序章・第4話 踏み出す一歩

「おい! 一希!」

「ッ!」

「ほら、お前の注文通りピザまん買ってきてやったぞ」

「ああ、サンキュー」

 そう言い俺は雅が買ってきたピザまんを受け取るとそのまま口に運んだ。

「はぁ、しっかしブランクあるお前にバスケで負けるとは思わなかったなぁ」

 それは俺も同じことを思っていた……

そりゃひさびさに勝負を挑まれて正直負けると思ってた。でもまさか勝ってしまうとは驚きだ。

「ほんと、すげぇよ……

相変わらずフットワークは俺より上手いしさ!」

 そう雅はペットボトルの飲み物のキャップを開けながら笑いながら言ってきた。

「でも! 次は負けねえぜ!

なんたって俺は負けず嫌いだからよ」

 そう言いながら俺の胸に拳を当てた後、そのまま俺に一言「じゃあな」とだけ言って先に帰ってしまった。

そのまま俺は無言で雅の後ろ姿を眺めていた……



「なんであのとき返事をしてやらなかったんだ?」

「ッ!」

 ゾッとした……

ただそれだけだった。そして視界が真っ暗になった。



「あれ、俺はいったい何を……」

 目を覚ました後、俺はゆっくり立ち上がろうとした。

「うおっ! あれ、上手く立てない」

「それ、魔力を体内に無理矢理押し込んでるから身体が馴染むまではしばらく動き辛いよ」

 俺はなんとか立った後、ボーっとする頭をゆっくり落ちつかせた。

「えっと、ニャスターレだっけ?

これは成功でいいのか?」

 頭痛え……

と思いながら頑張って気になったことを口にだしてみた。

「うーん、まぁ多分成功したと思うよ」

「……多分?」

「体内に入れることはできてるからあとはゆっくり待ってからじゃないとわからないんだよ」

「なるほどな、確かに変な感じはしてるなぁ

それに、痛みもマシになってきてる」

「なら、間違いなく契約は成功してるね!

で、どう? 憧れてたモノを手に入れた感想は」

「そうだなぁ、あんまり実感はない……

でも、すぐにでもモノにしてみたい!」

 憧れてたって言うよりは少しこういう世界って気になるよなぁぐらいの気持ちなんだがな……

そう思いながら俺はその場で身体を慣れさせるために軽くストレッチをしながら少し考え事をした。

「さて、これからどうするかなぁ」

「なぁ、ニャスターレ! 俺がこの世界に来たのは事故、ってことでいいんだよな?」

「え、あ、うん。そうだよー」

 てことは自由にしていいってことだもんなあ……

普通ならよくあるラノベとかではその世界の神様みたいな人に魔王を倒してくれ!や世界を救ってくれ!などが定番だけど、俺の場合は事故だもんなぁ

はぁ、現実なんてこんなもんかぁ……

まぁでも、せっかく来れたんだ。存分に楽しもう。

「まぁ、偶然な事故とは言え此処に来させてもらったんだ。ニャスターレありがとう。それじゃ」

 そう猫耳少女にお礼を言った後、この世界での一歩を踏み出した……

「って、何処に行こうとしてるの!」

 踏み出すはずだった一歩を止められた…

「え、だってこれで俺たちの絡みは終わりだろ? だったらゆっくり旅をしようとだな……」

「なるほどね〜

で、何処に行こうとしてたんだい?」

「それはだな、歩きながらゆっくり決めて行こうと……」

 と言った後、ニャスターレは1つため息を吐いた後俺にこう言った。

「だったら、ここから近い所にあるグランス王国とかはどうかな?」

 はぁ、王国か……

良いかもな。最初に王国ってのも定番中の定番だし……

俺は一回辺りを見回してみた。すると遠くからでもよく見えるぐらいとてもデカい城が見えた。

「王国って、あの遠くからでも見える城の場所でいいのか?」

「そう、それそれ〜」

「よし! あの城目指すかあ」

「ところで、なんで教えてくれたんだ?」

「ああ、それはねーー」

 どうせ、人助け的なやつなんだろうと俺はその瞬間まで思っていた。

「近い所がよかったから!」

 ほら、やっぱりな。

「ボクが!」

「……は?」

 え、何コイツ……

俺のためなんかじゃなくて、自分のために?

というより言い方的に付いてこようとしてるのか?

そう思い思わず俺はニャスターレに聞いてみた。

「なぁ、まさか俺に付いてこようとしてるのか?」

「もちろんだよ! 具体的には付いて行かなきゃダメなんだけどね」

「なんで?」

「そりゃだって、契約したからじゃん!」

「契約? はっ! まさかあの魔法って契約のためのやつだったのか?」

「そうだよ! というか説明したときに契約だ!って言ったんだけどなぁ」

「いや、そんなこと1つも聞いてないんだが……」

「あれ、そうだっけ?

あ、なら伝え忘れてたんだ。ゴメンゴメン!」

「ああ、伝え忘れてたんだ……

って、ごめんで済むかー!!」

 ひさしぶりに大声をだした気がする……

まぁ、怒りはあったんだろうけどそれ以上に大声をだせたのが嬉しかったりする。これも変わる第一歩なんだろうな。

ただ、伝え忘れは許せないな。しかも結構重要なことだったし……

幸先からすでに不安になってきたな。

とため息と同時に思った。

「で、話を戻すとさっきの魔法は契約魔法そのものでニャスターレの言い方だと契約したからその主人と一緒にいなきゃいけない……

ってことでいいのか?」

「そうゆうこと!」

 こんなに自信満々に言われてもなぁ……

「わかった、契約なら仕方ないもんなぁ」

 本当は1人で冒険してみたかった思いもあったけど、多分1人じゃ冒険はできなかっただろうなぁ……

まぁ、パートナーがいるのは全然良いことだしな。

そう思いながら俺は握手をしようとニャスターレに手をだした。

「これからはよろしくな! ニャスターレ!」

「うん。よろしくケイト! それとボクのことはニャスでいいよ」

 とニャスターレは言いながら握手をかえしてくれた。

その瞬間ニャスターレは光だし始めて気づけば指輪の形に変わっていて俺の右手の人差し指にハマっていた。

「なんだ、これ?」

 思わず声がでた。

「これは契約の証でもあり、そして、ボクが1番楽ができる状態さ!」

「最初のはかっこよかったけど、最後のは聞きたくなかったな……」

 理想とは大きく離れた一歩にはなったけど、これはこれで有りか……

クールな感じで決めたかったんだけどなぁ。

それでも一歩踏み出すことには変わりないんだ。

「さてと、そろそろ目的地にした王国目指して行くかぁ」

 と気合を入れた後、俺は、いや、俺たちは目的地を目指して進み始めた。

突然、現在離れしたファンタジーな世界に連れてこられ始めてからすでにおかしなことだらけだ。実際にまだ魔法が使えることすら少し疑いもある……

それでも! 一度は誰もが憧れてたことのあることが起きているんだ。

それだけはしっかりと信じている……

これから先おそらくさまざまなことが起こるだろう。

俺はそれすらも楽しんでやるつもりだ!

だって、きっと雅だって同じことを思うはずだ。

だから俺はこの猫耳少女のニャスと一緒に歩んでいく!

それが俺の覚悟を決めた踏み出す一歩なのだから。





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