Letter

 彼女の手紙は今も大切にとってある。

 あの日、彼女は帰ってこなかった。


 病院で治療を受けていた私の元には沢山の手紙だけが残った。

 春から夏になって、秋になった。

 私はその時には一時的な帰宅が可能となったから一度家に戻ったのだ。

 彼女の訃報を知ったのはその時であった。

 彼女は旅の帰りに高速道路にて玉突き事故に巻き込まれて亡くなったというのだ。

 亡くなったのは彼女、そして事故を起こした普通車を運転していた男性と助手席に座っていた女性であった。

 かなりの勢いでぶつかったようで彼女の軽バンはトラックとミニバンに挟まれてペシャンコになっていたのだという。

 体の体調が少しよくなっていた私は母の手を借りて彼女の家へと向かった。

 彼女の家のインターホンを鳴らすと彼女のお母さんが私たちを家に招いてくれた。

 まず、私は彼女の仏壇にお線香をあげて少しお話をさせてもらった。

 お母さんは大変悲しまれていて顔がやつれていた。

 私は病気で入院中、彼女から送られる旅の手紙を読んでこれまでの治療と辛い病気に耐えられた事への感謝、そして、私の手元にあった手紙を手渡そうとしました。しかし、彼女のお母さんは「それはあなたの為にあの子が書いたものだから持っていてあげて欲しい」と受け取られなかった。

 彼女の家を後にして、私は家のベッドの上で手紙をまた読んだ。

 そうしているうちに、もう彼女はこの世にいないのだと実感して涙がぼれ落ちた。


あの日から幾年たった。

 私は今も彼女の手紙に救われている。今日もまた病院のベッドの上で彼女の楽しげな顔を思い浮かべて、彼女の手紙を読んでいる。

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Letter ひぐらしゆうき @higurashiyuki

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