改メテ想ウ-AD.2007-08-08

 俺はナルとの待ち合わせの時間よりかなり早めに公園の噴水前へと出向いていた。

 そして噴水の前まで来るとがいた。

 俺をこの世界へと送り込んだ時空管理局のエージェント。

 この世界の一般的なスーツ姿だが、なぜ噴水の上に立っているのかが理解に苦しむ。

 例え資格のない者には見ることも触れることもできない存在であってもだ。

「久しぶりですね。『クゥオン・ジ・クウ』さん。こちらの生活には慣れたようですね。」

 エージェントは前世かつての俺の名前で話しかける。

「今の俺は久遠寺ソラだ。間違えるな。」

 俺はサングラスを外し、蒼い瞳でエージェントを睨みつける。

「それにこの世界の危機を救った以上、俺はお払い箱だろ。」

 エージェントがなにか言う前に俺は拒絶の意思を示す。

 以前会った時はエージェントが先に条件を提示してきたことで俺は有無を言わさずにこの世界へと転生させられた。

 こいつが現れたということはロクなことが置きていないと言うことだ。

「そう邪険にされなくてもいいではないですか。今日はお願いがあって参上したことは確かですが。」

 慇懃な態度でエージェントが話し始める。

 それを止めようと俺は久しぶりに能力ギフトを解放しようとする。

 しかしもとよりその力は時空管理局が俺に与えた力である。

 エージェントは既に対策として対能力結界アンチ・ギフトを展開していた。

 こうなっては手も足も出ない。俺は話しを聞く以外の選択肢はなかった。

「あなたがこの世界を危機から救ったことには感謝しています。」

 いけしゃあしゃあと心にもないことをと思った。

 しかし世界崩壊の危機を回避すること自体は時空管理局やつらと俺の共通目的だから本音だったのかもしれない。

「しかしですね。現在、様々な世界の危機が加速度的に増えています。そのため、我々としましては経験者に再度、世界を救う力を貸してほしいと考え、今回あなたの元へ参じた問いことです。」

 要は人手不足なのでロートルに再度手伝えということか。

「しかし世界崩壊の速度が早くなっており、現地に転生して成長を待つと言う方法では手遅れになる可能性があります。」

 困ったようなそうでないような表情でエージェントは話しを続ける。

「そこで少々強引ではありますが直接現地へ転送する方法を取らせていただきます。その際に現地の知識や言語を付与エンチャントしますのでご安心ください。」

 そう言うとエージェントは俺の目の前の空間に契約書を表示した。

 ご丁寧に日本語で記載されている。

「もし俺が断ったらどうする?」

 契約書に目を通すフリをしつつ話しかける。

「その場合は仕方ありません。は諦めると致します。」

 言質は取った。

 俺はすぐさま契約しない旨を伝えた。

 エージェントは一瞬困ったような顔をしたがすぐさま慇懃に一礼する。

「承知いたしました。では今回は諦めましょう。」

 すんなりと諦めたことに拍子抜けしたが、うまくいったと言っていいだろう。

 俺はニヤリと笑いかける。

「そうそう、ソラ様はこんな話しをご存知ですかな?」

 唐突にエージェントが話しかける。

転生能力者リターナーの周囲には同じ能力保持者もしくはそうなりうる人物が集まりやすいと言う話しを。」

 何の話か分からなかった。少なくとも俺の周囲に転生能力者はいない。

「それは能力が引き寄せるとも言われております。今回はそんなかたちで引き寄せられた方の中から候補者を選ぶことにします。ではよしなに。」

 なにを言っているのか気が付いた俺はエージェントを引き留めようとしたが、蒸発する様に消えてしまった。

 どうすることもできない絶望感に支配されていると、不意に肩を叩かれた。

 振り返るとナルが笑顔で立っていた。

 俺の瞳を見てキレイだと呟くナルを見て、思わず彼女を抱きしめていた。

 自分の早計な判断で他の人の人生を狂わせたか可能性が有るかと思うと恐ろしくなり誰かにすがりたくなった。

 イヤ。俺はナルに助けてほしかったんだ。

 自分でも否定しきれないほど彼女の存在は俺の中で大きくなっていた。

 そして同時に嫌な予感がした。

「好きだよソラくん。」と小声で呟くナル。

 俺はとっさに彼女から離れると「ゴメン」と一言だけ告げその場を走り去った。

 誰かが管理局へ連れて行かれる前にエージェントを探しだし再契約するために。

 しかし、その数分後にナルが車にはねられ絶命した。

 タイミング的に転生能力者へとさせられたのだろうと俺は絶望のあまり記憶を改竄した。

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