第10話 ヘルパーの美幸さん
吉田のばぁーちゃんの娘さんの名前は美幸さん。美幸さんは、島でヘルパーさんとして働いている。
お家のお掃除をお手伝いしたり、病気で寝たきりになった島の人達のお世話をしているんだって。
ここでのボクの名前は(チョロ)。
いつもチョロチョロと通りすぎていくからだって。
『にゃ』
一応、挨拶をしておく。
『あら、チョロちゃんだっけ?』
美幸さんは今日はお休みのようだ。
お仕事の時は赤いチェックのエプロンをしているんだけど、今日はエプロンをしていない。
ボクはその場にちょこんと座った。
(。。何かくれるのか、遊んでくれるのか。)
美幸さんは、乗っていた赤色の自転車からよいしょっと、降りた。
カシャンと音を立てて、自転車を立てた。
ボクはびくっとなって、肩をすぼめる。
『あら、ゴメンゴメン!びっくりしちゃったかぁ。』
美幸さんは、しゃがんでボクの事を見つめた。
美幸さんの髪の毛は短くて、クリンと毛先が曲がっている。
まるでボクのしっぽのようだ。
でも、裕子さんの所でしてもらった訳ではなくて、生まれつきらしい。天然パーマだってさ。
美幸さんはいっつも元気に、赤色の自転車で島を走り回ってお仕事をしているんだ。
通りすがりの人ともお友達が多くて、大きな声で笑っている。
ボクは美幸さんの事が楽しくて好きなんだ。
『チョロ、おいで!』
美幸さんに呼ばれたので、そーっと頭を下げてゆっくりと近づいていった。
ボクの体をそーっと撫でてくれる。
(んーーー、気持ちいいなぁ。。。)
『チョロ、しっかりご飯食べてる?あ、食べてるかぁー、いろんなお家で貰ってるべ。』
ニコニコと嬉しそうにボクの頭をクリクリと指でなぞって遊んでいる。
(それー、何だよー。そんな頭の撫でかたする人他にはいないよぉ。)
ボクはちょっと困っているんだけど。
クリクリ、クリクリ。。。。。
『アハハハハハ!チョロ、可愛いなぁ。』
(それはどうも。)
『にゃう』
ブルブルブルブルっと、体を震わせた。
美幸さんは、ヘルパーさんだから島の年寄りの人のお世話をしてるんだけど。
そろそろ、自分の家のばぁーちゃんも物忘れがひどくなってきたから心配なんだって。
(島には若い人が少ないし、子供も少ないしなぁー。あたしと父ちゃんで頑張って子供増やすってのも、あれだしなぁ。。。。)
と美幸さんは何やら心の中でブツブツ言いながらニヤリと笑っている。
(あれだしなぁ?何の事だかわかんないや)
ボクはカリカリでも食べに広場にでも行ってくるよ。
『にゃん』
ボクはゆっくりと立ち上がって、まわりをキョロキョロ見渡した。
『あれぇ、チョロ。お散歩の続きかぁ?』
よいしょっと、と美幸さんはまた立ち上がり、赤色の自転車に乗ってどこかへ向かって行った。
(るるるるるるーーー)
美幸さんの鼻歌が、少しずつ遠ざかっていった。
美幸さんのお蔭で、島のお年寄り達は元気に過ごせているんだろうな。
こんなボクにもそれはわかるよ。
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