第4話 公爵令嬢は衣服を整えたい
銀貨3枚では家を借りることもできないため、早く働かなくては。売却したお金で着替え用の服を買い、家を借りるつもりだったが、銀貨3枚では難しい。
まずは町用の服の準備だ。町用の服は1着しか持っていない。服が1着だけだと、服を洗っている間は裸で過ごさなくてはいけなくなる。そんなの絶対に無理だ。少なくとももう1着は欲しい。
とりいそぎ衣料店に向かい、買うかどうかは値段と相談することにした。
◇◇◇
目的地である魔道具屋を通りすぎて、平民用の衣料店へ入る。
服の値段は、新品が銀貨5〜10枚で古着が1〜5枚という相場だった。古着ならなんとか手が出せそうだが、正直気が進まない。見た目がよれよれのうえ、汚れもある。今まで誰かのお下がりなんて着たことがないからかすごく抵抗がある。
どうしようかと悩みながら、商品を見ていると一つの商品に目が奪われた。とても可愛いらしいシンプルなワンピースだ。水色を基調とした単色のワンピースだが、スカートが裾広がりのフレアスカートで上品な仕上がりになっている。
このようなシンプルな服はネックレスやブレスレットなどの装飾品がとても映えるのだ。貴族の部屋着として着るような服で、私の好みそのものだった。
値札を確認すると銀貨6枚だった。今の所持金では買えない。諦めてワンピースから手を放すと、店員に声をかけられた。
「お客様、こちらの商品でお悩みですか」
「はい。ただ今は持ち合わせが無くて、、、」
少し引き気味に話をすると、店員に頭の上から足先まで注視された。
「お客様は特別に後払いでもかまいませんよ」
「え!」
なぜだろうか。見られていた服や足先を見ると、靴の装飾品に宝石がついていた。
上客と思われたのだろう。
「いつまでお待ちいただけますか」
「そうですね。7日後までにお願いします。後払いの担保として、そちらの靴をお預かりしてもよろしいでしょうか。代わりの靴はこちらで用意しますので」
少し考え込む。この靴はあまり平民に見えないので、後で売却するだろう。売ったとしても銀貨10枚程度。元値は金貨1枚と銀貨50枚で、そのほとんどが小粒のダイヤの値段だ。
宝石の相場は分からないが先ほどの買い取り価格の平均相場が2%だとすると、銀貨3枚程度だ。ダイヤも小さく透明度が低いものなので、別途価格がついたとしても銀貨10枚未満である可能性が高い。
「店主相談なのですが、その代替靴とワンピース、私がはいている靴を物々交換しませんか」
「物々交換ですか。そうですね。こちらの靴を少し見させていただいてもいいでしょうか」
靴を履き替え、店主に靴を渡す。
ダイヤの状態をじっくり観察しているようだ。あまり透明感が無い安物のダイヤなので悩んでいるのだろうか。
「いいでしょう。こちらで物々交換しましょう。靴についてもこの水色のワンピースに似合う靴を差し上げます」
店主がセンスの良い白色の靴を持ってきたが、断った。今後平民として生きていくのに白では汚れが目立ってしまう。色違いの紺色の靴を選んで、ワンピースを受け取り鞄にしまう。
「ありがとうございました」
「こちらこそありがとうございます」
お礼を言って衣服店を出た。
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