第5話 のら猫達の集い

『にゃ~』

冬にしては少し暖かい日の午後だ。

何処からともなく島の猫達が集まってくる。

別にこの日が集いの日だと決められてはいないのだけれど。

山本のじーちゃんの家の横の細い道を登っていくと、この空き地がある。

ピューっと走ってやってくる猫もいれば、のんびりとテクテク歩いてやってくる猫もいる。

ボクは寄り道をしながら、空き地に向かった。

不定期に行われている、島の猫達の集いだ。


真ん中にデーンと寝ころがっている大きな黒いのら猫。この大きな黒いのら猫がこの島の中でいちばん長生きをしているそうだ。

のら猫仲間では(師匠)と呼ばれている。

何かあれば師匠に相談するのがのら猫達の決まりだ。


年齢はもう忘れちまったらしい。

(。。だろうな。だってボクも自分が何歳か知らないんだから。)

他にも茶色い猫や茶色と白が混じったような色をした猫達、色々な毛色の猫がたくさんこの島では暮らしている。



今日は珍しく、外に出かける事ができる飼い猫の"ミュウ"もやってきた。

(久しぶりだな、ミュウ!)

(今日は何だか外に出たい気分だったから。)

『にゃん。』

ミュウは素っ気なく答えた。

ボクはミュウに会うと何だか嬉しかった。

嬉しくなる理由はボクにはわからない。

ただ、ミュウに出逢った時にほかの猫達とは違う感覚を知った。

何ていうか、心がくすぐったい感じかな。



ここにはボクと同じように名前をたくさん持っている猫達がいっぱいだ。

『にゃーーーん。』

そして、それぞれが自由に好きな事をして、しばらくのんびりと過ごすだけ。


『あれぇ、今日は暖かいからなぁ、みんなで何話してんだか。。。』

目を細めて黒田さんがみんなを見て笑顔で通りすぎていった。

『にゃ。にゃーーーん。』

『にゃ~~』

『にゃぁぉん!』

(この前、漁師が焼いてくれた魚が熱くてヤケドした話だとか、瑠璃さんの家の庭にいい匂いがするお花が咲いているだとか。)

そんなたわいもない話をしているだけだよ。



そして、お腹が空いてるのら猫は、この空き地の隅においてあるカリカリを食べている。

(にゃんとも平和な集いだ。)

『にゃ。』

それぞれののら猫達はここで好きなように過ごして、飽きたら好きな場所を探して帰っていく。


ボクはカリカリをいくつか食べて、伸びをした。今日は暖かくて気持ちがいいので、ここでしばらく昼寝でもするか。

寝ころがって、自慢のカギしっぽをふりふりしながらうたた寝をしていた。



少しずつ太陽は沈んでいき、オレンジ色の空に変わっていった。

太陽が沈むと少しずつ寒くなってきた。

ブルブルブルブル。。。

体を震わせた。

『にゃーん。』

(今日も何もなさそうだな。。。)

今日はどこで寝ようかな、とボクは考えながら歩き出した。

『にゃ。』

(じゃあ、また気が向いたらねー!)

ボクはそう言って、他ののら猫達よりも少し早く、空き地を出て歩き出した。


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