第18話 再びまりもの部屋で(2)
「でも、それは、手作りなのをだいじにしてらっしゃるんじゃないの?」
「手作りがうまければそれでもいいんだけどさあ」
まりもが言ったところに、
「おーい、まりもーっ! ちょっと下りて来いーっ!」
とおじさんの大声がする。
まりもは唇の両端を引いて、あきらめたように笑って
「ちょっと行ってくるわ、しようがないから」
と言った。
自分もいっしょに行ったほうがよかったかな、と思う。
でも呼ばれたのはまりもだけだし、家族だけのことだったら自分が出て行ったらよくない。
まりもがあまり長い時間戻って来なければ様子を見に行こうと思う。
部屋を見回す。
飾り気が何もない。
このまりもは鞄にマスコットをいっぱいつけている。
でも、部屋には、マスコットやぬいぐるみもなければ、ポスターも貼っていない。
それによく片づいている。満鶴の部屋でも、床に本や雑誌が積んであって、ときどきお母さんに怒られるのに、そんなこともない。
かえってなんだか寂しいな、と思っていると、どすどすと、下りていったときよりも派手な足音をさせて、まりもが戻って来た。
「満鶴ちゃんちょっと開けてーっ!」
と廊下であの元気な声を張り上げている。
扉一枚隔てただけなんだからそんな声出さなくても、と思って、満鶴はこたつを出て部屋の扉を開けた。
「いっ?」
まりもは体の幅よりもずっと大きいお盆を両手で持っていた。
照れ笑いしながら部屋に入って来る。
畳の上をどすどすどすと歩いて、自分も座りながら自分の座布団の向こう側にお盆を置く。
こたつの向こうなので、何を持って来たのか、満鶴からは見えない。
まりもは載っていたものをこたつの上に置いていく。その身の動かしかたがしなやかで、直線的に切れよく動くいつものまりもらしくない。
へえ、こんなお姉さんっぽい体の動かしかたもできるんだ、と感心する。
最初に箸置きを置かれたときには、ああ、ご飯か、と思っただけだった。
ずっとご飯を出す仕事をしていたのに、自分のご飯のことは忘れていた。
ここに入る前にはご飯をどうしようかと考えていたのに。
その満鶴の前に、ご飯が盛ってあるどんぶりがとんっと置かれる。
「……え?」
音は軽い。
でも、どんぶりは、店で使っていたのよりまだ大きく、しかも縁までぎりぎりにご飯が入っているうえに、まだ上にこんもりと盛り上がっている。
こういうのを
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