第13話 莉乃ちゃん

島の子供は少ない。

昔はもう少したくさんいたらしいけど。

だから、小学校と中学校は同じ敷地にある。

ただ、正門は別々になっている。


梨乃ちゃんは小学校6年生だ。

年下の子供の面倒を良くみてくれて、頼れるお姉ちゃんだ。


ボク達のら猫は、時々学校のグランドなども巡回する。

グランドには大きな桜の木がたくさんあって、春にはたくさん花が咲いてとても綺麗なんだ。

島のあちこちに桜の木はあるけれど、こんなにたくさん並んでいる場所は他にはない。


夏は木陰がたくさんできるので休憩もできるしね。

秋には枯れ葉がカラカラと飛んで行くのを追いかけて遊ぶんだ。


放課後は、梨乃ちゃん達はいつもグランドで遊んでいる。

水呑場の近くにランドセルをみんなで置いて、ドッジボールをしたり、缶けりなんかもしている。


時々大きなボールが飛んでくるから、梨乃ちゃん達の声がするとボクはグランドの隅のほうに逃げるんだけど。


たまに細長い葉っぱを持ってきて遊んでくれるんだ。

『メメちゃんだぁーーーー!』

今日も元気な梨乃ちゃんの声が聞こえた。


ボクのここでの名前は(メメちゃん)。

目の色が左と右で違うから、最初は(オメメちゃん)だったのだけど、だんだんメメちゃんに変わってしまった。


『メメちゃん!ほら、葉っぱ、見てー!』

(見ているよ、梨乃ちゃん。)

『にゃ』

ボクは今、ちょっと眠いから動きたくないんだけど?

お腹もペッタリと地面に付けてくつろいでいた。

『ほらぁー、見て!メメちゃん、この草の先の方がね、猫じゃらしみたいでしょ?』

確かに、毛虫のようなものが先についている。その辺にたくさん生えている草だ。


ボクはよく島の巡回をしていると、そいつと出くわすんだ。

爪の先でちょいちょいとつついてみたり。

風に吹かれてゆらゆらしてると目で追いかけちゃうし。


『メメちゃん、ほれほれ!』

梨乃ちゃんはボクの顔の前でその葉っぱをゆらゆらと、動かして見せる。

(だからー、今は眠いんだけど。)

少し顔を上げて、それを避けてみる。


『にゃははは!』

だめだ、梨乃ちゃんは楽しくなってしまってる。

とうとうボクの鼻をその毛虫のような葉っぱでツンツンとし始めた。


(ぶしゅっ)

もー、鼻がムズムズしてくしゃみが出てしまうじゃないかー。

『にゃははははは!』

梨乃ちゃんがとーっても楽しそうなのでちょっとだけ、我慢してあげるね。


でも、くしゃみが出るのはイヤだから、ボクは毛虫のような葉っぱが鼻に当たらないように避ける。

そして、一応迷惑そうな顔をして梨乃ちゃんを見つめていた。


(嫌なのかな。。。)

梨乃ちゃんは葉っぱをポイッと捨てて、ボクの頭をゆっくりと撫で始めた。

『にゃー』

(それのほうが好き)

梨乃ちゃんの手はまだ子供だから小さくて柔らかい。

そのまましばらく梨乃ちゃんはボクの事を撫でてくれた。

ボクも梨乃ちゃんに撫でてもらいながら、のんびりと日向ぼっこをした。

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