第20話 雨の日
ボクは雨の日があんまり好きではない。
地面はぴちゃぴちゃと濡れているし、上から水玉も降ってきて背中や頭が濡れてしまうから。
何度もブルブルって体を震わせて水玉を飛ばすのだけど。
いつもの広場にも、他ののら猫達もいないし。
なんだかお空はどんよりと暗いし。
だから、ボクは雨が降る日は大きな屋根があるところに行くんだ。
急に雨が降って来たら、仕方なく車やトラックの下に入るんだけど。
この島には、車やトラックはそんなにないんだ。
この前は消防署に走って行ったんだ。
『雨だもんなぁー、ろくちゃん!』
消防署の佐藤さんだった。
ここでのボクの名前は(ろくちゃん)。
しっぽがクリンと曲がってて数字みたいだからだってさ。
『にゃーぉ。』
(雨はつまらないよ。)
『ろくちゃん、おいでー。今ならちょっとだけ遊べるぞ!』
って、カリカリをいくつか手に乗せてくれたんだ。
『にゃぁ。』
(いただきます。)
とカリカリを食べた。
すると、佐藤さんは頭に被っていた紺色の帽子を脱いでボクの顔の前に持ってきた。
(クンクン)と、顔を少し上にあげて匂いを嗅いでいたら、ピュッって反対側に動かすんだ。
ボクはいつものように(ビクッ)ってなるんだけど。
どうしてもその帽子が気になって、また匂いを嗅ぐために顔を近くに持って行くんだ。
『アハハ!気になるかい?』
佐藤さんは嬉しそうに帽子をいろんなところに動かすんだ。
『にゃん!』
(んもー、意地悪だなぁー!えいっ!)
って、ボクは追いかけてしまうんだ。
何でかいつも、動くものを追いかけてしまうんだよなぁ。
『ほれっ!ほれっ!』
とボクは佐藤さんに操られて遊んだ。
(ピーピーピー)
けたたましく建物に音が響き渡った!
『ろくちゃん、仕事だわ!またな。ここは危ないから、あっちさ逃げるんだよ!』
って、佐藤さんはさっきまで遊んでいた帽子を被って走って行った。
帽子に付いたワッペンは島のみんなを守る正義の味方の印なんだよって、前に佐藤さんが言ってたな。
とってもカッコいいんだ。
(島ではたまにしかないお仕事の日だね。)
ボクは邪魔にならないように、走って雨に濡れない場所へ移動した。
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