第2話 揉め事
適当な依頼を受け現地へと向かう中で彼女と色々と話す。
「周りからも止められました、冒険者なんてやめておけって」
彼女クリンは150㎝くらい小さいながら年齢は15なのだという。
「俺でも止めてる」
かつて、冒険者になりたい夢を親が止めた理由がわからなかった、保守的、親ならば応援すべき、とさえ思ったけれど今となればわかる、先はないとわかっているのだから親は子の為にそれを止めるに決まっている。
「でも冒険者になりたいって思って」
「まぁなるだけなら簡単だけどな......どうしてなりたいんだ?」
「これッ」
彼女はポシェットからボロイ本を見せてくる。
『ベルンの冒険録』
60年前に活躍したベルンの活躍と偉業について書かれた本。
「懐かしいものを」
それは俺も冒険者に憧れるきっかけになった本、なるほど彼女もこの本に憧れて冒険者を志したようだ。
「笑い......ますか?」
「いいや気に入った」
馬鹿だなとは思った、しかし、だから昔の俺を見ているみたいで色々としてやりたいとも思った。
それから色々と教えた、冒険者が気を付けること、非常食などだ、戦闘方法も教えた、魔法の基礎、剣術、武術、あれこれと俺が経験してきた冒険者としての人生を刻みつけるようにと――
■
俺とクリンがパーティを組んで数カ月、あるダンジョンの出入り口で何やら揉め事が起きていた。
「このダンジョンは関係者以外は立ち入り禁止だ」
「それは困る依頼人の為に必要なんだよ、ここらでしか取れないんだ」
「何度も言っている、冒険者登録をしていても此処は入れない」
それに文句を言っている奴ら、あれは冒険者だろう。
「ふざけるなッここ以外にも関係者以外は禁止とか言ってドンドンと行ける所がすくなって言ってるじゃないかッ俺たちに飢え死にしろっていうのかッ」
「それらの事は他の行政機関に話すべきだ、我らはただ部外者の立ち入りを禁じているに過ぎない」
「クソッ」
不味いなヒートアップして言ってる。
「大丈夫でしょうか......」
「ちと不味いかもな、止めて来る」
急いで走り、両者の間に立つ。
「まぁ待て、争いはなしにしよう?な?」
俺は冒険者たちの方を向いて落ち着かせようとする。
「お前、冒険者か」
「そうだ、今では少なくなった同業者の一人だよ」
「ならどいてくれ、もう我慢できない」
「無理だ、どうか堪えてくれ」
もう一人、女の冒険者が出て来る。
「堪えるって......このまま我慢してたって減るばっかりよ、御国は私達を邪魔だと思ってるのよ、わかるでしょう?」
すると後ろの見張りが声を出す。
「そうだ、お前らは邪魔だ」
「――」
「冒険者はかつては求められたのだろう、しかし今はもう要らない、わからないか?」
挑発だ、もしこれを買ってしまえば冒険者免許をはく奪される。
「待て、買うなッこんな見え透いた挑発に――」
もう同業者が減るのは見たくないんだ――
「やめてくださいッ」
するとまた声が聞こえる、クリンだ。
「クリン......」
クリンの声にいきり立っていた冒険者が落ち着きを取り戻す。
「冒険者がこんな事で戦っちゃダメッ、こんな挑発に乗らないで!」
「......」
「お願いします」
クリンの説得を受け入れてくれたのか冒険者が一人、また一人と場を後にしていく中、一人の男がもの言いたげに見てきた。
「なんだ?」
「あれはお前の仲間か?」
「......そうだ、出来た冒険者だろう?」
「あぁ......時代が違えば良い冒険者になれただろうな.......」
どうにかこの場を抑える事が出来た。
「ありがとうクリン」
クリンの方を見ると足をガタガタと震えている。
「怖かった......」
「......そうだよな」
クリンの背をゆっくりと押してこの場を去っていく。
「お前は強い、俺なんかお前くらいの時は木陰に隠れてたはずだ」
そう、クリンはすごい冒険者になれる......いや本当なら時代が許せば成れたのだろうな。
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