第41話 物語の始まり
「思ったよりなんにもないね。」
「そうね。いくつか空洞があったけれど全てもぬけの殻ね。でもその全てに何らかの痕跡が残されてたの分かった?」
「分かってない!」
「さすが、私の期待を裏切らないわね。」
「えへへ。」
「続けると空洞にはそこで生活していた痕跡があるのよ。正体は分からないけれど少なくとも人間か人型のモンスターのどちらかと思うわ。」
「こんなところに人間はさすがに有り得ないでしょ。」
「そうね。私もそう思うわ。けれど、痕跡はどんどん新しいものになって行ってるから注意するのよ?」
「はーい。」
まあ遭遇することなんてないだろうし見つけたら
「お、おいお前ら!に、人間なのか?」
「て⋯⋯」
「ストップリブラ。人間よ。痕跡の正体。どうも素敵なお兄さん。私はリサ、あの子はリブラよ。そして私たちは人間よ。今はこの山の調査をしているのだけれどたまたまここに迷い込んじゃったのよ。それであなたは何者でいつからここにいるのかしら?」
「俺は王都クロノスの騎士団の副団長カムイだ。」
「そう、いい名前ね。それでいつからここにいるの?」
「⋯⋯覚えていない。」
「⋯⋯そう。それは仕方ないわね。だったら他に仲間はいる?」
「俺の他に3人居たが、全員死んでしまった。」
「それは残念ね。失言だったかしら。」
「いや、気にしなくていい。もう随分前のことだ。」
「???」
私まだいきなり変な男が話しかけてきたところで思考止まってるんだが?え、なんでそんな受け入れられるんだこの人。
「リブラもなにか聞きたいことはある?」
「え?私?」
うーんいきなり言われてもあ、
「王都クロノスってどこ?」
「え?」
え、なんか変なこと言った?なんでそんなマジかこいつみたいな顔してんの?
「私たちで言う最初の街のことよ。」
「神の恩恵を授かり大陸の全てを統一した王都クロノスを知らないだと?」
「いや、知ってるって!ちょっとした確認じゃん!ちなみに王様の名前って分かります?」
「知らないものを無理に知った被らなくていいぞ。王の名前はアーサー=クロノス様。これで良いか。」
「ま、まあ知ってましたけどね!それはそれとしてありがとうございます!」
「リブラ、1回戻るわよ。それとエクスに連絡をお願い。」
「エクスさんに?まあいいけどちょっと待ってね。」
「お願いね。長く話しすぎた見たいね。あなたはこれからどうする?王都に戻る?」
「いや、俺は引き続き調査を行う。お前たちだけで帰っても問題ない。」
「分かったわ。健闘を祈ります。エクスに連絡は着いた?」
「着いたよ。今王都内に居るから会えるって。そっちに行こうかとも言ってるけどどうする?」
「私たちが行った方が早いから待ってもらうように言ってもらっていいかしら?それと合流場所も聞いてもらっていい?」
「オッケー!あ、カムイさん頑張ってくださいね!」
「ああ、ありがとう。お前たちも頑張れよ。」
*****
「やあリブラさん。久しぶりだね。そちらは?」
「こんにちはエクス。私はリサ。あなたに聞きたいことがあってこの子に取り次いでもらったわ。」
「そうなんだ。よろしくねリサさん。それで、聞きたいことって?」
「この国の王の名前って言える?」
「名前……ごめんそこまで把握してないね。」
「そう。だったら騎士団の副団長の名前は分かるかしら?」
「副団長?サーファさんのことかい?ごめんだけど下の名前までは分からないかな。」
「えっ?副団長さんの名前ってカムイさんじゃないの?」
「ありがとう。あそこの謎が解けたわ。」
「解けたならなりよりだよ。それに随分と珍しい者に出会ったみたいだね。僕も一緒に居てもいいかな?」
「もちろんよ。というよりこれからはあなたの助けが必要になる機会が多いから、こっちからお願いしたいわ。」
「そう言って貰えてありがたいよ。それじゃあ早速何か役に立てそうなことはあるかい?」
「ちょっと王様に会いに行ってくれるかしら?ヘイリブラ!私の横で存在を消せると思わない事ね!あなたも一緒に行ってもらうわよ。」
「そんな!休日に外に出た時に知り合い全員に素通りさせるレベルの私の気配遮断が破られただと!」
「何言ってるのか分からないけれど、あなたが行けばきっとスムーズに話が進むと思うわ。」
「じゃあまずは団長さんのところに行こうか。王都関係者の中で知り合いと言ったらそのくらいしか思いつかないしね。」
「そうね。それが一番無難な選択ね。私は少しやることがあるからあとは任せたわ。」
「よっしゃー!いざ!王城へしゅっぱーつ!」
*****
「訓練中失礼しますジェード団長。少しお時間よろしいですか?」
「おお、エクスか!勿論いいぞ!それで、そちらの方は?」
「リ、リブラです。今日はエクスさんの付き添いでき、伺いました。」
こっっっっわ!何この人バケモンレベルででかいしごついし強そう!何か粗相起こしたら片手で頭潰される!絶対に!
「はっはっはっ!そう畏まることは無い!騎士団団長といってもただの肩書きに過ぎん!好きなように話すがいい!」
「う、うっす。」
「団長さん。少し相談してもよろしいですか?」
「いいぞ!できる限りの事はやってやろう。」
「ありがとうございます。それで相談なんですが今横に居るリブラが騎士団の副団長を名乗る者に出会ったそうなのですが……」
「名前は?なんと名乗った。」
「『カムイ』と名乗ったそうです。」
「そうか。……確かリブラが『カムイ』と会ったそうだな。何処で出会ったか教えて貰ってもいいか?」
「えっと、あそこのでかい山の隠されてた通路を進んで行ったら出会いました。」
「オルシム鉱山のことか。ふむ、どうやら間違いはないみたいだな。よし、着いてこい!お前たちはサーファ副団長の指示のもと訓練を続けよ!」
「「「「「「「「「はい!」」」」」」」」」
「お前らには少し昔話をしてやろう。昔、王都クロノスが全盛期の時代だった頃のことだ。戦争も終わり、ある程度安定したおかげか、長い平和な時代になると思われていたがいくつもの光の柱がこの世界に落ちた。複数の調査隊が送られたがその全てが消息不明。当時は手がかりはなんにも得られなかったそうだ。しかし時が経って神と名乗る人物が王都へ現れた。そのものは光の柱の正体を明かし、その正体を知った当時の王アーサーは、自らだけでは対応出来ないと判断し、敢えて王国を分割し、複数の統治者に光の柱の管理を任せた。これはある文献の1つだがその中に『カムイ』と言う言葉があったのだ。文献の全てを知るものは現国王しかいない。」
「ちなみにその光の正体ってなんだったんですか?」
「当時の王アーサーにしか伝えられなかったそうだ。そしてそれを知るものは王の位についている者しか知らされていないらしい。」
「それじゃあ今から王に謁見という訳ですか?」
「そうだな。文献に書いてある人物に会った。しかも光の柱が落ちた場所でとなるとある程度因果関係があると見るのが正しいだろう。幸い王、ヴィーロ王は今日の予定は無いはずだから、すぐに会えるだろう。そこで待っておいてくれ。」
「これもしかしてとんでもなく重要な事になってるんじゃないですか?」
「もしかしなくてもとんでもなさそうだけどね。城の中に入るのなんて初めてだよ。ここからは本当に気をつけてね。」
「う、うっす。やばいお腹が痛くなってきた気がする。」
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