第16話 犬のジュリちゃん

鈴木さんのお家には犬がいるんだ。

ジュリちゃんって名前なんだって。

ヨークシャーテリアって言う、種類の犬なんだよって、鈴木さんが教えてくれたんだ。


とっても体が小さくて、髪の毛は長くて毛先がぴょんって跳ねていて可愛いんだ。


初めてジュリちゃんに会ったのは、鈴木さんのお家の庭を通りすぎた時だったかな。


『ジュリ!こっち向いてー』

って、鈴木さんは一生懸命携帯で写真を撮ろうとしていたんだけど。


ボクの事を見つけてジュリちゃんは遊びたそうにこっちをみていたんだ。

でもボクも初めての犬とどうやって遊んでいいのかよくわからなくて困っちゃったよ。


コロは、(バウッ)って挨拶してくれるから時々おしゃべりするのだけれど。


ジュリちゃんは黙ってボクの事を不思議そうに見つめていたんだ。

少し離れていたから、ボクは勇気を出して挨拶をしてみたんだ。

驚かさないように、小さな声で。

『にゃ。』

(こんにちわ)

恥ずかしくなって、ポリポリと首の後ろを掻いてごまかしたんだけど。


『くぅーん』

(だぁれ?私は犬だけど、見た目が違うね。)

ジュリちゃんは不思議そうに首をかしげてボクの事を見ている。


『にゃ。』

(ボクはネコなんだよ。ボクは毎日自由にうろうろしてるから、宜しくね!)

『くぅーん。』

(一緒に遊べないの?)


(えっ?)

ボクは鈴木さんとジュリちゃんの顔を交互に

見つめた。


『ジュリちゃん、プッチの事が気になるのかな?』

鈴木さんはジュリちゃんに話しかけている。


ここでのボクの名前は(プッチ)。

ご存知のとおり、お尻の模様から付けられたようだ。


ボクは一歩だけジュリちゃんに近づいて、首を伸ばして匂いを嗅いでみたんだ。

ジュリちゃんは、お風呂に入ったばかりだろうか。高級な石鹸の香りがする。


すると、ジュリちゃんも少しだけボクに近づいて座った。

『あら、お友達になりたいのかな。』

鈴木さんはジュリちゃんとボクの顔を交互に見ている。


『にゃ。』

(大丈夫だよ。ボクはびっくりしなければ、爪を立てたりしないから。)

ボクは今度は三歩ほど近づいて、お行儀よく座ったんだ。


『あら、プッチもジュリちゃんとお友達になりたいってよ!ほら、ジュリちゃん!』


(鈴木さんはすごいな。ボクの気持ちが見えるの?)

ボクはジュリちゃんを驚かせないように、そのまま座って見ていた。


鈴木さんはジュリちゃんを抱いて、

『ちょっと待ってね!』

とボクに声をかけて奥の部屋へ行った。

そして、手に柔らかくしたさつま芋を持って来てくれた。


『ほら、プッチもおいで!ジュリちゃんとおやつ食べようね!』

って、ボクの事を呼んでくれたんだ。


ジュリちゃんは可愛いピンク色のお皿にさつま芋を乗せて貰って、

『よしっ!』

と鈴木さんに許可を貰ってからさつま芋を少しずつ食べ始めた。


(あー、おいしいそう。。。)

『ほら、プッチ!おいで!』

ボクはジュリちゃんを驚かせないように、首をすぼめて、なるべく低くなって鈴木さんのそばに行ったんだ。

鈴木さんは、少しずつ手のひらにさつま芋を乗せてボクにくれたんだ。

(ペロペロペロペロ)

さつま芋は甘くて柔らかくて美味しい。



『にゃーん。』

(誰かと一緒に食べると美味しいね)


『くぅーん』

(また、時々一緒におやつ食べようね!)

ジュリちゃんはボクに言ってくれたんだ。

嬉しかったなぁ。


時々、鈴木さんのお庭を巡回してジュリちゃんともお話したり、近くでお昼寝をしたりもするんだ。


ただ、ジュリちゃんは寝ていると、時々夢を見て(キャン!)って声をあげて寝転がったまんま足をバタバタさせるんだ。


ボクはびっくりしちゃって、何度も起こされたゃったよ。


くっついて寝る事はないけれど、風が吹くとジュリちゃんの高級な石鹸の匂いがボクの所に届く距離でのんびりとさせて貰うこともあったな。

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