二章 「恋」と「友情」
アルバイター小宮
第30話 常連客は「ママ」でした
◆
ゴールデンウィーク初日
5月3日。
寒さも和らぎ、以前よりも気温が高くなったことで外出をする際に厚着ではなく薄着の格好を好む人が増えた。
今年入っての二回目の長期連休ともありどこもかしこも混雑している。「お店」側からしたら多いに稼ぎ時で大変喜ばしいこと。
それはここ、喫茶「
元々喫茶「鷲見白」はホッと一息つけるようなどこか落ち着く個人経営のお店。
「止まり木」を彷彿させ、「一人」を堪能したい常連客が足を運ぶような静かな場所。
それが今では常連客関係なく賑わう人気店へと早変わり。
この頃あることが原因で莫大な人気を博し今ではこの街では有名な喫茶店となった。
当店で提供する「料理」や「接客」が素晴らしいという理由があるのは確かだが……。
ある一人の「少年」が関与して――
「ね、可愛い可愛い店員さん。当店のおすすめはなんですか?」
ブラウンの髪をセミロングに腰まで伸ばし私服姿が似合う女性が店員に問う。
「当店では女性が好むパスタも豊富に取り扱っています。ですのでパスタなんてどうでしょうか? 私のおすすめは「大葉香るイカとたらこのスパゲッティ」、です」
茶色を基調としたウエイターが着込む衣服を――着るわけもなく、なぜか「某メイドカフェ」とかで女性達が着込む「メイド服」に真っ白でフリフリのスカートを履く、小宮。
普段から「女の子」のような見た目、また格好に加え茶髪のウィッグを付けたら……もう小柄の少女にしか見えない。
自分の姿、目の前にいる常連客兼知り合いの手前、羞恥心&緊張が押し寄せる。
「じゃあ、「慎ちゃん」のおすすめで! 他は、美味しいデザートと飲み物もお願いしよっかなぁ?」
「ぅ。はい。では、デザートは日向夏をふんだんに使った「ケーキ」。お飲み物は「アイスティー」――で、宜しいでしょうか?」
その「慎ちゃん」という呼び方とこちらを見るキラキラとした――美春の眼差しに狼狽えつつしっかりと受け答えは完璧。
よく見ると小宮が身につけるメイド服に「慎ちゃん」という名札が付いている。
「それでお願いします。あとは、裏メニューで「慎也君のお持ち帰り――」
「そんなメニューは当店にありません!」
断固拒否の構えでビシッと告げた。
耐えられなくなり、お客である美春にあるまじき言葉遣いを使いその場を逃亡。
小宮は「アルバイト」をしたいという理由は前々からあった。それが「訳」あって知り合いの伝手で喫茶店のウエイターとして働くことに。
どこから情報を仕入れたのかは知らないが、美春は小宮が働き出した初日からお店に顔を出し、すでに常連客となっている。
店長にオーダーを伝えに行く間柄、自分が喫茶店で働くことになった経緯を思い返す。
※ようやく再開できました。
今回から諸事情もあり一週間に一度の投稿となりそうです。前回のようにすぐに次のお話を投稿できないことお許しください。
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