時代遅れの夢見人

村日星成

第1話 移ろいゆく時代の中で


 栄枯盛衰が世の常だ、冒険者と称えられた時代はいよいよ終わりを迎えつつあった。


「仕方ない、最近は国の機関が何でもしてくれるからね――」

「笑いごとじゃないッ冒険者は夢を見せてきたッ、人々の希望を背負ってきたこの歴史をヘラヘラ語るなッ!」


 世界中で国の力は強くなっていた、冒険者ではなく警察が軍隊が行政機関が代わりを為すのだ、人々は国家はもう冒険者を称えない、頼らない、滞在的な危険存在として白い目で向けられる事も多くなっていた。

 あぁ、わかってるさ、もう冒険者は求めれる時代じゃないんだな。


 一人一人と同業の冒険者は廃業していった、ギルドも潰れていく、ギルドの代わりに今風の風情のない施設が出来ていく。

 移ろいゆく時代、それに耐えられず町を去る冒険者もいた。

 かつての仲間も同志も消えていった。


 数少ない冒険者は田舎で、町の影で、こっそりとやり繰りをしているが将来はなかった。


 ■


 バンレスト王国、かつて冒険者を軸にして貿易を行っていた都市国家だったが、前代の王による侵略戦争の結果、バンレストはいくつもの都市国家をまとめ上げる大国の一つとなっていた。


 ここバンレストの首都イルトムには今も残る数少ないギルドの一つがある、今の冒険者にとってはオアシスだろう。


「......」


 俺、リオ=イルルックは冒険物語に憧れて親からの反対を押し切って15年前に冒険者になった。

 そして気が付けば30歳になっていた。


「はぁ」


 我を通す、というのは中々にしんどい......俺は道を間違えた。

 時勢を考えれば俺の選択は愚かだ、だけど当時は夢を見ていた、きっと冒険者は求められると思った......そう信じたかった。


 そんなことを考えながら酒に浸ってると受付嬢が話かけてきた。


「リオ、貴方にちょっとお願いがあるんだけど」

「お願い?......珍しい、どんなだ?」

「えっとちょっとね――」


 お願いというのは新人の冒険者が一人おり、熟練者の誰かとパーティを組んでほしいというもの、そこで俺に白羽の矢が立った訳だ。

 本当ならばお断り、と言いたいところだがパーティは大分前に解散したしまぁいいかとその依頼を受ける事にした。


「まさかこの時代に冒険者になりたい奴がいるなんてな」


 なにより、新しい芽がまだいるというのは嬉しい限りだった。


「良いよ、受けるさ」

「ありがとね、クリンちゃ~ん」


 俺が受けるとトコトコと栗色のショートヘア―をした華奢な女の子が剣を帯刀して不慣れそうに走り寄ってくる。


「は、初めまして私クリン=ラーナーンッ、よろしくお願いしますッ!」

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