第2話 兄は、寂しがる
「えっと……買い忘れはないよな……」
合宿帰りスーパーにて、俺は買い物かごの中を確認する。今日は母さんから、買い物を頼まれたのだ。塩や醬油・味噌汁と重いものばかりだが、なるべく帰宅するのを遅くしたい俺にとって用事は有り難い。
「はぁぁ……」
レジへと向かいながら溜息を吐く。弟に彼女が居ると分かってから三日程が経過したが、弟から彼女についての説明は一切ない。俺に目撃されたことを知らないから仕方ないのかもしれない。サークルの合宿があり、弟と直接顔を合わせられていないのだ。
俺は完全に弟から彼女のことを訊きただすタイミングを見失っている。個人的なことであるから、弟とはいえ俺に報告する義務はない。だが、少し寂しく思う。
「にいちゃん! まってよ!」
「ほら、走らない」
俺の横を小学生たちの兄弟達が通り過ぎた。そういえば弟も小さい頃は、よく俺の後ろを付いて来ていた。何でも報告し真似するのも好きで、桃のゼリーも俺が食べているのを分けてあげたのが始まりだった。
「かっこ悪いな……」
要するに俺は、弟に彼女が出来たことを認められていない。彼女のことを尋ねる勇気も、弟の成長を祝福出来ない情けない兄なのだ。遠くで先程の兄弟の笑い声が響く。それがより俺を虚しくさせた。
「あ……よし、頑張るぞ」
不意にある商品が目にとまった。これを話題にそれとなく、彼女について話しを聞いてみようと手に取りレジへと向かった。
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