第8話 公爵令嬢は狩りたい
リリアはギルド登録後に自分の店へ戻っていった。
さっそく依頼を受けるため、Fランクの掲示板を見に行く。宿代が銅貨30枚、ご飯が銅貨5枚だから最低でも銅貨40枚は稼ぎたい。
掲示板の内容を心の中で読みながら、条件の良いものを探す。
【魔兎討伐】
・薬の調合に魔兎の素材が必要です。
報酬内訳
魔兎の皮……8銅貨
魔兎の目……10銅貨
魔兎の肉……2銅貨
【魔木採取】
1本(1.5m)……約20銅貨
ひび割れ・水濡れなどで報酬に変動有
【薬草採取】
隣町の森で自生している薬草を探してください。
10束……20銅貨
もうお昼時も過ぎたため、隣町の森まで行く余裕がない。今できる仕事は魔兎討伐くらいだ。兎を2匹、狩ることが出来れば今日はとりあえず生きていける。あわよくば、3匹・4匹と狩ろう。受付の方に受けたい依頼を伝えに行く。
「魔兎の依頼を受けたいのですが……」
「かしこまりました。同じランクの仕事を行う場合は素材を同額で換金できるので、事前に受付する必要はないですよ。いってらっしゃいませ」
ランク外の仕事と特別依頼を受ける時は受付する必要があり、通常の依頼は特に受付する必要はないらしい。
冒険者ギルドを出て、町の外にある草原へ向かう。
初めて一人で外を出た。護衛も従者もいない外出は初めてなので少し不安になる。とりあえず森の方へ向かって歩いているが、兎がどこにいるか分からない。小説の世界では歩いているとすぐ魔物が見つかる展開ばかりだが、現実はそうはいかないようだ。すぐに見つけられる兎は普通の兎ばかりで魔兎が見当たらない。全ての魔物は目が赤いので見ればすぐに分かるのだが、目の赤い兎が全く見つからなかった。
集中して探し続けていると気づいたら森の入り口まで来ていた。町へ帰ろうとする人達がいたので、魔兎がいるか尋ねると『群れが森の奥にいる』と教えてくれた。
さっそく森の奥へ向かうと開けたところに赤い目に白い毛皮の魔兎がいた。
「土よ、いでよ。
土球で仕留めようと唱えたが、全く当たらない。
魔法陣を使って中級魔法を唱えれば、仕留めることはできるかもしれないが、魔法陣1枚50銅貨のため、20銅貨の兎に使うのは割に合わない……。
何度も外しているせいか、避けるたびにどや顔をされ完全になめられている。探して体力を消耗し、土球を外しまくって魔力も消耗したせいか、少し立ちくらみしてきた。
「そちは、戦い方を分かっておらぬ」
周りを見渡したが誰もいない……。疲労のあまり幻聴まで聞こえるようになったのか。よし昼寝をしよう。
「これ!幻聴ではないわ!」
(こいつ直接脳内に・・・!)
(当たり前じゃ。そちと契約している精霊じゃからの。わし)
(いやいやいや、どなた様ですか?今まで精霊と話したことも見たことも無いですが)
(じゃが精霊と契約はしてるじゃろ?)
(ええ。我がアンソワ家では代々光の精霊と契約しますわ)
(急に貴族風に話されても……。まぁよい。知っておる。それがわしだ)
(たしかに昔話では精霊から助言を貰ったり、協力して敵を倒すという物語はあるけれど、精霊が話せるなんて……なんて素敵なのかしら!!)
「精霊さん、お名前はありますの?」
(急に念話から会話に切り替えるのやめっ)
「話そう!と思うとつい声が出てしまって」
(まあよい。今は周りに人がいないから良いが、人前では気を付けるのだぞ)
「ええ」
(名前か。遠い昔につけてもらったことがあったが、忘れてしまったな)
「そうなんですね……。では私がつけても、よろしくて?」
(だがしかし、断る)
「な、なんでですの」
(いや、ろくでもない名前にされそうな気がして、ついとっさに)
「そんなことありませんわ」
(名前より、そちは魔兎を狩らなくて良いのかの?)
はっ!すっかり忘れていた。魔兎が白い目でこっちを見ている。そ、そんな目でみないで。たしかに周りからみれば急に独り言を喋りだしたやばい人だけれど。
「そういえばさっき、戦い方がわかってないと仰ったわよね。あなたは魔兎に魔法があてられるのかしら?」
(方法は色々あるがのお。教えるの面倒だから今回は手助けしてやるかの。魔兎の目の前を眩しくするから、その間に
「わかったわ!」
(いくぞ。1…0…)
「いやそこは、3くらいからカウントしてよ。合わせにくいでしょうが」
(うるさいやつよのお。ほれ、3…2…1…)
すると兎の目の前でまばゆい光が……
「うわっ眩しい!!!」
光を直視してしまい、アースボール(土球)を打てなかった。
(そちはアホの子なのかのぉ)
「どうして私がアホの子なのよ!アホはそっちでしょう!私まで眩しくしてどうするの!」
(カウントしたタイミングで目を瞑るかとおもっての~。普通は)
「今もう目がチカチカよ」
魔兎も首をぶるぶるとふるっている。少しチカチカするけれど、
(やれやれ。せっかくわしがスキをつくってやったのに)
光の精霊と話していると、薄桃色の長い髪に黒い瞳をした豊満で綺麗な女性がきた。すごく眩しい光が見えたから様子を見に来たらしい。
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