第28話 桃田さん
お髭先生のお家の裏側に、少しお庭の広いお家がある。
そこは桃田さんのお家でミュウが暮らしている。
ミュウはそこの飼い猫だ。
桃田さんのお家の庭は、とても美しいんだ。
ゴツゴツした岩が並んで置いてあって、大きな松ノ木が生えている。
赤い小さな実がたくさんついた木もあって、手でチョンチョンとつつくと揺れて楽しいんだ。
ボクはミュウに会いたいので、お髭先生のお家に行く時も、帰る時も桃田さんのお家の庭を通るようにしている。
手水鉢って言うのが置いてあって、いつもチョロチョロとお水が流れているんだ。
ボクは喉が乾いていると、そこのお水を飲んだりもする。
ミュウはよくお庭が見える部屋で日向ぼっこをしている。
(今日はいるかなーー。)
ボクは、いつものように桃田さんのお家の庭に入っていくと、やっぱりミュウがお昼寝をしていた。
ミュウは体の毛はクリーム色で、ボクの毛よりも長いんだ。
足はボクより短くって、よちよち歩きをしているみたいで可愛いんだ。だけど、お部屋の高い所にジャンプして飛び上がってるのを見たときは、びっくりしたなぁ。
(かっこいいなぁー。)
って、ボクはお庭の外から眺めていたんだ。
ミュウは女の子なんだけどね。
気が強いから、ボクはいつも負けてしまうんだ。
『あらっ、ポコちゃん!』
ここでのボクの名前は(ポコちゃん)。
理由はわからない。桃田のおばさんが、いつからかボクの事をそう呼ぶようになっていたんだ。
『にゃん。』
(こんにちわ。)
って、窓の外に座って声をかけた。
『にゃ。』
(あら、また来たの?)
と、ミュウはちらりと横目でボクを見て、しっぽをふりんっと一度だけ振った。
『ミュウ、ポコちゃん来てるよ!』
桃田のおばさんはミュウに話かけたけれど、
肝心のミュウはボクに興味がないようだ。
『にゃん。』
(ねぇ、ミュウ。)
今日は諦めて帰ろうかなーと思っていると、桃田のおばさんがチュールを持ってきてくれたんだ。
『ほら、ミュウもおいでよ!ポコちゃんもチュール食べよう。』
って窓を少し開けてくれた。
『にゃん。』
(あ、チュール!)
『にゃん。』
(チュールだ!)
と、ボクとミュウは立ち上がる。
桃田のおばさんは、器用に僕たちにチュールを食べさせてくれた。
『にゃーん。』
(やっぱりチュールは最高だ!)
ボクは必死でペロペロと舐めて食べた。
『はい、ミュウも、ポコちゃんもおしまいっ!』
桃田のおばさんはボクとミュウの頭を撫でてくれる。
(あぁ、気持ちがいい!)
ボクは思わず目を瞑って首を伸ばした。
『気持ちいいねぇー。ポコちゃん。でも、寒いから窓はもう閉めるよ。ごめんね。』
って、ガラスの窓を閉めてしまったんだ。
(仕方ないよ、ボクはのら猫でミュウは桃田のお家のネコだから。。。)
ボクは少し寂しくなってしまった。
『にゃーん。』
(ミュウはいいなぁ。)
って、ミュウの事を見てたら窓のそばまでやってきたんだ。
『にゃん。』
(見て見てーーー!)
って、ミュウが新しいオモチャを見せてくれたんだ。
『にゃ。』
(なぁに?それ。)
おさかなの形をしているぬいぐるみのようなものを咥えてやってきた。
(クンクン、匂いはしないなぁ。)
ボクは顔を窓に近づけて匂いを嗅いでみたのだけれど、何にも匂いはしなかった。
ただ、ミュウは手で押さえてみたり、咥えてみたりして遊んでいる。
(楽しそうだなぁ。)
って、ボクは窓越しに前足を伸ばしてやってみたけど届かない。
ミュウは、鼻先でチョンっとボクの方におさかなの形のぬいぐるみのようなものを差し出してくれるんだけど。
(んにゃーーーー!!!)
と、両方の前足を必死で動かしてもダメだった。
ミュウも、ボクが前足を必死で動かしている所を同じように前足で触ろうとして、二人で頑張ったんだけど。
仕方ないので、必死で動かした前足をペロペロと舐めて、ミュウが遊んでいるのを眺めていたんだ。
桃田のおばさんは、そんなミュウとボクの事を見て、微笑みながらお茶を飲んでいた。
『にゃ。』
(ミュウ、またね。)
『にゃん。』
(うん、またね。)
ミュウがキャットタワーにぴょんっと飛び乗ったのを見て、ボクはお髭先生のお家の方に向かって歩き出した。
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