第33話 村田さん

『ほじゃ、また来るねぇー!』

『いつも、ありがとねぇー。ゆっくり、気をつけて帰ってなぁー。』

『あんがとねぇーー。』


みっちゃんのお店でお買い物を済ませた村田さんが出てきた。


ボクはのんびりと坂道を歩いていた。


『あんれ、ユキちゃんもお散歩かぁ?』


ここでのボクの名前は(ユキちゃん)。

多分、体が白いからだろう。


『にゃーん。』

(お散歩だよ。今日はよく晴れているから。)


『昨日の雨は凄かったなぁー、どしゃ降りだったんでねぇの?ユキちゃんは濡れなかったかい?』


『にゃーぉ。』

(大丈夫だったよ、細田さんのお家の庭に逃げ込んだから。)


『ほぉー。そりゃー良かった。濡れて風邪でも引いたら大変だぺなぁ。』


『にゃーん。』

(ボクも風邪ひくのかなぁ。)


村田さんは、買い物袋を持つ手を変えた。


『にゃーん。』

(重そうだね、手伝ってあげられないけど。)


『ん、ユキちゃん。大丈夫さぁ、まだまだこれくらいの荷物は持てるよぉ。時々休憩しながらだけんどなぁー。ハハハ!』


『にゃぉ。』

(そうなのか。)


なぜかボクは村田さんとは会話が時々出来るんだ。



『なぁ、ユキちゃん。家でとれたさつま芋ふかしてあるんだよぉ。せっかくだから食べに来るといいさぁ。なぁ?』


『にゃぉ。』

(さつま芋!食べに行くよ。)


『それにしても買いすぎたかなぁー。なぁ?ユキちゃん。そう思うか?』


『にゃん。』

(だろうね。)


『やっぱりそう思うかぁ。自分でも思うわぁー。ハハハ!』

村田さんは笑っている。


『にゃーーん。』

(村田さんにはボクの言葉がわかるのかな。)


『どぉした、ユキちゃん。お腹空いてるんかぁ。そうかぁ、じゃあ、頑張って急いで帰ろうかねぇ。』


ボクは、村田さんの少し後ろをついて歩いて行く。


『なぁ、ユキちゃん。今夜はキノコご飯でも炊こうかねぇ。じーさんも好きだしなぁ。』


『にゃん。』

(ボクはさつま芋でしょ?)


『あぁ、そうだねぇ。味噌汁は大根にしようかねぇ。』


『にゃ。』

(ただの偶然かぁ。ま、いっかぁ。)



村田さんと会うと、いつもボクはこんな風に会話をしながら歩くんだ。

のんびりとのんびりとね。


『あぁ、話し相手がいるといいねぇ。

なぁ、ユキちゃん。いつもの景色も綺麗に見えるわ。ありがとねぇ。』


『にゃん。』

(こちらこそ。)


ボクはゆっくりと村田さんの後ろを歩いてついていくんだ。

今日はさつま芋も貰えるみたいだし、楽しみだなぁ。


『ほれ、ユキちゃん。家が見えてきたさぁ。一緒にさつま芋食べようかねぇ。』


『にゃん。』

ボクは嬉しくて、しっぽをふりんと振りながら村田さんの後ろをついていった。

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