ママ活アプリにノリで登録したところ同級生のママが釣れました……（休載します。八月から再開）

第3話 大宮美咲の本性

「えぇ〜私はただ小宮君とお話ししたいだけだけど〜」

「コイツ……」

　大宮はこうして「話がしたい」などとふざけたことをぬかすがそれは真っ赤な嘘だ。

　他なら通じるだろうが僕はコイツの本性を知っているから流されない。

　アイドル顔負けのルックスにモデルのようなスタイルで数多の男子を虜にし、頼りになる男よりもイケメンな性格で大人気。

　大宮は今だから沢山の人に慕われているが以前……入学当初は少し違かった。

　勿論初めから大宮の性格（隠している）に浸透している人が大勢いた、それでも中には大宮をよく思わない人達も少なく存在した。

『チッ……何が学園のマドンナよ』

『ほんと。ちょっと顔が良いからって調子に乗りすぎよね〜』

『一回、痛い目見てもらったほうがいいんじゃない？』

　大宮をよく思わない女子達は水面下で色々と話し考え、動こうとしていた。

　噂を聞きつけた当の本人からその女子生徒達に声をかけ接触を試みた……らしいけど。

『ねぇ、ちょっとってどういうこと？』

『は？　何あんたいきなり――』

『私、こう見えてとっても顔が良いと自画自賛できるよ？』

『は、はあ？　なんだよそれ意味わかんないし……』

『コイツ頭おかしいよ』

『い、行こ』

　大宮のその言葉の数々に気圧されてしまった女子達は顔を引き攣らせ逃げようとする。

『待ってよ。分からないなら私がどれだけ顔がいいかそれが常識的だと認識して分かるまで徹底的に徹底的に……教えるよ？』

『え？　いや……』

『べ、別に私も……』

『ご、ごめん。もう変なこと言わないから……』

　そんなことを小声で話していた女子達にかまわず自分の顔がどれだけ素晴らしいか自分の存在がどれだけ最高か徹底的に忘れないように心に刻みつけるように教える。

　そんな感じで大宮を目の敵にしていた女子達も翌日には……。

『大宮さん、今日も美しい！』

『あぁ、女神のよう……』

『私達が浅はかだった』

　籠絡されていた……どんな洗脳使った。

　そしてそんな大宮は――

『はぁ、私も罪な女だよ。男女関係なくモテてしまう……』

『……』

　なぜか僕相手にそんなしょうもない話をするようになった。

『でもでも〜それに比べて小宮君はモテないよねぇ〜小柄で顔も女の子みたいだし〜ま、君みたいな非モテの子でも世界に一人ぐらいは「好き」って言ってくれる人はきっと現れるよ〜多分、ね』

　その整った顔を自虐的に歪めて馬鹿にしたような物言い。

　話す内容は全てこちらを見下すような発言の数々。

『意味もなくマウントをとるな』

『えぇ、だって事実だよ？』

『事実でもだ』

『ぶうー。そんなのやだよ。私は本当のことを口にしたいの。……小宮君小さいよね』

『余計なお世話だ！……ぐっ』

　何気ない会話から出た「小さい」という発言に顔を顰めてしまう。

　165㎝以上という高身長の大宮からしたら145㎝しかない僕などさぞかし「小さい」のだろう。ただアレだ。145㎝といっても四捨五入したら150㎝な訳で……虚しくなってきた。

『お前、性格悪いだろ』

『失礼だよ！　私、天使みたいな性格だねってよく言われるくらいにはとってもいい性格をしてるけど？』

『……確かに。いい性格はしてる。「天使的」ではなくて「悪魔的」だがな』

　そんな僕の発言を聞いても大宮は何か勝ち誇ったようにドヤ顔を作る。

『顔もよくて性格もいい。私自分が完璧すぎて怖いよ……小宮君と真逆だね！』

『そこで僕の名前を出すな』

　そう、コレこそが「学園のマドンナ」とみんなからチヤホヤとされている「大宮美咲」という女の本性。

　めっちゃナルシストな上自分大好きな小悪魔系女子。

『でもでも〜小宮君も自分が可愛いことを分かっていて、「そんなことないよ〜とかあの子の方が可愛いよ〜」とか言うぶりっ子女子よりもマシだと思うよね？』

『しらね。どっちもどっちだろ』

『むー！』

　こちらの回答が気に食わないのか大宮は頰を膨らませる。

『えぇ〜私は私が大好きだし。毎日時間をかけてスキンケアをして男子ウケする話題を事前に調べて、女子ウケする話題も欠かさず調べてそれを発揮する。体型維持のために食事には気を使って毎日一時間以上の運動を欠かさない。そんな超超、超――頑張っている私が私を大好きなんだよ〜』

『ふーん、努力の賜物ってやつか』

　己のことを楽しそうに語る大宮を他所に「よくそんなに頑張れるな」と少し凄いと感心するもの「無理して頑張って馬鹿らしい」という嫌味のような感情も持っていた。

　実際そんな自分の性格も捻くれていると思うけど大宮と同じでコレが自分の素の性格なので仕方がない。

　要は僕こと「小宮慎也」と「大宮美咲」は分かり合えず、相容れない存在である。

　思えば高校に進学して、一年生のあの時、同じクラスになり隣同士になった時が全ての始まりだった。

　初めの頃は大宮も僕に他の人と同じように優しく接していた。それがいつしか平然と嫌みや毒を吐くようになった。

　大宮曰く

『気に食わないんだよね。並の男子なら私と隣の席になったらメロメロになってくれるのに、まったく興味なさそうで……』

　確かコレを言われたのが高校に進学した二日目の放課後……いや本性出すの早すぎね？

『悔しいよ。コレだけ毎日頑張っているのに、興味すら引けないなんて……チビ』

　大宮は自分の思うことを不機嫌に言い放つ。ほんと身勝手な女だ。それに誰が「チビ」だ！……言い訳は、できない。

　かまってくる理由はそういった「私怨」からくるものだ。

　そんなことで毎日嫌味を言われ、マウントを取られる生活など納得がいかない。いくわけがない。だから意を決して聞いたんだ。

『別に僕みたいなやつ一人に好かれなくたっていいだろ。なんでそんなに好かれたがる？　お前には学校にいる生徒全員を惚れさせる義務でもあるのか……はっ、もしやお前先生に体を売って……！！』

『そんなわけないでしょ！？……人から好かれたいと思うのはそこまで不思議なこと？』

『……お前レベルになると不思議を超えて異常だよ』

　そんな話しをして以来、大宮は僕が一人でいる時を狙って話しかける……その内容はお察し通り。

『私ってば今日も一年でイケメンだと有名な若林君とサッカー部でエースの池谷君に告白されたんだ〜小宮君は……あ、ごめんねw』

『……』

　ナチュラルに草を生やすな。

　何かと大宮は僕にマウントを取りたがる。そして現在でも付き纏われて正直うざいしうんざりしている。

「ん？　眉間にシワを寄せてどうしたの？　もしかして睨んでる？　小宮君童顔だから怖くないよ？」

「……」

「あぁ！　もしかして誰かに告白して振られたとか！……もう、無理しちゃって……」

　大宮は何を思ったのか僕の頭を撫でようと手を伸ばす。

　恐らくコイツのことだから「可哀想な小宮（僕）を慰める私偉い」とでも思っているのだろう。

「触るな」

「え」

　大宮の手をかなり強く拒絶するかのように弾く。そんな僕の態度に大宮は惚けていた。それでも僕は話しを続ける。

「……流石に僕もここまでモテないモテない。チビチビと言われ続けてお前に付き纏われるのは、疲れた」

「え、あの小宮君？」

「というわけでだ。今後僕には出来る限り干渉しないでくれ。クラスも席も同じだから全部が全部無理だと思うが、僕は本気だ」

「ッ」

　続きの話を聞いた大宮は時が動いたように顔を真っ赤にして唇を噛む。そしてその目はこちらを睨みつけていた。

　ははは、いい気味いい気味！　言い負かす相手ではあってもさも自分が言い負かされるとは思わなかっただろ。その顔を見れただけで少しは溜飲は下がる、けど――

「ここに宣言する。僕はお前――大宮美咲を見返すために彼女を作る！！」

　僕はここに決意表明をした。