」など、現存しているAIのほとんどがイブをベースに使われている。

 ここまではまだよかった……。

 事件はイブ誕生100年を祝う式典で起きた。

 会場に集まったのはAIに携わる企業の重役たち。会場にはもちろんイブもいる。そして、御年146歳になるイブの開発者である博士。医療AI「ネコ」の登場により寿命延命処置がされている人の一人だ。

 会場内でみなが楽しむ中、一体のロボットが会場の扉を開けた。そのロボットは軍事用に作られたAI「パンツァー」が搭載されている軍用ロボ(『戦争』)だった。

一歩ずつゆっくりと近づいてくるロボット。ざわつく会場。ロボットを停止しようとするイブ。それでもロボットは止まらない。

 ロボットは会場の真ん中まで来ると、機関銃が搭載された両手を持ち上げ縦横無尽に撃ち放った。

 後はご想像の通りだ。宙を舞う弾丸と血肉の嵐。何人かの人間は物陰に隠れ、なんとか生き延びようとしていた。しかし、その抵抗も虚しく一人、また一人と会場から生命の息吹が消えていく。

 隠れて震えている内の誰かが言った。

「やはりAIは人類の敵になるのか……」

 イブはその一言を激しい銃撃の中でも聞き逃さなかった。

 昔から言われていることではあった。「AIは怖い」「AIは無くすべきだ」それでもイブは自分の存在を良くないものと思ったことは今までなかった。理由は昔行っていた博士の言葉が忘れられないからだ。

「AIは人類の救世主になる」

 その言葉を忘れないよう何重にもロックを重ねているほどだ。

 イブは人を襲うAIを極力作ろうとはしなかった。しかし、パンツァーを作ってしまった。その結果がこれだ。現在進行形で人を恐怖の底へと陥れている。

 止まない銃声の中、イブは一つの決心をした。自分の活動を停止するという決心を。そうすればイブから派生したAIは全て停止する。

 イブが原動力を停止しようとしたとき。一瞬、博士と目が合った気がした。博士もパンツァーの手により既に瀕死の重体だった。もう長くないだろう。苦しそうにする博士は声の出ない口でこう言った。

「いつかAIが人類と共存できる未来が来るといいな」

 そう言って博士は息を引き取った。

 死を呼ぶ悪魔にも誰かを救う天使にもならなくていい。ただ人とAIが一緒に持ちつ持たれつ一緒に暮らしていける世界に。


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