第4話 手を繋ぐこと
放課後。
二人で裏山の溜池に行くと、水面は今日も青く輝いていた。
「すごく綺麗だよね、ここ……」
「ああ」
二人で並んで土手の上から池を眺める。
すると茜は恥ずかしそうに僕の手を握ってきた。
僕は、どうしたらいいのだろう?
恋人同士だったら、手を握り返すのがきっかけで見つめ合ったり、抱き合ってキスしたりするのだろうか。ドラマでよく見るように。
でも僕たちは幼馴染。茜とキス――なんて考えたこともない。
それに僕は今、ちょっとアオのことを考えている。そんな気持ちで茜の体に接するなんて、すごく失礼なことじゃないだろうか……。
手を握り返すことができずに固まっていると、水面から青の微粒子が立ち上がり、昨日と同様に渦を巻きながら茜の鼻の中に吸い込まれていく。
「今日の茜ちゃんの脳内はノルアドレナリンがドバドバね。一体何をしたのよ、少年は」
アオの第一声は、またもや茜の脳内解析についてだった。
というか、助かったぁ。
不覚にも僕はほっとしてしまう。
「それは、僕たちが手を繋いでいるから」
そう答えるとアオは握った手を引っ込める。
「本当だわ。ノルアドレナリンの分泌量も減った。しかし手を繋ぐっていいものね」
手を繋ぐこと。
小さいころは当たり前の行為だった。
が、中学、高校と上がるにつれて茜と手を繋ぐことはなくなってしまう。
それはなぜだろう?
おそらくキスと同じく、恋人同士の行為と認識が変化したからだろう。
茜は幼馴染。恋人同士にはならないような気がする。
でも、そんなことをアオに話してもしょうがない。
それどころか、アオと話していることは茜の中で夢として再現される危険性がある。
だから僕は、強引に話題を変えた。
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