第3話 山本のじーちゃん
朝早くに、漁師のおじさんからお魚を少し貰って、一応満足したボクはのんびりと巡回を続ける事にした。
小さな島といっても、ボクはネコだから、そんなに早くは歩けないし。
どこから出発して、どこまで行くなんて決まっていない。
自由気ままに、気の向くままに巡回を始めるのだ。
今日は、気分的に山本のじーちゃんところにも回ってみることにした。
市場の裏へ周り、のんびりと歩いていく。
たまに、首の後ろが痒くなるので、座って足で掻く。
(ふぃ~~~。痒かった!!!)
そして、時折現れる長ーい草。
ツンツン。。
(鼻がくすぐったい。。。)
草むらの中を抜けて、山本のじーちやんの家にたどり着いた。
(この時間はよく、縁側で新聞読んでるんだけどなぁ。。。)
ボクはそう思いながら、山本のじーちやんの家の庭の奥の方に歩いていった。
『おっ!しろ~。今日は来たのかぁ!』
ここでのボクの名前は(しろ)。
じーちゃんがボクの体が白いからって、そう呼び始めたんだけど。。。
白いネコはボクだけじゃないから。
じーちゃんに、(しろ)と呼ばれているのはボクだけではないらしい。
『にゃぁ~~~~~』
『ほら、しろ、こっちさおいでー』
呼ばれたらしいので、近くへ寄っていき、じーちゃんが読んでいる新聞の上に寝っ転がる。
すると山本のじーちゃんは、ゴツゴツとした固い手でボクの体を撫でてくれるんだ。
『どーれ、きもちいかぁーー??』
『にゃーーーん』
『そうか、そうか、きもちいかぁ!』
昔は元気に漁師をしていたらしいけど、山本のじーちゃんは歳をとったから漁師は辞めたんだって、のら猫仲間が昔話していた。
何年か前までは、仲良しなばーちゃんもいたそうだが、今はひとり暮らしになったんだ。
すっかり白くなった髪の毛はいつもボサボサで、髭もほとんど剃ってない。
ひとりになった山本のじーちゃんは退屈なんだろう。
ボクが巡回にくると、嬉しそうに目を細めて笑ってくれる。
そのゴツゴツとした手でなでられるのも、ボクは嫌いじやない。
あまりにも山本のじーちやんが嬉しそうなので、ボクはしばらくここで撫でてもらいながらくつろぐ事にしよう。
(ばーさんがいたら、しゃべり相手になってくれてたんだがなぁ。。。)
ボクに山本のじーちゃんの心の声が届いた。
いつも優しい笑顔のばーちゃんの顔が僕には見えた。
ボクは、うーーんと体を伸ばして、新聞の上で丸くなった。
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