第12話 吉田のばーちゃん 2
吉田のばーちゃんは、よくみっちゃんの所にお買い物に行っている。
買い物に行っているのか、おしゃべりに行っているのか。。。それは、吉田のばーちゃんにもわかっていないかもしれないなぁ。
『あんれ、ネコネコでねぇの!』
みっちゃんのお店の前を通っていると、吉田のばーちゃんに出会った。
『ぁぉん。。。』
くるっと曲がったしっぽを軽くフリながら挨拶をする。
『ネコネコ、おめぇも何か買い物かぁ。』
吉田のばーちゃん、ボクはお金という物を持っていない。
(猫に小判っていうだろ?)
『ネコネコ、みっちゃんとこさ、入るべ』
と、ボクの事を手招きしている。
『にぁ。』
(何かわからないけど、暇だからつきあうよ)
吉田のばーちゃんの後をついていく。
『みっちゃーん、ネコネコ連れてきたど。』
『はーい、ぁんれ、吉田のばーちゃん、また来たの?今度は何買いに来た?』
とみっちゃんは尋ねている。
吉田のばーちゃん、まだお昼なのに、2回目のお買い物なの?
ボクはお店の入り口にちょこんと座った。
『ネコネコ連れてきたど。ほれぇ、そこでばったり会ってなぁ。』
吉田のばーちゃん、確かにそうだけど。
みっちゃん、困っているんじゃない?
『ばーちゃんも散歩のついでかぁ?』
と、みっちゃんは聞いてみる。
『ぅんにゃー、買い物に来た。』
と、吉田のばーちゃんは買い物袋を顔の前まで持ち上げて見せた。
『ほぉ、ほんで、何がいる?』
(また、始まるぞー!あれとか。。。)
ボクは楽しくなって前足を伸ばしてその場に伏せた。
しばらく見ていよう。
『あのー、あれだよ。』
(ほらきた!)
『どーれぇー?朝は歯みがき粉買って帰ったでしょ?』
『あ、そーそー!歯みがき粉買った買った。ほんでな、磨くやつ忘れてたんやぁ。』
吉田のばーちゃんは1度に覚えられないみたいだな。。。
『磨くやつぅ?あ、歯ブラシの事か!』
みっちゃんが、ひらめいたようだ。
『歯ブラシ?て、なんやぁ?』
吉田のばーちゃんはピンときていない。
みっちゃんは笑った。
『アハハハハハ!歯ブラシはぁ、歯みがき粉付けて磨くやつぅ。こないして!』
と、歯を磨くような真似をして見せた。
『アハハハハハ!歯ブラシな。歯を磨くやつなぁ。でもな、それと違うやつ買いに来たんだど。』
(違うのか。。。。。)
ボクはミミの後ろを前の足で何回か撫でた。
みっちゃん、今日も大変だな。。。
『磨くやつぅ?歯磨きじゃなくて、どこ磨くやつ?』
『あのー、こーして磨くでしょぉ?』
吉田のばーちゃんは一生懸命に手を動かしている。
『どこぉ?』
『あのー、ほれ、四角いやつ!あれで磨くでしょぉ?』
吉田のばーちゃんは、店の中に置いてある丸い椅子に腰かけた。
みっちゃんは、必死でお店にある磨く物を見せてみる。
『これかぃ?お風呂洗うやつ!』
『んにゃ、お風呂じゃなくて、台所だ。』
『台所かい?台所の流しを洗うやつかい?』
みっちゃんは、必死だ。
『あれさぁ、流しを洗ったから。新しい磨くやつぅを買いに来た!』
『あー、もしかしてスポンジの事かい?流しを洗ったから新しいのがいるんかなぁ?』
と、みっちゃんはスポンジがいくつか入ったセットを吉田のばーちゃんに見せた。
『あー、それそれ!磨くやつ!あと、かつおぶしあるかい?ネコネコ食べれるやつ。』
吉田のばーちゃんは満足そうだ。
『ほんじゃぁ、スポンジとかつおぶしだね。わかって良かったわぁ!』
とみっちゃんも嬉しそうだ。
『みっちゃんがいねぇと、私は買い物できんなぁ。。。』
吉田のばーちゃんは、しみじみと言った。
『アハハハハハ!ほんとだなぁー。付き合いが長いからぁなぁ。』
みっちゃんは吉田のばーちゃんのスポンジとかつおぶしを買い物袋に入れてあげながら話を続けている。
『みっちゃん、かつおぶしは今、開けて!ネコネコにあげっから!』
『あぁ、そうかい?ほじゃ、これ、はい!』
と、みっちゃんはかつおぶしの袋を開けて、中身を吉田のばーちゃんの手のひらに乗せる。
すると、吉田のばーちゃんは反対の手でかつおぶしをパクっと自分の口に入れた。
『アハハハハハ!ばーちゃん、それカギちゃんにあげるんでねぇの?』
とみっちゃんは笑った。
そうだよー、ボクにくれる為に出してもらったとおもったのに。。。。。
『にゃぁー』
ボクは吉田のばーちゃんが座っている椅子のそばに歩いていった。
『あぁ、そっかぁ!自分でたべてしもうたわぁ!アハハハハハ!ネコネコ、どーぞ』
と吉田のばーちゃんはボクの顔の前にかつをぶしを差し出してくれた。
ボクはひとつずつ、それをゆっくり食べたんだ。かつおぶしは嫌いじゃないけど。
すぐに風で飛んじゃうし、噛み応えがあまりないんだよなぁ。。。
ボクがかつおぶしを楽しんでいる間も、みっちゃんと吉田のばーちゃんの会話は続いている。
(あれ)とか、(何だったっけか?)とふたりの笑い声はずっと続いていた。
ボクはかつおぶしを食べ終えたけど、ふたりの会話が続いていたので、コロリンと横になった。
シッポを時々フリフリしながら、同じ話を何度も聞いていた。
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