第4話 プリンセス
「俺は……何を?」
啓史は気が付くとふかふかのベッドに横たわっていた。周りには白い壁しか見えない。化粧台には可愛らしいピンクや青のおもちゃがたくさん置いてあった。
「ここは……どこだ?」
啓史はまず、決意を口にした後、アイナに似た少女が太陽よりもまぶしく微笑んだ光景を思い出した。。彼は持てる力全てでもってアイナを助ける決意をしたが、本当に可能なのか全く見当がつかないでいた。
(考えてはいるけど、ライトノベルの主人公みたいな決意は固まってはいない。ただ流れに身を任せただけだ。夢の中にいるって思ってたし。ほら、夢の中なら何でもできるだろ?)
啓史が決意を述べた後、アイナが大きく腕を広げると、ブラックホールのような何かが現れた。
(俺と同じくらいのデカさで、なんかすげえ恐ろしかったな……)
冷たい風がその紫がかった黒い穴の中に吹き込んでいた。嵐が近づいてきたときの、暴風が吠えているような音にそっくりな音だった。しかし、アイナは全くおびえた様子ではなかった。彼女はただその華奢な両腕をその穴の前に突き出し、歓迎するように、
「さあ、ポータルをおくぐりください!」
と言った。
「ポータル?これは異世界につながるポータルなのか?」
啓史はアイナにこんな質問をしたことを覚えていた。まだ夢を見ていると思い込んでおり、そんなに深く考えてはいなかった。「異世界モノ」を見すぎてこれからどうなるか分かるなあ、などと思っていた。
「その通りです!我が勇者様!」
アイナの快活で可愛らしい歓迎の声を聞き、啓史はポータルの中に歩を進めた。
そこから先は何も覚えていない。
しかし、今、そんなことよりも注意を払うべきはるかに重要な事態が起こっている。
手の下に何かやわらかくてふわふわしたものがある。いや、下ではなく、手に巻き付いている。
そのなんだか暖かいものに啓史は目を向けた。
「ぐえぇぇぇえ!?」
啓史は隣で寝息を立てているアイナを視界にとらえ、驚いて叫んだ。
その動物のようなうなり声でアイナは目を覚ましたようだ。ゆっくりと目を開け、愛らしい仕草で目をこすり、新鮮なトマトのように真っ赤な顔で隣に座っている啓史に目線を移した。
「勇者……様?」
啓史はしばらく混乱していたが、その後小さな声で
「おは……よう?」
とささやいた。
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