第4話 洗濯と石鹸

 さて服は茶色いワンピースが3枚と寝間着のセットが各人2枚ずつ。

 週に一回着替えて、お洗濯だ。

 他は基本予備とする。

 もちろんそれ以上持っている人もいるけれど、それは自分で稼いだお金とかで買い集めることになる。

 そして、この前のお肉のように、ほとんどの子はお金をほとんど所有していない。


 自分が洗濯する日は午前の仕事が交代制になっていて、自分の服を洗うのが仕事になる。

 週に一回なので、今回が二回目だ。


「ざ~ぶ、ざぶ。ざ~ぶ、ざぶ」

「あわわ、ざ~ぶざぶ」


 私はサエナちゃんと並んで、仲良くお洗濯をしていた。


 大きなタライに、井戸から水を汲み、それを洗うだけだ。

 洗剤はない。

 水洗いだけなので、あまり汚れも落ちないけれど、今のところしょうがない。


 そうやって水で洗ったら、庭にある物干しに引っ掛けて乾燥させる。

 ひとりずつ竿を使い分けて、どれが誰のか分からなくならないように注意して干すのだ。


 みんな似たような白いパンツに茶色の服なので、うっかりしていると違う子の服と入れ替わりそうだった。

 そう思っていたが、一応みんな服の隅に刺繍をして名前を入れていた。えらい。

 私のはまだそういうふうになっていないので、名無しだった。


 よく晴れて、ところどころに真っ白な雲が流れていて、とてもいい天気だ。


「ふぅ、お洗濯終わり~」

「終わったね」


 さあ、またホワイト草を採取しに行こう。

 丘の上の草原を歩き回って採る。

 両手いっぱいに採取したら戻ってきた。

 いつものように部屋の壁にホワイト草を干して終わり。


「そうだ。石鹸も作ろう!」

「お、おう」


 私のテンションにたじたじのサエナちゃんも連れて行く。

 厨房へ行った。


「すみません、料理のおばさん」

「なんだね?」

「捨てる油とかありますか?」

「捨てる油かい? ないことはないけど、何に使うんだい?」

「集めて固めると、石鹸になるんです」

「そうなのかい、へぇ、ほらこっちの壺だよ」

「ありがとうございます」


 無事に油壺をゲットした。

 ただあまり大きくなくて量は少なめだ。


「すみません、あと灰とかあります?」

「灰なら、ほらそっちにいっぱいあるよ」

「ありがとうございます」


 確かに料理用のカマがあって、灰が横に捨ててある。


「あ、あの、それから、塩を少しほしいんですけど」

「塩かい? でも石鹸作ってくれるんだっけ? 出来た石鹸分けてくれるなら、塩を渡してもいいかな?」

「あ、はい。石鹸はお分けします。というか孤児院で使うつもりなんです」

「まあそうだろうね、わかったよ。塩も使っていいよ」

「わあ、ありがとうございます」


 厨房のおばさんが優しい人で良かった。


 鍋の一番古いもう使っていないというのをレンタルして、灰と油とを煮詰めていく。

 そうしてできたドロドロの石鹸もどきに塩を入れる。

 この塩は隣のメンデルシア侯爵領の特産で、海水から作られている。

 ただ精製が甘いので塩化ナトリウムだけでなくて、にがり的なものもかなり含まれているのだ。

 たぶん、この石鹸を作るのには向いていると思う。

 これで「塩析」というのができるはずなんだ。本で読んだもん。知らんけど。


 地球世界では本当ならこれくらいではちゃんと固まらないとかあるみたいだけど、ビバ、ファンタジー世界。適当でもうまくいきそうだった。


 私とサエナちゃんでよく見てみる。

 さて石鹸はとりあえずこれで終わりだ。あとは待つだけだ。


 お昼ご飯を食べて、午後の農作業をして、夕ご飯を食べて、軽く体を拭いたら寝る。


「さっぱりしたぁ」

「ね~」


 熱いお湯を使ったタオルが支給されるのは、この洗濯の日と決まっているのだ。


 久しぶりに服も体も綺麗になって、ぐっすり眠った。


 翌朝。

 朝の仕事をして、石鹸の様子を見てみる。


「おおぉ、固まってる!」

「ちゃんとできたね、すごい!」


 鍋には石鹸ができていた。

 それを包丁で四角く切り出す。


「おばさん、はい! 石鹸です」

「本当に石鹸みたいだねぇ」

「みたいじゃなくて、ちゃんと石鹸のはずです! はいどうぞ」

「ありがとう」


 こうして厨房には石鹸が完備された。

 それから私たちは昨日の洗濯で使えなかったけど、今日の子には石鹸の使い方を軽く説明して、渡してみた。

 石鹸をプレゼンしてプレゼントなんちって。


「石鹸、ありがとう~」


 さっそく使ってみる。


「わぁすごい、泡が出るね。なんだか水が茶色くなってきたから、汚れが落ちてるんだよ、すごいね」

「そうだよね!」


 石鹸は洗濯でも威力を発揮して、今度から使うことができるようになった。


 行ったり来たりしたが、また厨房へ。


「あの、おばさん」

「なんだい?」

「今度から、脂身とかで捨てちゃうところを集めて置いて、たまに鍋で煮て、脂を集めて置いてくれませんか? 油壺だけだと石鹸とかすぐなくなっちゃいそうで」

「んん? そうだね。いいよ。石鹸はいいもんだからね。石鹸のためならそれくらい、お安い御用だよ」

「ありがとう~」


 今は実験的に作ったけど、廃油とか少ししかなかった。

 それにこの油は基本的にランプに使うみたいだから、量ができなかったのだ。

 たくさん作るためには、脂身などから取り出す必要があった。

 おばちゃんがやってくれるようなので、定期的に石鹸にしよう。


 こうしてまたひとつ、生活がよくなった気がする!


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