流され陰キャOL ナンパされる

 重たい鉄の扉が閉まった。

 

 

 強面の男の人達やギャルがたくさんいる……

 

 顔中ピアスだらけ……痛そう……

 

 

 空気にのまれてオドオドしていた時だった。

 

 

 

「ドリンク何にしますかぁ?」

 

 突然の声にパニックになる。

 

「あ、ハイ……えと……」

 

 モタモタとしていると後ろに列が出来ている。

 

 

「どーぞー」

 

 

 そう言って頼んでもないのにハイネケンを渡された。

 

 

 コクリと頷いてさらに奥へ進んだ。いつのまにか頼みの和美もいなくなっていた。

 

 

 隅の方で邪魔にならないように突っ立ていると金髪に紅いキャップを被った男が声をかけてきた。

 

 

「お姉さん何してる人? 会社員?? 俺とこのあと飲みにいかない?」

 

 

「は、ハイ……会社員です……いやぁー……ちょっとそういうのは……」

 

 もじもじと断ったが大音量のBGMと喧騒にかき消されて声は届かない。

 

 

「あー! エスコートしてくれってこと? OK」

 

 そう言って男は腰に手を回してきた。

 

 

「え!? その!? なんですか!?」

 

 

「いいからいいから……」

 

 男は目を細めて気持ちの悪い決め顔をしている。

 

 

「や、やめてください……ちょ!!」

 

 

 キスをしようと近付けてくる顔を両手で拒んでいると声がした。

 

 

 

「おい!」

 

 

 キャップ男が振り向くと同時に声の主は男を殴り倒した。

 

 

 

 そこには坊主頭に白いTシャツ姿の若い男が立っていた。

 

 

 

「見てわかんねぇのか!? 嫌がってんだろ!? だからモテねぇんだよ!!」

 

 倒れた男を蹴りながら坊主頭が叫ぶ。

 

 そのたびに耳につけたピアスがキラキラ光った。

 

 

 

「あ、ありがとうございます……」

 

 

 ミキは坊主頭に礼を言った。

 

 

「じゃ、今から俺とヤろう。俺直樹。よろ」

 

 

「え!?」

 

 

 直樹はミキの手を引いてトイレに向かう。

 

 

「ちょ!? ちょ!? 待ってくださいぃいい」

 

 

 ミキが抵抗していると照明が消えて音楽が静かになった。

 

 

 それを合図に観客達は指笛を吹き鳴らし、歓声をあげながら手を叩いた。

 

 

「ああぁ……タイミング悪っ。俺歌うから行くわ」

 

 

 そう言って直樹はどこかに行ってしまった。

 

 

「なんだったの…あれ」

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