187話・神兼魔王VS魔王兼神ー4

実は186話の後でパソコンが変わりました

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 楽しい、彼女は私よりも長く生き、私の知らないことを多く知り、それを惜しみなく使ってくれた……、それに対して不満があるわけではない、彼女は十分私にいろいろなことを教えてくれた、これ以上を求めるのはだめだろう。

 だが、このまま続けていては、私の知りたいことを知れないのではないかと、私は本気を出せないのではないかと、ほんの少し不安を持ってしまった、久しぶりの不安、約2年前の生きるか死ぬかだったあの狼との闘いで感じた死の不安よりもより大きな不安、人として、生物としておかしいことはわかっているが、それが私なのだ、彼女にはもう少し耐えてもらおう


「次で終わりにしましょう」


「はははっッッ、この程度で疲れたのか?

 いいだろう、その話、乗ってやる」


 彼女の虚勢もすごい、実際、こうして戦ってみるまで、彼女の力は私と同じだと思っていた……、まあ、実際に戦ってみるとバルドルフや私の生徒たちなどには十分勝てるだろうが、私やキリー、神王様には届かない、それでも、彼女はついてきた、私も、本気を出しましょう。


 魔神はその言葉の後に自身の周囲、それから等身大、その次には手のひらへと、まるでそこだけ色を、空間を失ったかのような漆黒の魔力を集め、次第にその圧縮された魔力はその大きさを増していく。

 それに対し、その決意に周囲の魔力呼応したのか、それとも絢が無意識のうちに自分で展開したのか、絢の背には周囲の温度を上げるほど光を反射する純白の20対の翼が現れそこから羽が落ち、ようやく絢はその羽を認識する。


 この羽毛は何でしょうか、後ろから……私の背に羽が生えているのでしょうか、そういえばですが、以前、バルドルフに聞いた時には、竜の羽は魔力の補助をする役割があると言っていましたね、少し利用してみましょう。


 絢は、自分の羽に意識を通し、その場で発動させようとしていた魔法をより強く、より細かく発動するようにその場で書き換える、他の体の操作を放棄し、その魔法の発動のみに意識を注ぎ、1秒ほどで完成し、発動する……魔法の発動、それはどのような結果ももたらさなかった、厳密には、全ての存在が魔法の発動を感知できなかった、ただ、一つの現象を除いて。

 その現象は、その場にいた者、その戦闘を見ていた者に大きな印象を与えた……、魔法の発動と同時にその背に展開していた翼が飛び散り、そこには全身を白い服装で包んだ一人の少女がたたずんでいた。


「はッッ、やっと本気を出したのか、待ちくたびれたぞ」


 そう言って魔神がその手に貯めた魔力をその体に向かって放つ、その魔力は太い光の線となり、その体を覆いつくす……その光の線が消えたころ、今まで彼女の攻撃をよけなかった情緒の姿はその場所には存在しなかった。


「……まさか……、勝てたのか?」


『次は私の番ですね』


 その言葉の後には、空気が勝手に揺れ詠唱を開始し、その流れが魔方陣を作る、空気中を漂う魔力が白く発行し、消え去った少女の体を作る。


「次は私です、本気の中の手加減でお相手します」


 その美しさに、その場のだれもが息をのみ、その場の全員が動きを、瞬きを、呼吸を止めた……、止めて、しまった……

 大気で詠唱された魔法が、空中に浮かんだ魔方陣が、そのすべてが魔法を発動させ魔神を襲う、一瞬の動きの停止により対処の遅れた彼女は、とっさで発動させた障壁で初めの一瞬を防ぎ、その一瞬の溜めで時間を操りながら攻撃を回避する、だが、回避をしたことにより発生した線が、さらに魔方陣として成立する、さらにそこから発動された魔法によって魔方陣が発動され、その魔法により発生した空気の振動が詠唱になる。


 20秒後、魔神はその魔法を、残存魔力の半分を使用してようやく相殺する……、その直後再び目を疑う出来事が起こる、目の前に浮かんでいた少女が突如砂のように風化した……のと同時に、地面が巨大な腕となり魔神を殴り吹き飛ばす、その軌道の先には空気によって作られた足によって地面へと叩き落され、その地面から生まれた腕によって夜空の姿をした天井へとたたきつけられる、そこから自由落下に従った彼女をとらえていたのは、今までその戦いで使用された魔力と同等かそれ以上の魔力を込めた刀を振りかぶった、先ほど風化した少女だった……。


「ちょっと、まっ……」


 その言葉は聞こえていなかったのか、聞いていないことにしたのか、少女はその振りかぶった刀に力を加え、勢い用振り下ろす。

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この回の後はしばらく嵐の日常回が展開されます

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