第9話 世界線
宮村啓史は部屋から引っぱり出され、姫に廊下を連れられていた。彼は何故アイナがこの国の姫だということを聞いたときに自分が少しも驚かなかったのかと考えていた。
(いつもアイナをお姫様みたいに考えてたからかなあ。まあ、そういうことだろう。何にも変わってないさ。)
啓史はそう思った。
アイナはいつもの可愛らしい声で、本当はもっと一緒に話したいが時間がないということを伝えた。なるべく早く、啓史を国王と宮宰に紹介したかったためである。啓史はラスタリアの王族がどんな雰囲気か興味があったが、まだどこか夢の中ような感覚があったため謁見に際して特に準備はしていなかった。
「それで、『世界線』ってやつについて教えてくれないか?」
啓史はずっとアイナに聞こうと思っていたことを思い出した。その「世界線」なるものは自分が頭の中で浮かべているものと同じようなものなのだろうか。彼はそう疑問に思っていた。
「ええっと、勇者様、そうですね……なんとお伝えすればよいものでしょうか……」
アイナは再び首を傾げた。どうやらこの仕草は本人が気づいてすらいない生まれつきの可愛い癖のようだ。
「世界線というのは実はこんな感じのものなんです」
アイナは優雅に腰を下ろし、壁のレンガで行進しているアリの行列を指さした。唐突のことで啓史は少し驚いた。
「これが一つの世界線だとしましょう。すると、こちらがもう一つの……」
アイナは別の行列を指さした。こちらの行列はレンガの下部にあり、二つの行列はたがいに平行の位置関係にあった。
「これが?この二つの行列が世界線ってことか?」
「どう言えば良いでしょうか……この二つの行列を見てすぐ、何か世界線みたいだなって思ったんです。そうですね、例えば、この行列についていっているアリはもう片方の行列のアリを認識することが出来ると思いますか?」
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