第25話 まりもの物語(6)
「お母さん、お姉ちゃんもだけど、わたしも連れて行きたかったんだよね」
まりもが今度はこたつに身をかがめて言う。
「わたしのんびり屋だから、こんな競争のないところに置いといたらだめになる、とか思ってたらしくて」
のんびり屋?
まりもはのんびり屋ではない。いつもいつも、活発にはきはきと動いている。
反応に困っている
「のんびり屋っていうのは、成績がビリの劣等生、っていう意味!」
「ああ、いや……その」
さらに反応に困る。
「そんなことないよ」とはとても言えない。事実だから。
最下位ではないかも知れないけど。
……いや、最下位かも知れない。
補習の常連……。
少なくとも「最下位集団の一員」には違いない。
半日前の満鶴ならば、冷たく笑って黙殺してやったところだが。
その満鶴を見て、まりもはまたさらに無遠慮に笑った。
それから大きく伸びをする。
「このこたつで、父ちゃんとお母さんと、お姉ちゃんといっしょにこんなふうにしてたころって楽しかったなあ」
言って、まりもは満鶴に向かってひひっと笑って肩をすくめる。
「お姉ちゃんもほんとはここにずっと住んでたかったんだと思うよ。絵に描いてたのって、このあたりのいろんなものばっかりだったからね。
幸西神社は学校のちょっと
風車というのは、昔、自家発電用に使っていた風車だろうか。
このあたりの農家の何軒かにそういうのが残っている。どれも壊れているか、壊れかけていて、使っている形跡もない。
最近は自家風力発電はやめたのかというとそうでもなく、もっと軽くて小さくてきれいで効率のいい風車ができて、外から見ても目立たなくなったらしい。これは
「それに、
「だったら見てみたいなぁ」
満鶴が言う。
「見るって、何を?」
まりもが首をかしげる。かわいらしい。
そのかわいらしさは、一年生の最初と変わっていない。
「だから、お姉さんが描いた絵」
「ああ」
まりもは、思い切りよくがばっとこたつから出た。自分の机から、さっき、店に下りる前に見ていたスマートフォンを持って戻って来る。
また思い切りよくばっと布団をおなかの上あたりまでかぶった。ただ、両手はこたつから出してスマートフォンをいじっている。
「現物はみんなお姉ちゃんが自分で持ってるから、写真だけだけど」
と言って、写真のフォルダを開いた。
「ほら」
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