第7話 サルノコシカケの売却と木剣
またあれから一週間が経過したらしい、ライエル商会が来る日になった。
「きたぞぉ」
「ライエルのおじさんだぁ」
「お、おう、ライエル商会のジョン・ライエルです」
「「お~お」」
相変わらずの人気っぷりだ。
普段外に出ない我々と商品の売り買いをしてくれるいいやつだから、人気は高い。
今日も髪の毛が薄いけど、優しそうな笑顔を浮かべている。
何となく気配がする。そう、やつは正真正銘のロリコン。絶対そうだ。
私が冷たい視線を投げかけているとも知らずに、商品の売り買いを進めるライエルさんだった。
「それで、今日は私からは、乾燥ホワイト草を」
「ああ、おじさん、私もぉ」
「あの、私もちょっとだけ」
なるほど、みんなもちょっと空き時間を見つけてはホワイト草を採ってきたりしているらしい。
みんな、なかなか可愛いじゃないの。
「はいはい、並んで並んで。お金は十分あるから、あせらなくても大丈夫。全部、えっと、買えそうかな? たぶん買えるから」
みんな少しずつだけどお金と交換していく。
銀貨2枚くらいの子が多い。
というか私が採りすぎなのかもしれない。微妙に慣れていることをいいことに、毎日両手一杯に採ってたから。時間も結構あったし。
「トエちゃんは、銀貨8枚だね」
「おおぉおお」
はい。張り切って採った分多めだ。
でも来週からは半分になる予定。森へ行き出したので。
「あのおじさん?」
「はい、トエちゃん? 金額が不満だった?」
「ううん。これとこれとこれも見てほしい」
「どれどれ」
スライムの魔核8個、ホーンラビットの角、ホーンラビットの魔核がある。
それからサルノコシカケの大きいのを提出する。
スライムの魔核が赤紫に対して、ホーンラビットは赤だ。
これはどうやらラビットは火属性なのだそうだ。
スライムは一応無属性だったと思う。
「うん、うん。ほほう」
「どうでしょうか?」
私が努めて可愛い感じで小首をかしげて見せると、ちょっとデレッとしたライエルさんが、わざとらしく視線を逸らす。
「えっとね、スライムが銀貨1枚の8枚、角が3枚、ラビットの魔核が2枚、それからサルノコシカケが金貨1枚で合計、金貨2枚銀貨3枚だね」
「「「わーお」」」
みんなその評価額に驚いた。
まあ、そうだよね。
特に美味しそうでもなんでもないサルノコシカケの大きいの。
まあ大きいから買い取り額が高いんだと思うけど、こんな値段するとはね。
私も思ったより高くてびっくり。
「ありがとう、おじさん」
「あ、ああ、いいんだ。うん。これでも適正価格だよ。贔屓とかもしてない。スエルメティス様に誓って」
「へぇ」
私は少し感心した。
このおじさんのことだから私の美貌に負けて、依怙贔屓で高い値段つけたり、他の子と差別するようなことをしそうだけど、誓ってないそうです。
神様、見てますか。ライエルさんは正直者の素晴らしい方ですね。
みんなおやつの干肉を買ったり、みんなで銀貨1枚ずつ出し合って、夕食用のお肉を買うことができた。
私も金貨1枚を孤児院の寄付として何か購入することにした。
「なにかないかな?」
「そうだなぁ、色々買ってくれそうだったから、いくつか持ってきてるけど」
「うーん」
お肉は欲しいが、今回の分はみんなで出した分のほうに銀貨1枚で参加している。
となると他に欲しいものか。
個人的に服を買う子なんかもいる。
銀のアクセサリーを買う子もいた。
この辺は個人の自由だ。
私としては、食生活の改善が最も重要だと思っているので、出すなら食品かなぁ。
「そうだ、トウガラシとかあります?」
「さすがトエ嬢お目が高い。あるよ。入ってきてここ数年だね。種と実があるけど」
「両方、半分ずつ。金貨一枚で買える?」
「ああ、十分だ」
「じゃあトウガラシの種と実、孤児院への寄付で」
「まいどあり」
種は植えれば今度から自分たちで収穫できる。
そして種だけでは、食べられないから、実もあるなら、非常にうれしい。
使いすぎると辛くなっちゃうけど、ピリ辛くらいなら十分美味しいと思う。
「毎度ありでした。ではお嬢さんたち、また来週」
「ライエルさん、ばいばい」
「「ばいばい」」
みんなで見送りをする。
ニコニコ顔でライエルさんは馬車で去って行った。
さて時間を少し戻して、森に2回目に行った後。
私は固い木の枝をゲットしていた。
それを木剣に加工しようと思うのだ。
ということで、実家から失敬してきた護身用ナイフでせこせこと木を削った。
木の枝は全部で4本あったので、空き時間を見つけては、頑張って作業をした。
そうしてできたこのアイテム。
【トエのパインの木剣】
あー。こういうときステータスが表示されないと非常にモヤモヤするがいいんだ。
パインというのは要するに松とかの針葉樹のこと。
重要なのは無事、木の枝だったものが木剣と認識されていた。
最初はだたの枝だったのですよ。
それをちくちく削ってものにしたのです。
私の苦労の結晶なんだからね。
ということで私トエ、サエナちゃん、シリスちゃんの3名に1本ずつ配られた。
完成後、みんなを誘って朝早めに起きて、剣の素振りをはじめた。
1日30分。短いけれど集中して訓練をする。
2人とも最初はへっぴり腰だったものの、だんだんと改善されてきていた。
幼女といえど、異世界の子、みんな逞しい。
メキメキ上達しているので、私もそのうち抜かされてしまいそうだ。
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