第22話 こばやん

『あーー、またのら吉が入ってきたがぁーーーー。』


ここでのボクの名前は(のら吉)。

ここにやって来たのら猫達はみんなそう呼ばれている。


『ばぁーちゃん!まーた、窓開けっ放しにしてからぁーーーー!』

とこばやんは少し不機嫌そうに言った。


大きな声にボクはびっくりして、こばやんを見つけて固まってしまった。

『にゃぁー』

(見つかった。。。。。)


『なぁにぃ、のら吉なんか可愛いもんさぁ。いいでねぇかぁ、なぁー?』

とばぁーちゃんは煮干しを手に握って持ってきてくれる。


『にゃぁ。』

(それ、ちょーだい!)

ボクはゆっくりとばぁーちゃんの方に近づいていくんだ。

『ほれ、おたべ!よーく噛むんだど。』

と、真ん中でちぎって少しずつ食べさせてくれるんだ。


『ぁぅ。』

(美味しい!)

こばやんのばぁーちゃんがくれる煮干しは、とても美味しいんだ。

島で貰える煮干しも美味しいんだけど。

こばやんの親戚の人が送ってくれる、ちょっと美味しい煮干しなんだって!

『味噌汁も鍋も、これ使うと上手いんだべ』

と、こばやんの家では自慢の煮干しなんだ。



『もー、ばぁーちゃん!のら吉が可愛いのはわかってるさぁ。けど、ふぇ、ふぇふぇっくしょん!!!』

こばやんは大きなくしゃみをした。


びっくりして、ボクは最後の煮干しを口に咥えたまま隣の部屋へ逃げた。


『ふぇっくしょん!んもー、だから言ってるべぇー。』

『あーら、またくしゃみかぁ。可哀想になぁー』

と、ばぁーちゃんは笑いながらティッシュを箱ごと、こばやんに渡した。


こばやんは、(猫アレルギー)なんだって。

よくみんなとおしゃべりしている。

『のら吉達は可愛いんだけんど、アレルギーでくしゃみが止まらねぇんだ。』

って、この前漁師の石田さんと話をしていた。

でも、こばやんのばぁーちゃんはいつも窓や玄関の扉を開けたまんまにしちゃうから、ボク達は自由に入れちゃうんだ。


こばやんも、猫アレルギーだけどボク達の事を嫌いではないから、無理やり外に追い出したりもしないんだ。

本当は優しいんだ。

ボク達は知ってるから、時々こーやってこばやんのお家にお邪魔するんだ。


『ふぇっくしょん!!!』

ボクは隣の部屋から、こばやんをジーッと見ていた。

こばやんはくしゃみが酷すぎて、ティッシュを鼻の穴に詰めた。


『ばぁーちゃん!扉や窓は締めてくれよぉー。もー、ズルズルだがぁ。』

と、こばやんは鼻にティッシュを詰めたまんま話をしている。

ばぁーちゃんは、そんなこばやんを見て笑っている。


『アハハハハハ!写真ば撮ろか?』

『いらんわぁー。』

『アハハハハハ!イケメンが台無しだぁ。』

と笑っている。


こばやんは、ティッシュを詰めたせいで鼻の穴が大きくなっていて、面白い顔だ。


『ふぇ、ふぇ、ふぇくしょん!!!』

と、大きなくしゃみが出て、鼻に詰めたティッシュがポーンと両方の鼻の穴から飛び出した。

『アハハハハハ!!!』

ばぁーちゃんは大笑いをした。


ボクはびっくりして、壁の方に飛び上がったんだ!

(あー、びっくりしたーーー!)

と、ボクはそのままカーテンに爪を引っかけて登って遊んだ。


『ほらぁー、のら吉がー、カーテンで遊び始めたどぉー』

と、こばやんは新しいティッシュを鼻の穴に詰めなおした。

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