第7話 海辺にて
「どうしたの透。急に海に行こうだなんて」
「暖かくなってきたし、ちょっと潮風に当たりたくなってね」
僕たちが住む町は海に面している。
自宅から二十分ほど自転車を走らせれば、そこはもう海なのだ。
「久しぶりだね、透と海に行くの。透は覚えてる? 幼稚園の頃、家族でよく行ってたこと」
「ああ」
と返事をしてみたものの、実はよく覚えていない。
両親からは僕と茜の微笑ましいエピソードを山ほど聞いているのだが。
「そうそう、昨日も不思議な夢を見たの。透と一緒にスキーに行く夢。透はガシガシとコブを滑っててさ、途中でジャンプするわけ。透もあんなことできるんだね、カッコよかったよ」
いやいや、出来るわけがない。それはアオの妄想の世界の話だから。
でも脳内世界とはいえ、アオが僕のことを華麗にジャンプさせてくれたのは嬉しかった。
そんな話をしているうちに海に到着する。子供の頃からよく訪れた海岸だ。
アオのリクエストだから海に来てみたのだが、ちゃんと待ってくれているのだろうか。海が青く光っているわけでもないし。それどころか太陽はその高度を下げつつあり、海は赤く染まろうとしている。
「なつかしいね、この場所」
「ああ」
茜と一緒に、海が見える草地に腰を下ろす。
髪を揺らす潮風。ザザーと揺らぎを持った波音の繰り返し。今日は本当に暖かくて心地いい。
すると僕は突然、眠気に襲われてしまったんだ。
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