第8話 配達のおっちゃん

島にはお店が少ない。だからどうしても欲しくても手に入らない物は、注文して配達して貰うらしい。


船で島に届いた荷物は少し坂を上った事務所に運ばれるんだ。

昔より便利になったから、皆パソコンや携帯電話から注文ができるんだってさ。

だから、ここにもたくさん荷物が運ばれてくる。


そして、そこで荷物の確認をしてそれぞれのお家に運ばれる。

たくさん荷物が届くのを配達のおっちゃん達が手分けして島の人の家に届けてくれるんだ。


ボクは大きな音や大きなものがちょっと怖いから、荷物がたっくさんある時はあまり巡回にいかないようにしている。

みっちゃんの所と同じだ。


少し荷物が減ってくると、配達のおっちゃん達はボクの事を撫でてくれたり、遊んでくれたりするんだ。

その配達のおっちゃん中でも杉田さんは時々ボクにおやつをくれるんだ。



『おっ、点ちゃん!』

ここでのボクの名前は(点ちゃん)。

お尻に黒い点があるからだってさ。

配達の杉田さんは、しゃがんでボクの事を呼んでくれるんだ。

そしていつもの様に背中や頭を撫でてくれる。ボクはとても気持ち良くなって、ゴロゴロと喉を鳴らしてしまうんだ。


杉田さんは、ひとしきりボクの事を撫でると、ポケットから小さな袋を出してカリカリボクにくれる。

いつ、ボク達のような猫に出会ってもいいように、ポケットにおやつを入れてるらしい。


『点ちゃん、可愛いいなぁ。もっと遊んでいたいがなぁー。島の人達が荷物を楽しみにまってっから、忙しいんだわぁ。』

と名残惜しそうにボクの事を撫でている。

(腰が痛ぇけど、がんばらねとな。。。)


気を付けて頑張ってね。

『にゃぁ』ほボクはその場をゆっくりと離れた。

ブルブルブルブル、。。と体を揺らす。

お仕事の邪魔になっちゃうから、ボクは巡回の続きを始めるよ。

ボクは配達のおっちゃん達がいる事務所を通り抜けて、次の巡回へ向かった。


島には大きな道もあって車も時々通るのだけれど。

ボクはその大きな道はあまり好きではない。


夏は熱いし、冬は冷たいし。

ボクの足の肉球では、歩くのに不便だから。

土や草むらを走るほうが楽しいんだ。


時々草むらに入るとピョンピョン跳び跳ねる緑色の虫がいて、一生懸命捕まえようとして足で押さえてみたりするんだけど。

すぐに見失ってしまうんだ。


草むらに生えてる草はボクの背丈ほどに伸びてたりして、たまに鼻がムズムズとする。


それでもやっぱり気持ちが良くて、ボクは草むらに入っていくのが大好きだ。

ボクが歩くとカサカサと音がする。

誰にも邪魔されない場所を探して、ボクはそこに寝転んだ。





  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る