第6話 青と赤の違い

「じゃあ、赤い光はどうなんですか?」


 とっさに頭に浮かんだのは「赤」という単語。

 だって青と来たら赤だろう。

 しかしこの言葉がアオの解説心に火をつけてしまう。


「おっ、いいところに気がついたね少年。じゃあ、赤い光と青い光の違いは何?」


 しまった、藪蛇じゃないか。

 答えられずに黙っていると


「スキーで例えるとね、青い光がモーグラーで赤い光が基礎スキーヤーなの」


 話がいきなりスキーになった。

 でも、ちょっとイメージしやすくなったかも?


「そして私たち微粒子がジャンプ台。じゃあ、青い光が私たちに出会うとどうなる?」


 えっと、青い光がモーグラーで、微粒子はジャンプ台だから


「ジャンプする」

「そう、バックフリップとかコークスクリューとかやっちゃうのよ。青いウエアーを見せびらかしながら派手にね」


 まあ、そうだろう。

 モーグラーだったら間違いなくメイクする。


「じゃあ、赤い光はどうすると思う? 少年」

「赤い光も……ジャンプする?」

「しないわよ、基礎スキーヤーなんだから。ジャンプ台なんて避けて、さっさと先に行っちゃうの」


 まあ、言われてみたらそうなのかもしれない。


「青い選手ばかりがジャンプする。するとゲレンデはどういう風に見える?」

「青く染まる」

「そう。それが空が青かったり、青い池が美しく光るメカニズムなの」


 へえ、なんか分かったような、分からないような……。

 ここで僕ははたと思う。そもそも赤い光の話だったんじゃないか――と。


「で、赤い光はどこに行っちゃったんですか?」

「それについては明日ね。なんか疲れてきちゃった。明日は茜ちゃんを海に連れてきて。そこで説明してあげるから。じゃあね……」

「ちょ、ちょっと!」


 いつもいきなりなんだから、と憤る間もなく僕は茜を抱きしめる。

 アオは今日も、脱力する茜を残して鼻から空に去って行った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る