第27話 お散歩

『にゃー。』

(よく寝たぁーーーー!)

ボクはうーーんと延びをして、後ろ足を片方ずつ伸ばした。


チチチチチチチチ・・・・・


草むらからは虫の鳴き声が聞こえてくる。


ん?どこだ?

生えている草はボクより、少し背が低いから、首を少し伸ばせば遠くも見える。


クンクンとすれば匂いもかげるんだ。

あんまり背が高い草むらに入ってしまうと、迷子になってしまうし。


何より葉っぱが顔に当たってモショモショするから、ボクはあまり好きではない。


広場に集まるのら猫仲間には、背が高い草むらのほうが好きって奴もいるのだけれど。

いつも何やら体にくっつけたまんま歩いている。

『にゃーん。』

(背中に何かついてるよ、痒くないの?)

とボクが聞くと、

『にゃーん。』

(ボクは毛が長いから、気にならないんだ)

って、しっぽをピーンと立てて去っていった。


お尻にはトゲトゲしたまぁるいものがいくつかついたままだけど。



『にゃ。』

(か、か、かっこいい!!!)

ボクの毛はそんなに長くないし、ボクは何かついてるのはあまり好きではないから。


それに、ボクのしっぽはくねっと曲がっているから、あんな風にしっぽをピーンと立てて歩いた事がなかった。



ボクはしばらく自分の体を見つめていた。

首を後ろに回して、自分のしっぽを見つめる。

(やっぱりくねっと曲がってる。。。)


首を後ろに回してもしっぽが見えない方がある。

(羨ましいなぁ。)


とりあえず、真似をして歩いて見よう!

ボクは島の巡回をしながら、しっぽを立てて歩いてみる。


どんな風になっているんだろう。

みっちゃんのお店の前を通りかかった。


すると、お店の扉にのら猫が見えた。

(こっちを見ているぞ。)

ボクはそっと近づいてみると、あっちからものら猫がそっと近づいてくる。


『にゃ。』

(何か見たことあるようなきもするが。)

一歩踏み出して、止まってみた。

すると、あっちののら猫も同じように一歩踏み出して止まった。


『にゃ。』

『にゃ。』

(!!えっ!!)

(全く同じタイミングであっちののら猫も鳴いたぞ。。。)


ボクは少しだけ怖くなって、その場に座って様子を見る事にする。

やっぱりあっちののら猫も同じ事をして、座ってこっちを見ている。


『にゃーぉ。』

(な、なんだよぉ。)


ボクはどうしていいかわからなくて困っていると、お店の扉をカラカラカラーーっと開けて、みっちゃんがボクを呼んだんだ。



『カギちゃん、あんたぁ、さっきから何しとんのぉ?映ってる自分の姿ばっかり見てぇ。どしたぁー?』


『にゃーぉ。』

(え、これ、ボクなの?びっくりしたぁー。)


ボクは座って、耳の後ろを掻いた。

(全く同じ事するから、ちょっと怖かったよ。あー、良かった。)


そんな事を思っているのがわかったのかなぁ。

みっちゃんはボクの事を見て笑っている。


『アハハ!自分の姿にびっくりしたかぁ。まぁ、鏡見たりしねぇからなぁ。アハハ!』


『にゃ。』

(ん?鏡ってなんだ?)


『ほれ、カギちゃん、煮干し食べるかぁ?』

みっちゃんは、お店の奥の部屋に行って煮干しをいくつか手に持ってきてくれた。


『にゃーん。』

(いただきます。)

ボクはむしゃむしゃと煮干しを食べた。


そして、みっちゃんはボクの頭や背中を撫でてくれたんだ。

(はぁー、今日は暇だなぁ。船が来る前の日はホントに暇だわぁ。)

みっちゃんの心の声が聞こえてきた。


『にゃーぉ。』

(大丈夫だよ、明日は船が来る日だから。)

ボクはしばらくみっちゃんに撫でてもらいながら、喉をゴロゴロと鳴らして目を細めていた。


『さて、そろそろ米研いどくかなぁ!よっこらしょっと!』

って、みっちゃんは立ち上がった。

『ほぃじゃあね、カギちゃん!』

と部屋の奥に入っていった。



『にゃ。』

(またねー!)

と、ボクは一回振り返って歩きだした。


そして、映ってるボクを見た。

(へぇー、これがボクの顔かぁ。。。)

扉に映ってるボクのしっぽはやっぱりくねっと曲がっていた。


(ま、幸せのカギしっぽだから。)

ボクはしっぽを振り振りとして、お散歩の続きに出かけたんだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る