第一章・第1話 グランス王国入国?
はぁ……はぁ……
まさかこんなに長い道のりだとは思わなかった。
いざ王国に向かって歩きだしたのはいいが、想像以上に距離が遠い……
「はぁ、遠近法ってほんとうにあるんだな……」
とても日差しが強いせいなのだろうか?
そのせいで余計にこの道のりが遠く感じてしまう……
「いったいあとどれだけ歩けば着くんだ?
はぁ……そろそろあ、足がキツくなってきた……」
「ホント疲れるよねー」
「……?」
「ボクもそろそろ疲れてきちゃったよ〜」
「……? いや、そもそもあんた歩いてないだろ……」
疲れもきているせいで大声をだす気力もなくなっていた……
進み始めて最初は王国に着いたら何をするか?とか、改めてもう一度状況整理しようと頭を動かしてたが途中から辛いしんどいが頭の中でクルクル回って考えることをやめていた。
「さすがに最初の目的地が王国なのは無茶だったか……」
と若干気持ちの方もネガティブ寄りになりつつある……
「よいしょ!んっしょ!」
すると少し先から声が聞こえてきた。
「ん、今向こうの方から声が聞こえてきたな……」
俺はゆっくりと歩いていた足を駆け足にかえて声が聞こえた場所まで少し急ぎ気味で向かって行った。
向かって行った先に俺が見たのは少し若い男性が一生懸命なにかを持ち上げてる姿だった。
俺はその人に近づいて「あの、手伝いましょうか?」と聞いてみた。
「えっ、手伝ってくれるのか? 助かるよ〜
なら一斉にこの荷台を持ち上げてくれないか?」
「わかりました」
と俺は言いその男性の隣まで行き荷台に手を添えた。
「よしっ! じゃあ俺がせーの! って言ったら全力で持ち上げてくれ」
「よしっ! せーの!」
俺は男性の掛け声と同時に両手両足に全力の力をこめてその荷台を押し上げた。
「いや〜ほんとに助かった助かった〜
ありがとな兄ちゃん!」
「いや、困っていたら助けたいって思ってやってる性分なので全然ですよ」
「そうかそうか、 でも感謝は素直に受け取っとくもんだぞ」
「……はい」
と俺は少し息を詰まらせながらも返事をした。
「ところで、 お兄さんはこれから何処か向かう所だったんですか?」
「あーこれからグランス王国にな! うちの親父が出店に必要な食材の間違えてなぁ、それを俺が届けに行くとこだったんだが、馬がバランスを崩して荷台が滑ってなぁ、 いや〜ほんと兄ちゃんには頭が上がんねーわ」
「それは、大変でしたね、、、
というより王国でなにかあるんですか?」
「あ、兄ちゃん知らないのか? グランス王国は毎年この時期に王国誕生祝いとして王祭があんだよ。 かなりの人で賑わってるから知らないやつなんてあんまり見かけないんだがなぁ」
へぇ
そんな祭りがあるのか。なおさら行ってみたいものだな。
「そういう兄ちゃんも向かう場所は王国か?」
「まぁ、 一応そのつもりですね」
「よしっ! 助けてくれた礼だし兄ちゃんには王祭に行ってほしい思いもある!
王国まで俺が送ってやる! 目的地も同じだしな」
「えっ、 いいんですか?」
「荷台に座れるスペースは普通に空いてるし、このまま歩いてまで行くのはしんどいだろ?」
確かに、この暑い青空の下をここからさらに歩くってなると胸が苦しくなってくる。
それに、この人はすごく親切だ。 なら素直に受け取るべきなんだよな……
「じゃあ、 お言葉に甘えてよろしくお願いします」
「おう、 短い時間だがダルケだ! よろしくな!」
「ケイトです」
そして男性、ダルケさんと軽く握手を交わしてから俺は馬車の荷台に乗らしてもらった。
そして馬車が動いてしばらくしてから俺はあることに気づきニャスに話しかけた。
まぁ話しかけると言ってももちろん頭の中でだがな……
「なぁ、 少し聞きたいんだがなんで俺はこの世界の人と普通に会話できたんだ?」
「あー、 それならボクがそういう設定にしたからだよ〜
向こうが話す言葉は全てきみがわかる言語で変換されるように設定しておいたんだ〜
もちろん! その逆の設定にもしてあるからこの世界で会話に困ることはないのだ〜」
と自身満々におそらく手を腰にあてながら高らかな笑をしながら「どうだ!」と思っているんだろう……
まぁ、 確かに凄いんだけどなぁ。
「はぁ、まぁそれは助かる。 ありがとな」
と感謝はしておいた。
そしてそのまま馬車に揺られながら俺の世界が今どうなっているのか?とか考えこんでいたら馬の動きが止まった。
「着いたぜ兄ちゃん! ここがグランス王国だ!」
そうダルケさんに言われ俺は荷台から少し顔を出して外を見まわした…
「す、すげ〜」
そこで俺が見たのは辺り一面に覆われたとてもデカい壁だった……
「今から中に入って行くからなぁ」
そう言い再び馬車はゆっくりと動きだした。
そしてしばらくするとまた別の人の声が聞こえた……
「グランス王国へようこそ! よしっ! 次の者!」
入国するにしては少し遅いなぁとは思っていたがどうやらこの国は入国審査があるらしい。
それも当然だろう。王国という1つの国だ。審査がないほうがおかしいってものだ。
むしろ、ラノベとかでの異世界ファンタジー作品は何故王国内に簡単に入ってるんだ?と思うほどに疑問だったからこそ少し安心していた。
そしてどうやら次はダルケさんの番だ。
「まずは衣類の中に怪しい物が入っていないか確認させていただきます!」
そう門番らしき人が言うとガサゴソと音がしばらく聞こえた。
「次にあなたが本人か確認したいのでライセンスを見せてください」
……ライセンス?
なんだそれ?
「確認終わりました! 最後に荷台の中も確認させてください」
「……えっ、」
えっ、こっちに来るの?
とあたふたしているうちに荷台に光が射した。
「おい! 中に人がいるぞ」
そしてそのまま俺は荷台から降ろされ門番の前まで突き出された。
「失礼ですが、 この者は?」
と門番はダルケさんに尋ねた。
「この人は困ってた俺を助けてくれて目的地も同じだったので一緒に送ってきました」
「わかりました! ではまずは衣類の中を確認させてもらいます」
ともちろんそうだよなぁと思いつつ言われた通りに手を大きく広げて門番の人は隅々まで確認した。
「ご協力ありがとうございます! では最後にライセンスの提出をお願いします!」
まぁそうきますよね〜
と思いながらライセンスがなにか、薄々気づいてはいるが念のために門番の人に聞いてみた。
「あの、 ライセンスってなんですか?」
「ライセンスと言ったらあなた自身だと証明するためのカードですが……」
……ですよね〜
もちろんそんな物を俺が持っているはずがあるわけがない。
当然だ。この世界の人ではないのだから……
なので俺はこう答えるしかない。
「そのライセンス? ってのを持っていませんのですが、、、」
「なにっ! 持っていない? ……なら入国は許可できません! 失礼ですがお引き取りを」
一瞬門番の人は戸惑っていたが返答は予想通りだった。
「あー、 兄ちゃんライセンス持っていなかったのか〜
まぁ、ここでは見かけない服装だったしなぁ。
兄ちゃんにはとても感謝してる!
だがすまん! 俺ができるのはここまでだ」
「いえ、 ここまで送っていただきありがとうございました」
「まぁあれだ、 またどこかで会えることを願ってるよ」
とダルケさんと最後に厚い握手を交わして果物らしき物を貰いそのままダルケさんは王国の中に入っていった。
俺は王国から少し離れたところまで行き少し空を見上げた……
そして少し経ったあと現状を振り返った。
「あれ、 これって俺の冒険もう終わり?」
そう、俺の異世界ライフは終わったのだ。
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