第一章・第2話 最悪の始まり

……よし!

一度整理をしよう。俺は目的地の王国を目指し向かっている道中困っている男性のダルケさんを助けてそのお礼に馬車に乗っけてもらい王国まで送ってもらった。

だが、しかし!

王国に入るにはライセンスという身分証明のカードが必要とのこと。

俺はこの世界の住人ではないのでもちろん持っているわけがない。

つまりだ! 俺は王国に入ることはできない。よって、俺の旅は終了のベルが鳴ったのだ……

「はぁ、詰んだな……」

俺はただただこれからどうしようと絶賛そのことだけを考えていた。

ちなみに現在いるのは王国から少し離れた西側の人が来なさそうな森?っぽい場所だ。

別にあれだ! 森と木がたくさん生い茂っていていい感じの日陰を見つけてそのまま休憩がてら〜

とかいう邪念は無い! と言えば嘘にはなるが全てがそうというわけではない……

「……これからどうしていくかだよなぁ、とりあえず近くに良い場所がないか人に聞きに行くか!」

とこのままここにいても拉致があかないと考えた俺はとりあえず立った。

「とりあえず来た道を戻りつつ人探しだなぁ……ん? ……あっ!」

俺はとりあえず動こうと右足を動かそうとした瞬間俺はあることに気づいた。

そう、俺にはすでに聞く相手がいるのだ。

俺はその相手、ニャスターレとかいう摩訶不思議な存在に尋ねてみた。

「あの〜ニャスさーん、少し聞きたいことがあるんですが……」

「……んにゃ?」

と少し待ったあと情けない返事が返ってきた。

「おい、 今寝てただろ?」

こいつ〜

俺が困ってる中呑気に寝てやがって〜!!

と心の中で思っていたとしてもこいつにはそれすらも聞こえるので静かにそっと心の奥底で唱えておいた……

「んで、 用はなにかな?」

と若干眠たそうなトーンで返答してきた。

やっぱり一発だけ殴りたい……

「いや、 それが少し困ったことになってな……」

その瞬間再びニャスは猫耳少女の姿で現れた。

そして俺はそのままニャスにさっきの出来事を伝えた。

「ふーん、 にゃるほどにゃるほど〜

つまりケイトは王国の中に入りたいってことでオーケーかな?」

……話色々と飛んだ〜!!

あれ、こいつ人の話ほんとに聞いてたのか?

やっぱり本気で殴ったほうがいいような……

いや、 ここは冷静になろう。

と若干イラッとくることはあるがとりあえず俺は質問の返答をした。

よくよく考えてみれば入れる方法があるならそれはそれで良いんだよなぁ。

「いや、 まぁ間違ってはないんだが……」

「てか、 その言いかただと王国に入れる方法があるって聞き取れるんだけど、もしかして方法があるのか?」

「まぁ、普通ならまずムリだね。でも、 ボクにならそれが可能なのだよ!」

とニャスは何故か自信満々に言ってのけた。

俺が聞きたかったことはここから近い場所があるかどうかそしてニャスがその場所を知っているのかを聞きたかったんだが、 まぁ入れるのならそれに乗ってみよう。

と俺は決心を固めてニャスと会話を続けた。

「さすが妖精だなぁ。 方法があるなら教えてほしい」

「にゃ〜、 方法はあるけど……

そうだにゃ〜、 教えるより実際に見せてあげるよ」

「……見せる?」

無限の扉インフィニティ・ゲート

「……えっ、って、な、なんだこれ〜!!」

そうニャスが唱えた瞬間俺の足もとあたり全体をまた魔法陣のようなものに覆われ、そして紫色の禍々しいオーラを纏った奇妙な物体が出てきた……

「……うぉっ!」

そして俺は困惑状態でもおかまいなしにその物体に吸い込まれた。

「よいしょっ!」

ニャスもそのままその物体の中に入ってきた。




そしてほんの少し経ったあと再び俺は青空を見上げる形で確認した。

「ッ!」

ドカン!!と盛大になにかにぶつかった音が聞こえた。

そこから少し経ったあと状況を確認した。

まずぶつかった音の正体は俺の背中と俺が今、倒れている床と衝突した音だ。

かなりの勢いで打ちつけたからだろう……

ものすごく背中が痛い、、、

「よっとー

どうだった? ちょっとしたスリルある空間魔法の体験は?」

とそんなことはおかまいなしにニコニコした顔を見せながらニャスは聞いてきた。

「痛い以外に言葉がでてこない……

って、 やっぱりあれも魔法なのか……」

「……って! それよりこれじゃ見せるってより体感じゃねーか!」

と思ったことを吐いたあと、 少し背中の痛みもおさまったからか周りが見えるようになってきた。

「ふふーん! どうにゃ! これがボクの二つ目の魔法……その名も無限の扉-インフィニティゲート!」

「普通に名前がかっこいいな……」

と俺はぽろっと言葉が漏れた……

「この魔法はにゃ〜

ボクが一度来たことある場所限定で好きなタイミングでどんなときでも現在の場所との空間移動ができるのにゃ!」

「それってつまりワープってことだよな?」

「まぁそうとも言うにゃんね〜」

確かに普通の人生ならそうそう体験する出来事じゃないよなぁ。

それよりも俺は少しとあることが気になってニャスに尋ねた。

「ところで、 そのさっきからその口調のエセ猫言葉はなんなんだ?」

こいつ最初出会ったときはこんな変な猫口調じゃなかっただろ、、、

「これかにゃ? まぁ、こっちの方がかわいいと思ってにゃ〜」

「いや、素直にきもい」

と俺が言った瞬間ニャスはそのまま拗ねてそこらの隅っこでうずくまりだした。

めんどくさいこのうえないなぁ……

と思いつつ俺は辺りを見まわした。

そこにはさっきまで緑でいっぱいだったのに今は左右どちらを見ても建物が複数見える。

「……これがワープってなると今は王国の中ってことでいいのか?」

と俺はうずくまって落ち込んでるニャスに聞いた。

「……えっ、あー、まーそーだけど」

と若干ふてくれたトーンで返答してきた。

そんな拗ねられるとこっちもくるものがある……

このあと俺が取るべき対応は……

「はぁ、さっきのは言いすぎた。 わるかった……」

と俺が謝った瞬間、ニャスは立ち上がりまたいつもの笑顔に戻った。

めんどくさーと心の中で思いかけた。

「あー、さっきの質問だったね!

そう、ここがきみが来たかった王国の中だよ!」

とまたニコニコした笑を見せながら言ってきた。

色々とこいつには思うところがあるがそれでも素直にこう思う……

「やっぱすごいな。 おまえは……」

まぁなにはともあれ無事目的地に到着したんだ。

改めて俺の冒険が始まるんだ! と思ったが、少し俺の中でモヤっとした部分がでてきた……

「ん、ちょっと待てよ……」

「どうしたー?」

「ここは王国の中なんだよな?」

「だから〜

そう言ってるじゃん! ケイトが来たかった場所でしょ? なら目的達成じゃん!」

「いや、それはそうなんだけどな……」

そして俺はある一つの正解にたどり着いた。

そして俺は再び異世界ライフの終わりを悟った……

「これってシンプルに不法入国だ……」

「……まぁ、ばれなきゃもんだいなし!」

「……だ、だ、ダメだろ〜!!!!!」

と俺はかなり大声で叫んだ。





少し冷静になったあと俺は改めてこれからどうするか考えた。

まず、現在の場所を推測するに此処は王国内の路地裏のような所だろう。

このニャスとのやり取りの間に人は誰一人として此処を通らなかった。

そして誰も見ていない……つまり俺はまだ不法入国したことをばれていないということになる。

まぁ確実に完璧にアウトなんだがな……

「とりあえず! まずはこの格好をどうするかだな」

俺は色々と考えたがまずはしないといけないことを考えた。

そしてまず一番に必要なのはこの俺の制服姿だ。

こんな目立つ格好で街中に出たら必ず浮く……

ならまずは着替えから行わないといけない、なら俺が目指す次の目的地は──

「服屋か……」

「ニャス! そろそろ行こう」

「ん、りょーかい!」

とニャスはそう言ってまた指輪になり俺の人差し指にハマっていった。

そして俺は恐る恐る光の射すところまで行き恐る恐る外を覗くと……

「……はあ、すっげー人混みだ」

耳を澄ましてみると、たくさんの声が聞こえてきた。

「さあ! 今年も大量に作ったからじゃんじやん! 買っていってくれよ〜」

「今年も開催されましたなぁ」

「ええ、そうでございますね」

「あー! お兄ちゃんがわたしのやつ食べた〜!」

「おまえが全然食べなかったのがわるいんだろ! 落ちたらもったいないだろ!」

「で、でも〜!」

「あーもう! ふたりとも喧嘩しない! 今日は年に一回のお祭りの日だから喧嘩しないってお母さんと約束したでしょ!」


「確か、ダルケさんが今日は王祭って祭りがあるって言ってたなぁ。 

それにしてもすごい人で賑わってるなぁ」

と人の多さに俺は驚きつつも中学のとき地元の夏祭りに俺と雅と夏奈ちゃんの3人で遊びに行った日のことを思い出して懐かしさに浸っていた……

「あの日もこのぐらい人がいたっけ……」

気づけば俺は止まっていた足を動かして人が多く賑わっている街中に入っていった。

365度見まわしても人でいっぱいだ。

そしてたくさんの出店を見かける。

「長居しすぎたら人混みに酔いそうだなぁ……」

「……とりあえず服屋を探すか」

と俺は我にかえったあと、改めて服屋探しに街中を歩きだした。

歩いている道中至る所に屋台や出店を見かけるたびにとても美味しそうな匂いに誘われて俺の腹の虫が鳴り続ける……

近くで見ると鉄の串に5枚ほど刺さった焼かれた分厚い肉が置かれていたり、クレープ生地のようなものの上にたくさんのフルーツっぽいモノがたくさん置かれホイップクリームのようなモノをこれでもか! と言わんばかりフルーツっぽいモノの上から豪快にかかっている。

どれもとても美味しそうだ……

「はぁ、金があったら食べれたんだよなぁ」

気づけば俺はニャスに聞いていた。

「なぁニャス、俺の世界での金をこの世界の金に替えることとかできないよな?」

「うーん、さすがにそれはムリだね」

「だよなー」

まぁわかってたことだから悲しくないけど!

と自分の腹の虫が治らない状態で街中を歩いていると俺はとあるモノを目撃した。

「……なんだ、人が固まっている場所があるな」

と俺はそこがどうしても気になってその大勢の人が固まってる場所を目指して向かっていった。

場所としては大通りの端っこ側だ。

「あそこまで密集しているってことは……きっと名物の食い物があるはずだ!」

と俺は目を輝かせながら目的地のことを完全に忘れて早歩きまじりに改めて向かっていった。

そして近づいていくにつれてとても大きい声が聞こえてきた。

「だから! ここはオレが元々出店する場所として確保していたんだよ! あとから来たやつが使うのはおかしいだろ!って言ってんの!」

「ん、なにか揉め事でも起きてるのか……」

そして密集付近にたどり着いたあたりで話し声は明確に聞こえた。

「ここは元々この方が出店する場所です。 そもそもあなたは出店許可を申請していない……その時点であなたの出店は許可出来ません!

即刻、すみやかに立ち退いてください」

「だから! その出店許可を申請しないといけないってこと自体俺は知らされていなかったんだって! そうなりゃ国民全体に知らせなかった王国側の問題になるだろ!」

付近で聞けばわかる……

男の大きな叫びが辺り一面を響かせる。目の前で聞けば鼓膜がやられそうだ……

それにしても、男が言い合ってる相手は女か……

俺は人と人の間から二人が争っている視界をなんとか見ることができた。

そこで俺の目に映ったのは男のほうは想像していた通りの少しガタイの大きい男性でその相手をしてる女のほうを見ると俺は一瞬瞬きをするのを忘れていた……

そこにいた女、いや、少女はとても綺麗に見えた。背は俺より少し低く髪は綺麗な桜色の長髪で軽い鎧を着ていてその佇まいは紛うことなき騎士そのもの。

そしてなにより、大きい男に怯えることすらしないその鋭くて凛々しい眼……

気づけば俺はその少女に見惚れてしまっていた。

先に言っておく。

そういう意味ではない……

「出店許可の申請についての告知は事前に全国民に伝えています! 並びにお知らせをするため国民のみなさまに集まってもらい集会を開いて説明しています! 紙もそれぞれの家の方に騎士団の団員が直接渡しています。 話を聞こうとせずに自分勝手で行動したあなたが悪いのでは?」

すごい……

ここまで強気に言えるなんて、俺じゃ到底、いや、絶対にできないな……

「そ、それは……」

「ご理解いただけたら直ちに立ち退いてください! ここに今回出店するのはリオズさんです」

「さすがにあの男もこれでこりたろ〜」

「いや〜グランス十二騎士団は風格が違うなー」

彼女の圧倒的な正論で打ちのめされた男はこれ以上なにも言い返すことはしなかった。

密集になってた人たちも安心したのかその場から一人、また一人と離れていった。

「リオズさん、これで出店できますね」

「いえいえ、大変ありがとうございました。 これで孫に楽しいお祭りを見せてあげれます」

そのときの彼女の表情はさっきまでと違いとてもやわらかくてとても印象に残りやすい笑顔だった。

「これで一件落着かな……」

と一人で呟いていると黙り込んでいた男が再び言葉を吐いた。

「で、でも! オレは! 稼がないといけないんだー!!」

と男は再び叫びながら右手の拳を大きく振り上げた。

そして男はその振り上げた拳を彼女に向けて振り下ろした!

「ッ!」

ドカーン!!

次の瞬間、俺の視界に映ったのはついさっき少し遠くから見ていた例の男だった。

俺はなにが起きたんだ?とひたすら困惑した。

それと同時に俺は吹き飛んでいた……

「ッて〜!」

吹き飛んだ俺はすぐに起き上がり状況理解しようとしたが激痛でそれどころじゃなかった。

そして俺はすぐさま状況を把握した。

俺は殴られたのだ……しかも派手に……

そう、俺は殴られそうになっていた彼女を庇うために無意識のうちに身体が勝手に動いてたのだ。 そして代わりに俺が殴られた……

「おい! 大丈夫か!」

と1人の男性が声をかけてきた。

俺は咄嗟に「あ、だ、だいじょうぶで、す」と口が少しキレたせいか少し話しづらい状況で返事をした。

「おい! 誰か、騎士団兵を呼んでくれ! 一人怪我人がでた!」

「あ、俺が行こう」

「な、お、オレは別にこんなことをしようとしたわけじゃ……」

「あんた、流石に手をだすのはよくないだろ! 大事にしたのはあんた自身だ! しっかり反省しろ」

「あ、うるせー!!」

男はその男性に向かって突進していきまた拳を振り下ろそうとした。

また、負傷者がでる……

と思っていたらその男性を庇うように彼女が前にでてきた。

「これ以上あんたに用はねぇ!!」

「ま、まずい!!」

俺は咄嗟に今度こそ殴られそうな彼女の手を取ってそのまま彼女を引っ張って逃げるようにその場から一目散に走っていった。

「えっ、って、ちょ、ちょっと!!」

「とにかく走って!!」

俺はそう頭が回らない中、彼女にそう言った。


「あの、兵の方を連れてきました!」

「あ、ありがとう……」

「それで騒ぎを起こした者はどちらですか?」

「それは、あの男です!」

「……男? あ、あれ!?」

「あの姿は……ッ!ルルナ騎士団長!?」

「門兵長! 騒ぎを起こしたのはやはり……」

「ああ、あの男が騒ぎを起こしルルナ騎士団長を連れ去っていった……間違いない罪人はあの男だ! これは事件だ! 直ちに見回り組に呼びかけてあの男を追え〜!! 罪状は国民への危害、そしてこれは重罪だ!! ルルナ騎士団長……いや、ルルナ王女の誘拐、もう一度言う! なんとしてもあの男を追え〜!!」

「え、あ、あの、その人は……」

「ご協力感謝します!!」



俺は今とてもひさしぶりに全力疾走で走っている。 しかも女の子の手を引っ張ってだ……

そして後ろから声が大きく聞こえてくる。

間違いない! さっきの男が俺を追いかけてきたんだ……

俺はただひたすらに走った。

そしてしばらくずっと街の直線を走っていたからかようやく曲がり角を見つけ俺はそのまま曲がり角を左に曲がった。

そしてそのまま走っていると上から声が聞こえてきた……

「そこの兄さん、かなり困ってそうだね〜

アレだったら、助けてやってもいいぜ」

と俺は走りながら声が聞こえた上のほうを見上げた。

すると金髪のジャケットみたいなのを着た男が建物の上に立っていた。

走りながらだったからあまり声が聞き取れなかった俺はその男に聞き返した。

「え、なんだって?」

「だーかーらー!! 困ってるなら助けてやろうか?」

今度はしっかり聞き取れた。

ここはイチかバチかと俺は賭けた。

「た、たのむ!!」

「オーケーだぜ!」

男は建物からジャンプして床まで落ちてきた。

「ま、助けるのはいいけどよ、タダじゃいかねーからな」

「え、」

「まぁ、しっかりと助けてやるよ」

とすれ違うと同時に俺の左肩をその男は軽く叩き俺はそのまま走り続けた。


「な、なんだお前は!!」

「わーお!!まさか相手は王国騎士団かよ……

やりがいがありそうでイイじゃん。 

兵士さんらがた〜ちと、つきあってもらいますぜ〜」




はぁ……はぁ……

さ、さすがに走りすぎた。

もう息をするのもしんどい……

とりあえずある程度逃げた俺と彼女は見つからないような塔みたいなところのてっぺんで身を潜めていた。

「こ、ここまで、はぁ……はぁ……きたら、だいじょうぶだと、お、おも、、、う」

心臓の音がバクバクと速い鼓動をたてながら俺は彼女にもう大丈夫だと精一杯伝えた。

「……君、なにやってるの! こんなことしたら殺されるわよ!」

「……えっ、」

わけがわからなかった……

俺はなにかやらかしたのか、いや、俺はただあのガタイが大きい男から守ろうとしただけなのに……意味がわからない。

そうこうしているうちに複数の足音が一斉に聞こえてきた……

「い、いたぞ! 罪人確保!!」

「……えっ!」

その瞬間俺は大勢の鎧を着た人たちに抑えられた。

「お怪我は大丈夫でしたか、ルルナ騎士団長……いえ、ルルナ第一王女……」

「コイツがルルナ王女を……よくも〜!!」

なにがなんだかさっぱりわからないし話が一切ついていけない。

「待て! この場で殺すのはだめだ!」

「ですが、しかし!」

「人々が住む場所に国を、民を守る兵士が自ら血を流す行為をして恥ずかしくないのか!」

「し、失礼しました!!」

「改めて、ルルナ王女お怪我はありませんか?」

「ええ、大丈夫です」

「ご無事でなによりでございます! では、この男の処遇をいかがいたしましょうか?

やはり未遂とはいえ王女誘拐は重罪にあたります。 やはり極刑でしょうか?」

「えっ! ちょっと! 俺は誘拐なんてしてない!」

嘘だろ……

こんなところで俺はなんの罪も犯していないのに誘拐犯扱いされて、処刑される……

ここで俺の人生はほんとに終わるのか……

「い、いやだ! いやだ!! いやだ!!!

こんなところで死にたくない、俺はなにもしていないんだ!!」

俺は咄嗟にただひたすら叫び続けた……

人生初の命乞いだ。

「口を慎めと言っているだろうが!! ルルナ王女やはりこの男は極刑に……」

「それは許しません」

「えっ、」

「ルルナ王女、今なんと?」

「この人を罰することは私が許さないと言いました……」

「……」

「この人は先ほど、とある国民の1人と言い争いしている最中に私を守るために庇い殴られ、そして私をこの場から逃がすように彼は、息がきれるまでここまで私を引っ張って走り続けました。 それのどこに重罪と呼べますか?」

「……し、失礼いたしました!!」

「では、彼に剣を構えるのはやめなさい」

「……」

「……」

兵士たちはその言葉通り持っていた武器を構えるのをやめ、静かな空気が流れた……

そして俺は兵士たちから解放された……

「先ほどはたいへん無礼なことをしてしまい申し訳ありませんでした!!」

と兵士の一人が俺の目の前で頭を下げた。

「いえ、俺もあのときは咄嗟に動いてしまったのでもっとあそこで冷静になるべきでした……

こちらこそすいませんでした!!」

と俺はその兵士と同じぐらい深く頭を下げた……

そして次に俺は俺を助けてくれた彼女のところまで向かった。

「あ、あの! さっきはありがとうございました……」

言いたいことはたくさんあるはずなのに上手く言葉につなげられなくて俺は最低限の感謝しか言うことができなかった…… 

そして下げた頭を上げ直すと、彼女の表情はまるで安堵したような安心した顔を見せた……

俺はまた、その姿に見惚れてしまった。

「当然よ。まぁ無謀すぎる行動は褒めれるようなことじゃないけど、助けようとしたアツい部分はしっかり伝わってる……そういう行動に移せる人ってのは簡単にいるものじゃないのよ。

だからその気持ちはそのまま忘れずに……でも、今度は周りもよく見て動くこと! 助けてくれてありがとう」

ああそうか、この人はどこまでも真っ直ぐで正しいと思ったことには素直に動けるんだ。

俺は、そんな人を一人だけ俺の世界で知っている……

俺はまた一人憧れを見つけたんだ。

「えっ!」

すると、彼女は右手を前にだした。

俺はすぐに理解した。

この手のポーズは……握手だ。

相手との信頼する証だと俺は思っている。

「私はルルナ、ルルナ=クリファスよろしくね」

「あ、俺は、、、」

そして俺も自分の右手を出そうとした瞬間、一人の兵士が大声をあげた。

「ああ〜!!」

「なんだ! 急に大声をあげて……」

「いえ、この人少し前に入国審査のときにライセンスを持っていなかったんですよ」

「な、なにっ! つまり不法入国者か!」

「あっ!」

完全に頭から抜けていた……

俺は普通に罪人だった……

「か、確保〜!!」

はぁ、ここにきてロクなことしか起きない。

「やっぱりあの貧乏神、貧乏猫は嫌いだ〜!!」

最高のはじまり?、 いや、最悪のはじまりだ……










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未来へと紡ぐ魔道幻想記 灰/剣 @20030313

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