第18話 石田さん
石田さんは島の漁師さんだ。
漁港から少し登った坂の途中にお家があるんだ。
石田さんのお父さんもおじいさんも漁師さんだったんだって。
『おー、しろちゃん!今日はいい天気だなぁーー。日向ぼっこかぁ?』
ここでのボクの名前は(しろちゃん!)。
石田さんの奥さんが付けてくれた名前だ。
石田さんのお家のお庭にはお花がたくさん咲いているんだ。
奥さんがいつもスコップを持って、嬉しそうに穴を掘って埋めているんだ。
『おー、しろちゃん、こっちおいで!魚焼いたから、おめぇも食べるか?』
石田さんにそう言われて、立ち止まって匂いを嗅いでみたんだ。
(クンクン、クンクン)
鼻がヒクヒクするよー。
『にゃぁー。』
(いい匂い!食べる食べる!)
『よっしゃ、ちと待ってろよー』
と、石田さんはお箸で魚をほぐしてくれた。
石田さんはお酒を飲んで、
『ガハハハハ!』
と笑うんだけど。
ゴツゴツとした大きな手に、少し短めのお箸で小さな骨を取ってくれるんだ。
『ほれっ、しろちゃん。骨は取ったけど、残ってっかもしれねぇから気を付けて食べろーー』
と、お魚をお団子が入ってたプラスチックのふたに乗せてボクの目の前に置いてくれる。
『にゃ。』
(いただきます)
ボクはペロペロとお魚を食べた。
『んにゃ。』
(おーいしい!取れたてだ!)
『おーー、うまいかぁ!そうだろうよ!
今日はたくさん魚が捕れたから、近所にも持ってったんだよ。もっと食べるか?しろちゃん。』
石田さんは、お酒をのんで頬っぺと鼻が赤くなっている。
『にゃ。』
(いただきますよー!)
ペロペロペロペロ。んぁー、美味しい。
『ただいまー!あら、また父ちゃん、そんなにお酒呑んで!』
『んぁー?ちーっと呑んだだけだべ?』
と、石田さんは誤魔化しているけれど。
(やっぱりね、そんなに赤くなってるからバレちゃうよ!)
ボクはお魚を食べ終わって毛繕いを始めた。
『何がちーっとよ!ちーっと呑んだだけで、そんなに顔は赤くはならんでしょぉ?』
奥さんは、テーブルに残っているお魚やおかずを食べながら文句を言っている。
『ねー、しろちゃん!そうだでなぁー?』
『にゃ。』
ボクはどっちとも取れるように軽く返事をしておいた。
(だって、ホントは仲良しでしょ!)
ボクは物干しのそばの良く日があたる場所に移動して、毛繕いの続きをしていた。
『よいしょ!』
奥さんが買い物をしてきた袋を持って庭に出てきた。
『しろちゃん、見えるかい?可愛い花だろー?ペチュニアっていう名前なんだよ!』
とボクの顔に近づけて見せてくれるのだけど。
『ぶしゅ。』
ボクの鼻はムズムズしてくしゃみが出てしまった。
『イヒヒヒヒ!ごめん、ごめん。』
と笑っている。
『なぁんだ、お前、そんなにしろちゃんに近づけたら匂いでビックリしちゃうだろうよぉ!アハハハハ!』
石田さんも笑っているじゃないか。。。
ボクはブルブルブルって、全身を揺らした。
(あー、お花の匂いは嫌いじゃないんだけど、あまり近くで嗅ぐと鼻がムズムズするんだよ。)
ボクは少し迷惑そうな顔をして見せてやったんたけど。
石田さんも奥さんも、楽しそうに笑っているし。
しばらく離れて見ていようと、ボクは別の日があたる場所に移動した。
奥さんはスコップで穴を掘って、そこに新しく買ってきた(ペチュニア)の花を植えた。
『可愛いい花だべぇー?』
奥さんは石田さんに話しかけていたんだろうけど。
奥さんが振り向くと、
石田さんは大の字になって眠っていた。
『んもー、呑むとこーなるんだから!』
って、文句を言いながら奥さんは石田さんに
柔らかそうな大きな布をかけてあげていたんだ。
ボクはそのまま、石田さんのイビキを聞きながら、丸くなってそこで眠ったんだ。
ポカポカして気持ち良かったよ。
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