　気がついた時、俺は全身汗だくな状態でテーブルに両手を付けて支えている状態だった。

　息も荒い。なぜ記憶をこんなにも鮮明に思い出したのだろうか。

　呼吸を整えつつ考えをまとめようとしていると、不意にテーブルの上に落ちたサングラスを持ち上げられた。

　それに合わせて顔をあげると、成瀬ナルの無表情な瞳が俺を見下していた。

「あの日の詳細を追体験したみたいだけどダメだよ。記憶をキレイな形に捏造しちゃ。」

　何のことだ？全く見に覚えのない言葉を浴びせかけられる。

　俺はナルと付き合った日にナルは死んだのは間違えない。

「それに前世の成瀬ナル（わたし）が先輩と付き合っていたなんて、あなたの誤解。そうやって少しづつあなたは都合よく記憶を捏造することで自分を保っていたのよ。」

　成瀬ナルは不意に俺の胸ぐらを両手でつかむと自分の顔の高さまで吊り上げた。

　とても少女の力とは思えないが、そんな考えより前に俺は「思い出しなさい」と告げられた一言で再び意識が混濁していった。

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